昨年末に行なわれた「2歳女王決定戦」GI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月10日/阪神・芝1600m)は、アスコリピチェーノ(牝3歳/父ダイワメジャー)が3戦無敗で戴冠を遂げた。阪神JFを制して2歳女王に輝いたアスコリピチェーノ。phot…

 昨年末に行なわれた「2歳女王決定戦」GI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月10日/阪神・芝1600m)は、アスコリピチェーノ(牝3歳/父ダイワメジャー)が3戦無敗で戴冠を遂げた。



阪神JFを制して2歳女王に輝いたアスコリピチェーノ。photo by Kyodo News。

 ただし、阪神JFでは有力馬が順調さを欠いて相次いで回避。加えて、GIホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)をレガレイラ(牝3歳/父スワーヴリチャード)が制したことで、例年のように"阪神JFの結果=3歳牝馬クラシックの勢力図"とは言い難い状況にある。

 さらに年が明けて、GIIIフェアリーS(1月7日/中山・芝1600m)をイフェイオン(牝3歳/父エピファネイア)が、GIIIクイーンC(2月10日/東京・芝1600m)をクイーンズウォーク(牝3歳/父キズナ)が、それぞれインパクトのある内容で勝利。しかもここから、牝馬クラシックに向けて重要なトライアル戦が続く。そこでまた、ニューヒロインの登場があるかもしれない。

 今年の3歳牝馬戦線は、まさに戦国の様相。GI桜花賞(4月7日/阪神・芝1600m)、GIオークス(5月19日/東京・芝2400m)の行方はまったく予想がつかない。

 そこで今回、その牝馬クラシックに向けての現時点での3歳牝馬の『Sportivaオリジナル番付(※)』を選定。その結果をお届けしたい。なお、牡馬クラシックへの参戦を表明しているレガレイラは、ここには含めないこととする。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、JRAのホームページでも重賞データ分析を寄稿する競馬評論家の伊吹雅也氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、今春のクラシックを目指す3歳牝馬の、現時点における実力・能力を分析しランクづけ。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。



 1位は、阪神JFを制してこの世代の2歳女王となったアスコリピチェーノ。前回から8ポイント上積みして、首位に立った。

伊吹雅也氏(競馬評論家)
「2月11日終了時点での本賞金は1億320万円で、JRAに所属する現3歳世代の牝馬としては単独トップ。半兄のアスコルターレが3歳春までにオープン特別を2勝するなど、JRAでデビューした兄姉がすべて勝ち上がっている堅実な血統です。

 2017年以降の過去7年に限ると、阪神JFで2着以内となった馬の3歳牝馬三冠競走(桜花賞、オークス、秋華賞)における成績は、6勝、2着6回、3着5回、着外15回(3着内率53.1%)。やはりこのレースの上位馬は、翌春のビッグレースでも相応に高く評価するべきでしょう。桜花賞はもちろん、距離適性を不安視されそうなオークスでも侮れません」

土屋真光氏(フリーライター)

「阪神JFでの勝利はメンバーが手薄になったことによるもの、と見る向きもありますが、GIII新潟2歳S(8月27日/新潟・芝1600m)も含めて3連勝というのは、並の馬ができる芸当ではありません。

 ダイワメジャー産駒は阪神マイルのGIで強いことはよく知られていますが、これまでに結果を出している馬たちとはちょっとタイプが違う印象。もともと素質だけで走っているイメージがありましたが、阪神JFでは力強さも見せました。オークスまでとなると、距離適性に疑問が残るものの、桜花賞では十分に主役となるでしょう」



 2位は、クイーンズウォーク。ランク外だった前回から急浮上した。管理するのは、昨年の三冠牝馬リバティアイランドと同じ中内田充正厩舎。一気に勢力図を塗り替えるのか、注目の1頭だ。

吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「馬体重520kgほどのキズナ産駒ですが、脚が長く、胸囲が少し狭め。もう少し胴に厚みが出てくれば、上下のバランスが整いそうな体形です。つなぎは長めで、クッションは少し硬め程度。ダイナミックなフットワークで、長くいい脚を使えるタイプです。飛びが大きいこともあり、前半から忙しい競馬が合わず、少しずつギアを上げていく競馬がベストでしょう。

 新馬、未勝利と、ワンターンの京都、阪神の芝1800m戦に出走。東京・芝1600m戦の前走、クイーンCで重賞勝ちを決めました。距離を詰めることは本意ではなかったと思いますが、今の体質を考慮すれば、詰めて使うローテーションの選択肢はなく、一発回答で桜花賞やオークスに迎えるレースを探ると、クイーンCしかなかったのでしょう。

 同レースでは大外枠からスタートを決めて後方に下がりましたが、流れには乗れていました。結果、安全策の外を回す競馬で、2着アルセナール(牝3歳/父エピファネイア)以下をねじ伏せて快勝。昨年の三冠牝馬リバティアイランドと今の時点で比べるのは酷ですが、芝2000m以上ならいずれは近づける逸材です。

 流れがタイトになる桜花賞は、本質的な距離適性からすると苦戦する可能性がありますが、オークスに関しては、かなりの確率で勝てる算段。世代トップ級の評価が妥当です」

 3位は、前回1位だったチェルヴィニア(牝3歳/父ハービンジャー)。阪神JFを左トモの違和感によって回避し、順調さを欠いたことによってランクダウンした。それでも、賞金は十分に足りていることから、桜花賞へはぶっつけで向かう。

木南友輔氏(日刊スポーツ)
「阪神JFを回避し、桜花賞直行が発表されましたが、当初のローテーションどおりにいかなかったことによる影響はそれほど気にしなくていいでしょう。"ノーザンファーム&木村哲也厩舎"というタッグには素質馬がたくさんいるなか、クリストフ・ルメール騎手が早くから騎乗を決めていたのがこの馬。戦線復帰すれば、主役となるべき存在です」

 4位に入ったのは、ステレンボッシュ(牝3歳/父エピファネイア)。レースレコードでの決着となった阪神JFでタイム差なしの2着となった点が評価され、前回ランク外からのランクインとなった。

本誌競馬班
「阪神JFで勝ち馬アスコリピチェーノにクビ差まで迫ったレースぶりが光ります。決め手がある分、桜花賞の舞台も合いそうです」

 5位にも、前回ランク外だったアルセナールが入った。1戦1勝で臨んだクイーンCで2着。直線での不利がなければ......と思わせる競馬だっただけに、クラシック本番での飛躍に期待がかかる。

木南氏
「新馬戦(11月11日/東京・芝1600m)も坂を上がってからの脚がすごかったですが、クイーンCもゴール前の脚は強烈。直線でなかなか加速できませんでしたが、ゴール前の脚色は勝ち馬より上でした。ナミュール、ラヴェルの妹で、キョウエイマーチ(1997年の桜花賞馬)の血を引く馬。桜花賞に出られれば、面白い1頭です」

 激戦の3歳牝馬戦線。前哨戦を経て、クラシック本番にはどんな顔ぶれがそろうのか。ハイレベルかつ、白熱した戦いになるであろうレースから目が離せない。