第5回は早大を導いてきた松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)。1年間誰よりもチームを見てきた監督の目には、今チームはどのように映っているのか、開幕が迫る全日本大学選手権(全日本インカレ)に向けて、チームの状態について話を伺った。&nbs…

 第5回は早大を導いてきた松井泰二監督(平3人卒=千葉・八千代)。1年間誰よりもチームを見てきた監督の目には、今チームはどのように映っているのか、開幕が迫る全日本大学選手権(全日本インカレ)に向けて、チームの状態について話を伺った。

 

※この取材は11月26日に行われたものです。

 

「今まで以上に濃いかたちのチームができている」


対談中の松井監督

――松井監督から見て、今のチームの状態はいかがですか

松井監督 状態としては4年生、3年生が非常にまとまっているので、そういう点では順調に来ているのではないかと思っていますね。

 

――秋季リーグ戦(秋季関東大学リーグ戦)が終わってからずっと状態は良い方向に向かってきているということでしょうか

松井監督 そうですね。秋リーグは、達宣(大塚達宣副将、スポ4=京都・洛南)が教育実習から戻ってきて、わずかな練習期間しかありませんでした。その状態で勝てるような甘いリーグではないので、当然負けてしまったことは受け入れなければいけないことですが、そこで自分たちができていないことが明確になったのは良かったです。課題をこの1カ月間で徹底的にやることができたので、そこは良くなってきたのかなと思います。

 

――そのできていなかった部分とは何ですか

松井監督 やはり関係性の部分ですね。他のチームが1年間かけてチーム作りをしている中で、達宣がシニアでやってたということで、隣の人との関係性やシステムを機能させる上での細かいところが出来上がっていませんでした。秋リーグはその状態でしたが、今詰めてきて、だいぶ完成してきましたね。

 

――手応えもあるということでしょうか

松井監督 ケガ人もいないですし、今日の練習でも「やってやる」という気持ちが非常に感じられたので、良いと思います。

 

――「関係性」という部分でまずは守備について、フロアとブロックの状態を教えてください

松井監督 ブロックもチームとして機能してくるようにはなりました。その分フロアのディフェンスもやりやすくなってきていると思います。ただ、まだまだ相手との駆け引きだとか、もう少しできなければいけない部分はあります。それはインカレの試合の中で、成長していく部分だと思っています。この時点では秋と比べてもブロックも良くなりましたし、ディグとの関係性という点でも良い状態だと思います。

 

――秋季リーグ戦で敗れた中大戦などはブロックがあまり機能していなかった印象を受けました。そこからどのような指導をされてきたのですか

松井監督 中大の時に良くなかったのは相手が何をしてくるのかを冷静に判断できずに、慌ててしまい試合の中でうまく判断することができていなかったからです。バレーは相手にボールがある時は、自分たちは自由に動くことができるので、そこで落ち着いて。ネットからくるボールを止めることに集中すればいいので、基本に立ち返って、基礎の部分を改めてやってきました。だいぶ落ち着いてブロックできるようになって、精度も上がってきたのかなと思います。

 

――ではアタックについてセッターとスパイカーの「関係性」はいかがですか

松井監督 トス回しという点では、セッターの前田くん(前田凌吾、スポ1=大阪・清風)とコミュニケーションを取って、いろいろ見てきました。凌吾(前田)が持っているセッター像や高校からの自分のスタイルがあるのですが、そういったところとはまた違って、早稲田の選手の良さを引き出すセットってなんだろうというところについて、話をしました。それが良いかたちに変わってきて、前田の良さも良く出ています。具体的にはまず、トスの上げ方を変えました。そしてその上げ方が変わることで、(トスを)上げやすくなって、どこにあげればいいかという配球も、トスの精度も上がっています。セッターが秋リーグから1番成長したのかなと感じています。

 

