陸奥部屋で後輩だった大関霧島が春場所で苦しんでいます。8日目まで2勝6敗。これも一つ、勉強になっていると思います。 初日から4連敗し、5日目にようやく勝ちましたが、立ち合いでは相手の明生に負けていた。霧島は足が出ていない。上半身だけで相撲…

 陸奥部屋で後輩だった大関霧島が春場所で苦しんでいます。8日目まで2勝6敗。これも一つ、勉強になっていると思います。

 初日から4連敗し、5日目にようやく勝ちましたが、立ち合いでは相手の明生に負けていた。霧島は足が出ていない。上半身だけで相撲を取っているように見えます。

 今場所の前は、部屋の行事などがあり、2月下旬に大阪に来るまであまり稽古をできませんでした。直前にピッチを上げて体を作った影響が出ているかもしれません。

 もう一つ考えられるのは、精神的なもの。

 先場所、横綱昇進を決めきれませんでした。

 優勝争いに絡んだものの、14日目、琴ノ若への敗戦がすべてでした。相手は大関昇進を狙っていて、お互いに勝てば昇進の機運が高まる一番でした。

 本人も「横綱昇進を決めるぞ」と力が入っていた。気持ちが落ち込むのは分かります。

 それにしても、千秋楽に負けた相撲はひどかった。あの2連敗で、積み上げたものはゼロになりました。

 場所後、霧島に「何かが足りないんだよ」と言いました。

 今場所も悪い流れを引きずってしまっている形ですが、相撲ではよくあること。

 3勝9敗の力士が連勝で終盤戦を終え、次の場所で初日から連勝することがある。その逆もあって、終盤の連敗が次の場所につながることもある。霧島は先場所の14日目から今場所4日目まで6連敗ですからね。

 霧島は大関昇進を、実質、最初のチャンスで決めている。昇進に失敗したのは先場所が初めてです。でも、こういう経験を乗り越えなければいけません。心技体で一番大事なのは「心」です。

 僕は番付が下の頃から何度も壁に当たりましたし、大関昇進のときに一度失敗しています。その経験から、悔しがるだけでなく、自分に何が足りないかを振り返る力がないといけないと知りました。

 今場所、苦しむ彼に、僕は何も言っていません。話もしていない。

 立て直すのは自分しかいない。勝てない相手はいない。己に勝たなければいけないのです。(元横綱鶴竜)