ニコニコ顔のイメージが強い大相撲の宇良。そんな31歳が涙を止めることができなかった。 23日、京都市内であった後援会主催の「小結昇進祝賀会」で、嗚咽(おえつ)する一幕があった。 「今日、どうしても見て欲しかったのが紋付きはかま。これ、大変…

 ニコニコ顔のイメージが強い大相撲の宇良。そんな31歳が涙を止めることができなかった。

 23日、京都市内であった後援会主催の「小結昇進祝賀会」で、嗚咽(おえつ)する一幕があった。

 「今日、どうしても見て欲しかったのが紋付きはかま。これ、大変高価な物で」

 明るい口調で謝辞を述べはじめた宇良が、突然言葉を詰まらせたのは、2018年2月末の思い出を語りだした時だった。

 当時、右ひざの大けがで2場所連続で全休。春場所は幕下に転落することが決まっていた。

 それでも、支援者たちが京都市内で激励会を開いてくれた。春場所の番付発表前日だった。

 その会に、宇良は紋付きはかま姿で参加した。新番付が発表されれば十両ではなくなる。幕下以下の力士は紋付きはかまの正装は許されない。そんなギリギリのタイミングで開かれた会だったという。

 「あの日『今日が紋付きはかまを着られる最後の日です』とあいさつしたことを、今でも覚えています。今日、みなさまの前であいさつできることが、自分にとってとても感慨深く……」

 涙を流す宇良に、約400人の参加者から温かい拍手が起きた。

 けがの影響で一時は序二段106枚目まで番付を落とした。引退も考えたが、周囲の支えもあって復帰。

 再入幕を果たした21年、後援会が正式に発足した。ただ、世の中はコロナ禍のまっただ中。会員との交流の場は持てなかった。

 ひざの古傷を抱えながら奮闘し、今年初場所で新三役となる小結に昇進。後援会発足後は初めての大規模な交流の場が、めでたい席になった。

 さらなる飛躍を期した初場所は6勝9敗。10日からの春場所では、平幕に逆戻りする。

 大阪府寝屋川市出身で、京都府立鳥羽高から関学大に進学。宇良にとってはまさに「ご当地場所」。いつも以上の声援が背中を押してくれるはずだ。

 「幕内上位の壁はまだまだ厚くて、期待に応えられないことも多くなりますが、自分の持っている力を存分に発揮してこれからもがんばりたい」

 涙の余韻が残る鼻声で宇良は声援を呼びかけ、頭を下げた。(松沢憲司)