穏やかな表情。闘志は胸に。WTB児玉健太郎。(撮影/松本かおり) ツイてる。何度もそう言ったけれど、訪れた好機に結果を残してきたから、いまここにいる。 4月30日に開催されるアジアラグビーチャンピオンシップ、韓国戦に児玉健太郎が背番号11…
穏やかな表情。闘志は胸に。WTB児玉健太郎。(撮影/松本かおり)
ツイてる。何度もそう言ったけれど、訪れた好機に結果を残してきたから、いまここにいる。
4月30日に開催されるアジアラグビーチャンピオンシップ、韓国戦に児玉健太郎が背番号11のジャージーを着て先発出場する。2014年の春に慶大を卒業し、パナソニックに入団。ルーキーイヤーは試合への出場機会がなかったが、昨季(2015-2016年シーズン)は国内シーンの頂点に立ったワイルドナイツの欠かせぬ戦力となった。
「(出場機会をつかんだ)きっかけはアキヒトさん(山田章仁/鞘ヶ谷ラグビースクール→小倉→慶大→パナソニックで先輩)の怪我でした。それで出番が回ってきた。昔から運だけはあるんですよ。大学のときも先輩が練習で怪我をして回ってきた出番がレギュラーになるきっかけでした」
今回もある意味ラッキーだ。スーパーラグビーの開催機関と重なり、サンウルブズの選手たちが参加できない中で招集されたジャパンに名を連ねた。
最初のきっかけがどうだったか。そんなことは、結果を積み重ねていけばどうだってよくなる。児玉は、それを経験上知っている。だから今回も期待に応えるパフォーマンスを披露して、桜のジャージーの近くにいつもいる存在になりたい。パナソニック入りも、2019年のワールドカップメンバーになるために、いちばんいい環境だと考えたからだ。
ワイルドナイツではチームのスタイルを理解するのに長い時間を要したものの、そこの理解力が深まり、対応力高くプレーできたことで飛躍できた。今回のジャパンでも、チームがプランを遂行する力になることはもちろん、他の領域でも自身の価値を示したい。
「WTBですから、多少きつい形でボールをもらったとしてもトライを取り切るようなプレーをしたいですね」
それはこの先、代表候補に入り続けるための武器のひとつにもなる。
賢いフットボーラーになる一方で、力強いフィニッシャーとなる必要性も感じたのは、このオフにスーパーラグビー、ハイランダーズに留学したときだった。ディベロップメントチームの試合に出場する機会を得た。相手にも味方にも、同じポジションにはアイランダー系パワーランナーたちがひしめいていた。
「彼らには問答無用のトライをとる力があった。自分にもそういう部分、がつがつプレーする姿勢が必要だと思いました」
ハイランダーズのトレーニングを見て気づいたこともある。ワイルドナイツがやっていることとあまり変わらぬ内容に、「自分たちの方向性は間違っていない」と自信になった。彼らはそれをクォリティー高く、日々繰り返しているから世界トップクラスのチームになれるし、選手も育つ。見習わなければならない。そして自分たちも、もっとやれるはずだと思った。
初めてのジャパン。初めてのテストマッチ。またまた目の前にあらわれたビッグチャンスをものにするために、「すべてのプレーを強気でやりたい」と覚悟を決める。
「韓国は気合いで戦うチームという印象があります。イチかバチかのタックルもある。いちど流れを渡してしまうと、それを取り戻すのが大変になる。最初からやらないと」
問答無用。スマートなプレーを売りにする男が、愚直に勝利を目指す。