「絆」 数多くの名スケーターが在籍し、長い歴史と伝統を持つ早大スケート部フィギュア部門。選手おのおのが練習に励む個人競技の特性ゆえ、部員同士交流の場は長らく少なかったが、ここ数年は部としての活動が活発化している。その早大フィギュア部門を主務…
「絆」
数多くの名スケーターが在籍し、長い歴史と伝統を持つ早大スケート部フィギュア部門。選手おのおのが練習に励む個人競技の特性ゆえ、部員同士交流の場は長らく少なかったが、ここ数年は部としての活動が活発化している。その早大フィギュア部門を主務として、今年度は主将として支えてきたのが岡島右京主将(商4=東京・早大学院)だ。岡島は主将として、部員全員がスケートを楽しむ環境を作り上げ、部全体の活動を活発化させる役割を果たしてきた。自身も選手として日本学生氷上競技選手権(インカレ)などに出場しながら、部全体を支えてきた岡島の主将としての姿に迫る。
最後のインカレで演技をする岡島
個人競技で拠点も異なるフィギュアスケート。部活としての活動は早稲田に限らず増えてきているものの、練習拠点の異なる選手たちをつなぎ合わせるものは、団体競技よりも少ない。その繋がりを強くする役割を担っていた一人が岡島だと、部員の誰もが答えるに違いない。岡島本人は「本当にみんなのおかげで良い部活が作れた」と語るが、歴代の先輩方が築き上げてきたこの早大フィギュア部門を引き継ぎ、その発展に大きく貢献した。
「部員全員にスケートを楽しんでもらえるような環境を作るというのは主将の一番の役割」。岡島はシーズン開幕前、そう述べていた。の言葉通り、学生大会の試合会場や部門部活練習(部練)、WASEDA ON ICEでは和気あいあいとした雰囲気を感じとることができる。「スケートをみんなで上手くなれるようにといった雰囲気作り」にも注力した。部員同士の仲が良いだけでなく、部外でも後輩と特訓を行うなど、楽しみながら互いに高めあえる場を設けてきた。
同期には海外を拠点に練習を行う島田高志郎(人通4=岡山・就実)、西山真瑚(人通4=東京・目黒日大)などが在籍。同期全員で会える時間は限られているはずだが、対談の様子などからは仲の良さと信頼が感じられる。後輩たちからの支持も厚く、折に触れて「右京くんが…」と笑顔でエピソードを話してくれる。こうして岡島が築いてきた部員たちとの絆は、今のフィギュア部門の大きな魅力の一つであろう。
「部員を応援することがすごく好き」と、同じ大会に出場した部員の応援には欠かさず駆けつけた
もちろん、フィギュアスケートに打ち込む一選手としても存在感を残してきた。岡島は主に5、6級男子のカテゴリーでインカレをはじめとする多くの学生大会に出場。「表現することは好き」と話すように、テレビドラマのメインテーマから爽やかな洋楽やオペラの名曲まで、さまざまなジャンルの音楽をエモーショナルかつエネルギッシュな滑りや表情管理で演じ分けてきた。競技生活は順風満帆ではなく、本番でのミスやケガなどに苦しみ、悔しさをにじませる場面も多かった。しかし、どのような状況でも最後まで全力に滑り続ける姿は、観客のみならずリンクサイドで見守る後輩たち、他大学のスケート仲間の心を打つものであっただろう。早大フィギュア部門の主将として、演技を通して競技に向き合う姿を見せ続けた。ラストシーズンの今年は特に、岡島の出番の際には一際熱い声援が飛び交い、リンクサイドにたくさんの仲間たちが集まって演技をたたえた。その仲間たちからの激励について話を聞くと、笑いながら「幸せ者だ」と語ってくれた。
3月9日には早大フィギュア部門セルフプロデュースのアイスショー、WASEDA ON ICEが開催される。多くの4年生にとってはスケート人生、大学生活の集大成の場だ。岡島をはじめとする早大フィギュア部門の選手たちの演技を、そして長い時間をかけて作り上げてた唯一無二のアイスショーを見届けたい。岡島自身はこのWASEDA ON ICEをもって学生生活と競技生活にピリオドを打つ。しかし、築き上げてきたこの部活と絆は、この先も後輩たちの手によって引き継がれていくだろう。
(記事 吉本朱里、写真 及川知世、吉本朱里)