日本人メジャーリーガー14人の立ち位置(ア・リーグ投手編)「大谷翔平は打点王、吉田正尚はDH、ヌートバーは20本塁打?」「山本由伸はエース格、今永昇太は2番手、37歳のダルビッシュは...」 メジャーリーグのキャンプが各地でスタートを切った…

日本人メジャーリーガー14人の立ち位置(ア・リーグ投手編)

「大谷翔平は打点王、吉田正尚はDH、ヌートバーは20本塁打?」
「山本由伸はエース格、今永昇太は2番手、37歳のダルビッシュは...」

 メジャーリーグのキャンプが各地でスタートを切った。野手・投手ともに2024シーズンを戦うメンツが合流し、連日ニュースを賑わせている。

 オフシーズンに移籍してきた選手も加わり、各チームの戦力も徐々に見えてくるこの時期、日本人選手のチーム内のポジションは果たして──。彼らがどのような立ち位置で今シーズンに挑むのか、昨シーズンのデータなどを紐解きながら探ってみる。

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前田健太は新天地タイガースで主役となれるか

 photo by AFLO

 今オフ、ミネソタ・ツインズからFAになった前田健太(35歳)は、同じア・リーグ中地区のデトロイト・タイガースと2年2400万ドル(約35億円)の契約を交わした。今年はメジャーリーグ8年目(全休の2022年を含めず)で、開幕早々に前田は36歳の誕生日を迎える。

 今のところタイガースの開幕ローテーションは、タリック・スクーバル、前田、ジャック・フラハティ、マット・マニングの4人が並び、最後の1枠はリース・オルソンかアレックス・ファエドとなりそうだ。フラハティも新加入(前ボルチモア・オリオールズ)の選手で、前田の約1カ月後に1年1400万ドルの契約を結んだ。

 シーズン序盤から中盤には、これら先発陣の顔ぶれにケイシー・マイズが加わる可能性もある。マイズは2022年6月にトミー・ジョン手術を受けた。前田以外の6人は、いずれも20代だ。規定投球回に達したことがある投手は、前田(2016年と短縮シーズンの2020年)とフラハティ(2019年)のふたりしかいない。

 絶対的なエースが不在のなか、前田は2番手か3番手として期待されているはずだ。トミー・ジョン手術明けの2023年は104.1イニングで防御率4.23ながら、4月下旬に右上腕を痛めて約2カ月を故障者リストで過ごしたあとは、88.1イニングで防御率3.36を記録した。

【前田健太は10年ぶりポストシーズン進出の切り札】

 ローテーション全体としても、ポテンシャルは低くない。1番手と目されるスクーバルは、昨年の夏にトミー・ジョン手術ではないひじの手術から復帰し、80.1イニングで防御率2.80。この防御率は、先発80イニング以上の140人のなかで5番目に低かった。

 また、1巡目指名は7人中5人を数える(前田の2006年NPB高校生ドラフト1巡目も含める)。フラハティは2014年の全体34位、マニングは2016年の全体9位、ファエドは2017年の全体18位、マイズは2018年の全体1位だ。

 タイガースは2011年〜2014年の地区4連覇を最後にポストシーズンから遠ざかり、2017年以降は7年続けて負け越している。ただ、一塁手のスペンサー・トーケルソンと外野手/DHのケリー・カーペンターはメジャーリーグ2年目の昨年に揃って台頭。今年は、プロスペクトのコルト・キースが開幕から二塁を守る予定だ。夜明けは近づいており、今秋のポストシーズン進出も夢ではない。

 移籍1年目の前田と違い、トロント・ブルージェイズの菊池雄星(32歳)は3年3600万ドル(当時約42億円)の契約最終年を迎える。

 昨年は自己最多の167.2イニングを投げ、自己ベストの防御率3.86を記録した。今年の開幕ローテーション入りも、まず間違いない。立場としては4番手だろうが、これは相対的なものだ。

