1年間築き上げてきたチーム力、4年間の努力の集大成、チームを率いる責任——。それぞれの想いを懸けた大舞台、全日本大学選手権(全日本インカレ)がついに明日、開幕する。早大は絶対王者として、5年間大学の頂点に君臨し続けてきた。そして次なる高み…
1年間築き上げてきたチーム力、4年間の努力の集大成、チームを率いる責任——。それぞれの想いを懸けた大舞台、全日本大学選手権(全日本インカレ)がついに明日、開幕する。早大は絶対王者として、5年間大学の頂点に君臨し続けてきた。そして次なる高みは全日本インカレ『6連覇』。寄せられる期待への重圧、常に追われる苦しさ、そして『6連覇』へ挑戦する楽しみを感じられるのも早大だけ。今まで積み重ねてきたもの全てぶつけ、「日本一」へのロードを駆け上がれ。
今季の早大は、大塚達宣副将(スポ4=京都・洛南)が日本代表活動に参加し、ずっとチームを離れた。留学に行っていた中島明良(法4=京都・洛南)と芳賀雄治(商4=山形南)も欠き、多くの4年生がいない状態で春季関東大学リーグ戦(春季リーグ戦)が幕を開けた。そんな中でも今年からセッター前田凌吾(スポ1=大阪・清風)という新風を吹き込み、岩本大吾主将(スポ4=兵庫・市尼崎)の下、始まりの1歩を踏み出した。春季リーグ戦では、今年から主力となったOH山田大貴(スポ3=静岡・清水桜が丘)や、エースの一翼を担うOH水町泰杜(スポ3=熊本・鎮西)ら3年生の活躍もあり、次々に勝ち星を挙げ、順調な1年の滑り出しを見せる。また5月に行われた黒鷲旗男女選抜(黒鷲旗)では、実業団から大金星を挙げるなど、波乱を巻き起こした。「今年の早大も強い」。残されたメンバーでも、このまま盤石な組織力を築き上げていく――—黒鷲旗の戦いぶりを見た者は誰もがそう思わずにはいられなかったはずだ。
早慶戦で全員で円陣を組む早大
だがそううまく事は進まなかった。強力な「個」を有する早大において、それをうまくまとめあげ、「チーム」「組織」として一体となることは容易ではなかったのだ。
5月28日。ここで早大は大きな壁を突き付けられることになる。春季リーグ・東海大戦、ともに9勝1敗で春季リーグ戦の優勝を懸けた一戦だった。試合はまさに激闘、お互い一歩も譲らない展開となる。だが最終局面で早大は攻め切ることができず。相手の勢いに押されてしまい、「2点差」で第3、4セットを落とし敗北。春季リーグ戦を2位で終えた。この試合での反省から、早大はチームの立て直しを図り、続く東日本大学選手権(東日本インカレ)へ挑んだ。今度こそ「チーム力」で勝利を。だがそこでもまた同じ悔しさを味わうこととなる。
準々決勝と、準決勝が同日に行われるというタフなスケジュールの中、早大は準々決勝・明大戦を危なげなく勝利し、その後筑波大との決勝進出を懸けた一戦へ挑んだ。試合は接戦となり、1点を巡る攻防が終始、繰り広げられた。だが結果は、またも「2点差」での敗北。
「チームを引っ張る4年生の力が足りない」(岩本)。
「チームとしてまとまりきれていない」(前田)。
「僕たちは「個」でやってしまっている」(山田)。
早大は、再び悔し涙を飲んだ。
春の2大会では頂点の上り詰めることはできなかった。「チームとしてまとまりきれていない」という大きな課題を抱えて、早大は鍛錬の夏を迎えた。
秋季リーグ戦・中大戦での円陣
夏はあっという間に過ぎ、季節は秋へと移ろう。秋季関東大学リーグ戦(秋季リーグ戦)の開幕が目前に迫る中、主将・岩本の口からはこの言葉が発せられた。
「完ぺきではないが、今いるメンバーでチームを作ってきて良い方向に向かっている」。
もう一度、課題を洗いざらいにし、チームを一から見直した。そしてその手応えを徐々に得つつある中、全日本インカレ前最後の公式戦が始まった。
秋季リーグ戦、早大は「トータルディフェンス」などチーム力の部分で、夏の成果を発揮。さらに勝負どころでも果敢に攻める姿勢を貫き、逆転からセットを奪取するなどの進化を見せ、順調に勝利を重ねていった。そして最終週を迎える直前、日本代表活動を終えた大塚副将がついにチームへと合流し、早大の最後のピースがそろった。
迎えた春の王者・東海大との一戦。大塚副将が合流して間もないということもあり、チームとしてバタついてしまう場面もあった。だが、劣勢になった時でも立ち向かう姿勢を持ち続け、勝利を収める。早大は春のリベンジを遂げ、翌日の全勝対決・中大戦へと勝利の望みをつないだ。
今季、初のタイトルまであと少し。中大戦でも早大は個々が持つ強烈なサーブを中心として得点を重ねた。秋季リーグ戦を通して見られた、勝負どころの強さも要所で発揮され、試合はフルセットにもつれ込む接戦に。だが「基本的な部分ができていなかった」(松井泰二監督、平3人卒=千葉・八千代)。再び早大は優勝を目前にして、敗北を喫する。
負けはしたが、大塚副将がチームに合流したばかりの中で「どこまで通用するのか」という部分で収穫もあった。また新たな成長へとつながる足がかりを見つけることができた。そして秋季リーグ戦閉幕後からの約1カ月半、早大は「日本一」に向けてのスタオートを、やっと全員の足並みをそろえて切ることができた。
「この1カ月間で徹底的にやることができた」(松井監督)。
「やっとこのチームでやっていくんだという意識がみんなに芽生えたのかも」(中島)。
「だいぶチームとして固まってきて、自信もついてきた」(大塚副将)。
勝利に向け団結する
全員で「日本一」を見据え、研鑽(けんさん)を重ねてきた。それでもなおやり残したことはあるが、確かな自信と手応えを得た。これまでの道のりは決して平たんではなく、高い壁に立ち止まり、行きづまることもあった。
だが「良い時には新しいものは生まれない」(松井監督)。
もがくなかでも着実に成長を遂げ、早大は組織としての力を培ってきたのだ。
そして今、早大は最後に待ち構える険しい道へと歩み出そうとしている。
最高峰の山を越え、「日本一」の頂に上り詰めた先で―― 目の前に広がる景色はきっと、光輝いているはずだ。
(記事・写真 山田彩愛)