――監督ご自身が、一番目を向けたのがセッターの前田選手だったのですか

松井監督 そうですね。やはり1年生ですし、得点を取らないと勝つことができないので。得点を生むトスからアタックという部分で、イマイチうまくいっていない部分が秋リーグでは見受けられたので、そこを徹底して修正しました。

 

――いつも全日本インカレに焦点を合わせて完成度を高めているというお話を伺います

松井監督 そうですね。やはり一戦一戦「全部出す」ということを目標にはしています。春(春季関東大学リーグ戦)、東日本(東日本大学選手権)、秋(秋季関東大学リーグ戦)の中で課題が出たらそれを改善してという流れでいつもやってきています。そういうのを積み重ねてきて、今は8合目9合目まで来ているので、最後はもうやり切る、全部出すというところですね。今年も変わらずそういうチームの作り方をしていますね。

 

――全日本インカレまであと少しですが、今はチームの完成度も高いところまできているのですか

松井監督 完成度的には高いと思いますが、毎年そうですがやり残しとか「もう少しこうしたい」という部分は選手も私もあります。そこの部分っていうのは、考えずに今持っている力を全部出し切るというところで、前を向いてやっていきたいと思っています。完成度は高いのですが、不安がないわけではないですね。

 

――強みを引き出していければということでしょうか

松井監督 そうですね。また試合が終わった後にできていないところを振り返って、そこの課題をつめて次の試合に臨んでいきたいと思っています。1回戦より2回戦、2回戦より3回戦というかたちで、しっかりと持っていけるようなチームを作ってきたので、そこは例年と同じ仕上がりになっているのではないかと思っています。

 

――今年の早稲田はどんなチームですか

松井監督 大塚がシニアでチームを離れていたので、ある意味即席チームのようなものですね。ですが、大塚はシニアに参加している中でも、学生や私との連絡のやり取りを続けていて、チームから離れていたけれど、心は早稲田にもあったのかなと。心はあったのかもしれないですが、一緒の時間は共有できていないので、その部分を秋以降詰めてやってきました。そういう意味では今までとは違うチームになっているのかなと思います。

 

――4年生がチーム作りをしていく上で、壁にぶつかっている印象を受けました。監督からみていかがでしたか

松井監督 やっぱり苦しいというか厳しいときに新しいものが生まれると思っています。そういう意味では良い時には新しいものは生まれないのかなと。厳しい時やだめだなって時に気づきがあるので、そういう意味では相当成長した学年ではないのかなと思っています。達宣がいなくても、みんなで知恵を出し合いながらここまでチームを作ってきていましたね。あとは、中島(中島明良、法4=京都・洛南)と芳賀(芳賀雄治、商4=山形南)が1年間の留学に行ったこともあって、実はチームに1番影響力のある3人が、前半チームにいない状態でした。その部分で残っていた4年生は苦しんでいたのかなと思います。ですが今は苦しんだ分、まとまっていますし、今まで以上に濃いかたちのチームができていると思います。

 

――大学というカテゴリーで最後の試合になる4年生に何かメッセージがあればお願いします

松井監督 歴代見てきていて良い代はたくさんありましたが、その中でも今年は非常に良い学年だなと思っています。仲が良いですし、ダメなものはダメだといえる学年です。そして何より優しくて、後輩のことを非常に慮る学生たちがそろっているので、最後に良い思いができればいいなという感情を、すごく抱く代ですね。プレッシャーを感じずに、自分たちの良さを最後に全部出してほしい。私の思いとしては、ただそれだけですね。

 

――最後に全日本インカレに向けて意気込みをお願いします!

松井監督 結果というのは誰もわからないことなので、結果を求めるのではなく、やってきたこと自分を信じて、学生たちには全部出してほしい、やり切ってほしいですね!

 

――ありがとうございました!

 

(取材・編集 山田彩愛 写真 五十嵐香音)


全日本インカレへの意気込みを書いていただきました! 

 

◆松井泰二(まつい・たいじ)監督