■2024春 担当記者の「ココを見て」(4)神村学園 「野球好きが日本一集まるチーム」。神村学園(鹿児島)を見ていると、そう表現したくなる。 昨年の第105回全国選手権記念大会で初めて4強入りを果たした。1回戦から3試合連続で2桁得点。強力…

■2024春 担当記者の「ココを見て」(4)神村学園

 「野球好きが日本一集まるチーム」。神村学園(鹿児島)を見ていると、そう表現したくなる。

 昨年の第105回全国選手権記念大会で初めて4強入りを果たした。1回戦から3試合連続で2桁得点。強力打線が快音を響かせるたび、ベンチの最前列で大きく動く人影があった。

 小田大介監督(41)が、派手なガッツポーズを繰り出していたのだ。つられるように、選手たちの気持ちもどんどん乗っていく。冷静沈着な監督が多いイメージの高校野球にあって、感情を抑えずに選手と一緒に喜ぶ姿が新鮮だった。

 もちろん、相手への敬意は忘れてはいけない。2月上旬、いちき串木野市のグラウンドを訪ね、ガッツポーズのことを聞いた。

 「あんなに頑張っている子たちが大舞台で活躍したら、うれしくてたまらないんですよ。思わず出てしまう」。監督は頭をかきつつ、こう続けた。

 「本気で野球に向き合うやつばかりですから。僕を含めてね」

 神村学園に集まってくる選手は、エリートばかりではない。昨夏の主将で甲子園でバックスクリーンに本塁打を放った今岡歩夢は、中学時代はチームの5番手投手だった。

 監督自身も東都大学の強豪、亜大ではレギュラーになれなかった。青春ドラマ「スクール☆ウォーズ」の大ファンで、指導方針は「厳しさ10割、愛情100割」だ。「お前ら、悔しくないのか!」「信は力なり」。時にドラマのせりふを用いながら、選手とがむしゃらにチームを作り上げる。

 冬の合宿では、全員が設定タイムを切らないと終えられないランメニューがある。上級生が下級生の背中を押して走りきると、涙を流して喜び合うことも。

 上下関係なく厳しく指摘し合う一方で、試合になればライバルでも声をからして応援する。佐賀出身の4番・正林輝大(3年)は「野球に全てを捧げる監督さんがいるから、ここに来ました」。

 正林ら昨夏のメンバーが10人残る。昨秋は甲子園から鹿児島に帰った1週間後、準備が足りないまま県大会の初戦を迎えた。

 ミスも目立ったが、甲子園同様、「積極的な失敗はOK」と笑顔で攻める姿勢を崩さず、九州大会の4強入りにつなげた。

 監督は言う。「甲子園は、野球を愛する人たちが集まる場所。聖地という表現がぴったり。思う存分に野球を楽しんでほしい」

 この春、あのガッツポーズを何回見られるのだろうか。=おわり(室田賢)