横綱照ノ富士は宇良を押し倒して初白星。大関陣は2日目も安泰とはいかなかった。豊昇龍に初日が出たものの、新大関の琴ノ若は朝乃山に押し出され、貴景勝は阿炎に上手投げで敗れ、ともに初黒星。霧島は2連敗となった。新入幕の尊(たける)富士は2連勝。…

 横綱照ノ富士は宇良を押し倒して初白星。大関陣は2日目も安泰とはいかなかった。豊昇龍に初日が出たものの、新大関の琴ノ若は朝乃山に押し出され、貴景勝は阿炎に上手投げで敗れ、ともに初黒星。霧島は2連敗となった。新入幕の尊(たける)富士は2連勝。

■照ノ富士、宇良を押し倒す

 3月11日は、歴代最多45度の優勝を誇る横綱白鵬の誕生日だ。39歳となった希代の名横綱は宮城野親方となった今、弟子の暴力問題という不祥事のただ中にいる。

 東日本大震災に見舞われた13年前、春場所は中止された。野球賭博問題を発端に八百長が発覚。20人超が処分された。力士の不祥事を理由に本場所が行われなかったのは、初めてのことだった。

 存亡の危機に直面した国技を一人横綱として支えたのが白鵬だった。八百長問題では力士会長として公の場で謝罪。震災支援では自身の支援者などの力を借りて早々に救援物資を手配。現地にも足を運び、被災者を元気づけた。土俵上では強さを見せつけ、相撲人気の回復に一役買った。

 その裏で、2011年5月に初土俵を踏んだ19歳がいた。しこ名は若三勝。現在の照ノ富士だ。八百長問題もあってデビューがずれ込んだが、23歳の若さで大関に。ひざの大けがで序二段まで落ちたものの、番付の最高位まではい上がった。

 この日、32歳はくせ者の宇良が差した右腕を締め上げて動きを止め、最後は自身の右腕でなぎ払うように押し倒した。体の状態を問われ「(15日間が)終わってみないと分からないね」。万全ではないからこそ、歯切れの悪い受け答えになったのだろう。

 相撲に再び厳しい目が注がれる一方、今場所の入場券は完売。見放さずにいてくれる好角家たちのためにも、優勝争いを引っ張って盛り上げるのが現役横綱の務めだ。(松沢憲司)

■若元春「地元・福島に笑顔を」

 関脇若元春にとって特別な日だった。福島市出身の30歳。13年前の11日、学法福島高時代に東日本大震災を経験した。「あの時は何もできなかった。いまは相撲を見てもらえる」。この日は力強く前に出続け、明生を寄り倒し。兄の若隆元、弟の若隆景とともに白星を飾り、「地元に笑顔を一つでも届けられたら」。

 ○王鵬 関脇大栄翔に初顔合わせで勝ち、「対戦できるだけでも誇らしい。押されたが押し返せてよかった」。

 ○豊昇龍 大関陣で唯一の白星。土俵に上がる際に、「(師匠の立浪)親方と目が合っちゃって、力になった」と笑顔。

 ○大の里 2連勝。「立ち合い負けしないよう意識した。まだ始まったばかり。一日一番、集中力を切らさず頑張りたい」

 ○阿炎 2日続けて大関に勝利。「(相手の動きが)スローに見える瞬間が増えてきた。集中して土俵に上がれている」