メッツ移籍で注目を集めている藤浪。その投球にはチームメイトも太鼓判を押している。(C)Getty Images  実戦デビューの内容は周囲が想像したようなものではなかったのかもしれない。現地時間3月7日に米フロリダ・ポ…

 

メッツ移籍で注目を集めている藤浪。その投球にはチームメイトも太鼓判を押している。(C)Getty Images

 

 実戦デビューの内容は周囲が想像したようなものではなかったのかもしれない。現地時間3月7日に米フロリダ・ポートセントルーシーで行われたナショナルズとのオープン戦でメッツの藤浪晋太郎に7回に5番手で登板。危なげなく三者凡退に抑えた。

 わずか10球。本人が「球速はいつでも上がると思います」と語った通り、その全てがスプリットやカッターなどの変化球。球速も最速94.6マイル(約152.2キロ)と、昨季の平均球速98.4マイル(約158.3キロ)とも大きな差が出る形となった。

【動画】球速出ずとも相手打線を寄せ付けず 藤浪晋太郎の無失点投球

 

 藤浪の置かれた立場は決して余裕のあるものではない。基本年俸335万ドル(約4億9580万円)に、85万ドル(約1億2580万円)の出来高払いも付帯する単年契約としては好条件ではあるものの、マイナー降格のオプションも含んでいる。ゆえに春先でも球速を出せるというアピールも求められてはいる。

 ただ、本人は至って冷静だ。藤浪はナショナルズ戦後に地元放送局『SNY』のインタビューで「もっと腕を振れば球速は出たんでしょうけど、今日求めているのはそこじゃなかった」と説明。さらなる先を見据えていた。そこにはメジャー移籍2年目の慣れのようなものも垣間見える。

 進化を止めようとしない藤浪には、阪神時代から「浪漫」があった。制球難こそ玉に瑕だが、一方で100マイル(約160.9キロ)を当たり前に超えてくる剛速球で打者と真っ向勝負を挑める。これは群雄割拠のプロの世界で早々いる投手ではない。そのスタイルはメジャーに移籍してからも大きく変わってはいない。だからこそ、試行錯誤を繰り返しながら高みを目指そうとする姿に人々の興味はそそられる。

 背番号19の底知れぬポテンシャルには、同僚たちも期待を寄せる。オリオールズ時代に藤浪と対戦し、100マイルを超えるストレートで三球三振を喫していたDJ・スチュアートは、「シンタロウ・フジナミの力を理解するには仲間の言葉に目を向けるべき」とした地元紙『New York Post』の記事内で、こう打ち明けている。

「僕は彼と対戦した打席の後、手首に炎症が起きていて、数日の離脱を余儀なくされた。怪我の原因はフジナミと対戦したからだと球団の全員が口を揃えていた。僕らはそう考えるしかできなかったんだ。彼は特別だよ。あんなに強いボールを投げる投手はそうそういるもんじゃない。僕に投げた103マイル(約165.7キロ)のストレートは浮き上がっていた」

 相手打者が文字通り手を焼くボールを持っている。春先の初陣で100マイルを超える速球はなかったが、ここからギアを上げていった時にどう変貌を遂げるのか。マイナー降格のオプションが含まれている契約的にも「結果」が求められるなかで、どれだけの真価を発揮できるのか。藤浪に対する浪漫はやはり尽きない。

 

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

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