「この1年間で山が好きになりましたっていう声があって、うれしかった」。ワンダーフォーゲル部の野本隼汰(創理4=東京・早大学院)が主将としての1年間を振り返った。圧倒的な知識量と技術力を誇る73代のあとを引き継いだ当時、部の課題の1つとして…

 「この1年間で山が好きになりましたっていう声があって、うれしかった」。ワンダーフォーゲル部の野本隼汰(創理4=東京・早大学院)が主将としての1年間を振り返った。圧倒的な知識量と技術力を誇る73代のあとを引き継いだ当時、部の課題の1つとして「まとまり感のなさ」を挙げていた野本。『限界突破』をテーマに、各々が高いレベルを目指していた73代の精神を受け継ぎつつも、74代ではそこに主体性や一体感を持たせたいと話していた。


74代ワンダーフォーゲル部主将の野本隼汰

 野本は小学校から高校までずっとサッカーに励んでいたものの、大学では「新しいことを始めたい」とワンダーフォーゲル部への入部を決めた。しかし自然を相手にするスポーツには想像を絶する過酷さがつきもので、最初はしんどい思いを抱えながら活動していたという。そんな中、2年生の頃に行われた北アルプスでの山行をきっかけに、野本は山を好きになった。複数人で登っていても、「ついつい1人になってしまって孤独との勝負になる」山行。ただそのきっかけとなった活動は、部員同士で話したり声かけをしたりしたことで「楽しかったし、頑張れた」といい、そこで辛い局面での仲間の存在の大きさに気づいた。山が好きでない部員も多いが、「やっぱり活動の根幹は山登り。きついところで仲間とともにどう乗り越えるかというところを重視していきたい」と話した野本。そのためには全部員が主体性を持ち、コミュニケーションを図りながら一体感を高めていく必要があった。


元サッカー部で盛り上げ上手な一面もある

 「威厳があるタイプではない」野本や倉澤宏太朗主務(商4=埼玉・所沢北)がトップに立ったからこそ、特に後輩の主体性が十分に引き出された。2年生の提案で部活のユニホームをつくったり、ある山行の中でトラブルがあった際には、その後の行動について後輩からも意見が出されたりと、最上級生が主導権を握り判断を下すという従来のかたちから大きく変化したという。また4隊にわかれて行った最後の夏合宿では、全隊が天候不良で一度頓挫した計画をリベンジしに行くなど団結力を見せ、「各個人が意見を持って行動してくれた」と振り返った。一体感が増したこの1年間で山を好きになった後輩も多く、74代の掲げていた目標は達成されたといえるだろう。

 早稲田の体育会であることに誇りを持ち、山頂でも率先して校歌を歌う野本。「またこのチームでもう1年やったらどうなるのかなっていう思いも、ちょっと自分の中にある」と名残惜しさも見せた。引退後も時々活動しているという野本は、これからも何らかのかたちで早大ワンダーフォーゲル部をサポートしつつ、「選択肢があれば困難な方を選んで進んでいく」という言葉通り、より強い男に進化していくことだろう。

(記事 槌田花、写真 ワンダーフォーゲル部提供)