■斎藤佑樹「未来へのメッセージ」 和歌山・耐久へ 今春の選抜大会に初出場する和歌山・耐久にうかがいました。学校創立172年、野球部も約120年前からあります。僕の母校である東京・早稲田実も歴史が長いです。近畿4強の強さの秘密とともに、伝統校…

■斎藤佑樹「未来へのメッセージ」 和歌山・耐久へ

 今春の選抜大会に初出場する和歌山・耐久にうかがいました。学校創立172年、野球部も約120年前からあります。僕の母校である東京・早稲田実も歴史が長いです。近畿4強の強さの秘密とともに、伝統校としての思いも聞きたいと考えていました。

 練習を見て驚いたのが、自分たちの課題が守備だと共通認識を持ち、突き詰めていたところです。

 高校生だと、監督が指示して動くことが多くなりがちです。ただ、耐久では「課題練習」として、野手が球際の捕球を繰り返したり、捕手は外野からの返球を想定した捕球をしたり。一つひとつは特別な練習ではないけれど、課題を明確にして取り組む姿勢が良いなと感じました。

 赤山侑斗主将は「『こういう課題があるからこうしたい』と、全員が自分の課題を持って取り組めている」と言っていました。今は「基礎固め。しっかり数を受けて、色々なボールに対応できるように目指している」とも。課題が見えることは、自分たちにプラスに働きます。

 僕も3年春の選抜で課題が見えて、それを克服することで夏へのステップアップにつなげ、全国優勝できたと感じています。彼らはいま、昨秋に出た課題に取り組んでいます。選抜では自分たちの立ち位置がわかり、さらにやらないといけないことが出てくる。それが夏にも生きるはずです。

 OBでもある井原正善監督(39)は「今の選手には情報を調べる時間があり、それが野球を考える時間になっている。私が全てではない。時代に合うものはどんどん合わせたらいい」と話していました。井原監督や僕が高校生の時にはなかった考え方でしょう。課題練習やアプリでの体重管理も、こういう考えからきているのだと思いました。

 地元の人からの応援で伝統校の重みを感じるという話も印象的でした。「色々な人の支えがあって僕らがある。今まで色々な人が努力してきたことが、いま実ったのかなと思う」と赤山主将。普段、高校生が地元とのつながりを感じることはあまりないと思います。僕も全国優勝して初めて、商店街の人が盛り上がってくれたことを知ったくらいです。

 井原監督は「声援が『頑張ってね』から『ありがとう』に変わった。地域の人が自分事として選抜出場を捉えてくれている」と教えてくれました。結果を求めるだけではなく、それが地域や周囲の人に元気を与えることができると知ることも、大切だと思います。