 菊池だけでなく、ケビン・ゴーズマン、ホセ・ベリオス、クリス・バシットの3人も、前年と同じくブルージェイズのローテーションに揃う。昨年、彼らが記録した防御率はいずれも菊池より低く、イニングも菊池より多かった。

 ちなみに3人とも、菊池を上回る契約を手にしている。ゴーズマンは今年が5年1億1000万ドルの3年目、ベリオスは7年1億3100万ドルの3年目、バシットは3年6300万ドルの2年目だ。

【今オフFAの菊池雄星は2024シーズンが最重要】

 先発最後の5番手は、若手のアレック・マノアか、前・中日ドラゴンズのジャリエル・ロドリゲスのどちらかだろう。マノアは再スタートのシーズン。メジャーデビューした2021年に111.2イニングで防御率3.22を記録し、2022年は196.2イニングで防御率2.24と飛躍を遂げたが、2023年は制球難に陥り6月と8月に降格。87.1イニングで防御率5.87に終わった。

 ロドリゲスは5年3200万ドルの契約で入団した。イニングに加えて完了数による出来高もついていることから、リリーフ投手としての起用も想定されている。『MLB.com』のキーガン・マシソン氏によると、キャンプインしたロドリゲスは「先発投手として投げたいが、チームのためにどんな役割でもこなす」と語ったという。

 いずれにせよ、先発1番手から4番手までは、ブルージェイズはどのチームにも引けを取らない。今シーズン目指すのは、過去2年に続くポストシーズン進出のその先だ。FAイヤーの菊池にとっては来年以降の契約を左右する、重要なシーズンでもある。

 ブルージェイズと同じア・リーグ東地区のタンパベイ・レイズには、日本ハムからポスティングシステムで上沢直之(30歳)が入団した。上沢はマイナーリーグ契約からメジャーデビューを目指す。

 現時点でローテーションを組むとすれば、ザック・エフリン、アーロン・シバーレ、ザック・リテル、ライアン・ペピオ、タージ・ブラッドリーの5人が有力だ。もっとも、4番手と5番手は確定していない。

 ペピオは12月のトレードで、ジョニー・デルーカとともにロサンゼルス・ドジャースから加入した。入れ替わりにレイズからドジャースへ移ったのは、タイラー・グラスナウとマニュエル・マーゴ(+金銭)だ。レイズはFAまであと1年の先発投手と外野手を放出し、長く保有できる若手の先発投手と外野手を手に入れた。

 ペピオがメジャーリーグで投げたのは、2022年〜2023年の計78.1イニングだ。先発登板に限ると49.1イニングしかない。ブラッドリーはペピオに勝るとも劣らぬプロスペクトとして期待されていたが、メジャーリーグ1年目の昨年は先発21登板の102.2イニングで防御率5.52と結果を残せず、最後の2登板はリリーフとして投げた。

【上沢直之の理想はメジャー契約→先発ローテ入り】

 このふたりのほかに、シェーン・バズ、ジェイコブ・ロペス、メイソン・モンゴメリーといった若手も、ローテーション入りに関しては上沢のライバルだ。28歳のブレンダン・マッケイも、そのひとりとなり得る。二刀流のプロスペクトだったマッケイは、2020年から度重なる故障に見舞われてきた。投手に専念し、出直しを図る。

 レイズは5年続けてポストシーズンに進んでいるが、昨年、ジェフリー・スプリングスとシェーン・マクラナハンはそれぞれ5月と8月にトミー・ジョン手術を受け、7月にはドリュー・ラスムッセンもひじにメスを入れた。そのため、ローテーションは不透明になっている。彼らの復帰は、マクラナハンが2025年、あとのふたりは早くても今夏以降の見込みだ。

 候補は多くても、上沢にもローテーション入りのチャンスはある。また、リリーフ投手として開幕を迎えるか、マイナーリーグからのスタートとなっても、そこで結果を残せば途中でローテーションに加わる可能性は低くない。

<了>