2年ぶりに上り詰めた全国大学選手権決勝の舞台。対するは、帝京大。前半早々に先制トライを奪われたものの、セットプレーを起点にWTB槇瑛人(スポ4=東京・国学院久我山)、WTB松下怜央(スポ4=神奈川・関東学院六浦)がトライを挙げる。しかし後…
2年ぶりに上り詰めた全国大学選手権決勝の舞台。対するは、帝京大。前半早々に先制トライを奪われたものの、セットプレーを起点にWTB槇瑛人(スポ4=東京・国学院久我山)、WTB松下怜央(スポ4=神奈川・関東学院六浦)がトライを挙げる。しかし後半の流れは、完全に帝京大だった。得点を取り返そうと奮闘したが、追加得点を挙げることができず、20ー73で大敗。準優勝という結果で、相良組の日本一への挑戦は閉幕した。
試合は早速動いた。前半2分、帝京大に先制点を奪われてしまう。勢いそのままに攻め入れられるが、フッカー佐藤健次(スポ2=神奈川・桐蔭学園)のジャッカルで攻撃の芽を摘む。すると11分、ビッグプレーが生まれた。早大ボールスクラムからCTB岡﨑颯馬(スポ3=長崎北陽台)が敵の防御網を切り込み大きくゲイン。その後SO伊藤大祐(スポ3=神奈川・桐蔭学園)が内返しパスを放ち、これに反応した槇がインゴール中央にトライを挙げた。「分析した上でのトライ。良い形のトライだった」(CTB吉村紘(スポ4=東福岡)。続く16分にも、敵陣22メートル内でのラインアウトから左大外までボールをつなぎ、チャンスをものにした松下がインゴール左隅に滑り込み、トライ。「FWが接点を頑張ってくれたおかげ(松下)」。しかし、以降は相手FWの連続攻撃を抑え切ることができず、3トライを献上。12ー28とリードを許し、ハーフタイムを迎えた。
突破を図るフッカー佐藤
後半開始直後、帝京大のオーバーザトップからPGを選択し、吉村が冷静にゴールを沈める。3点を追加し、スコアは15ー28。だがここからは相手優勢の時間が続く。「コリジョンの部分で負けてしまった」(NO・8村田陣悟、スポ3=京都成章)と立て続けに得点を奪われ、早大は八方塞がりとなってしまった。なんとか食らいつこうとする早大であったが、帝京大は攻撃の手を全く緩めない。しかし後半39分、帝京大が自陣深くに攻め込み、窮地に立たされていたところを槇がインターセプト。すぐさま攻勢に転じ、グラウンドの端から端までを走り切る見事なランで待望のトライを挙げた。それでも王者の壁は高く、後半だけで7トライの暴れっぷりを見せつけられる。終盤に見せた粘り強いディフェンスも奏功せず、ノーサイドが告げられた。最終スコアは20ー73、今季4度目の対戦でも敗戦を喫し、王者へのリベンジは来季に持ち越されることとなった。
2トライを挙げる活躍を見せたWTB槇
「帝京は1枚も2枚も上手だった」(フランカー相良昌彦主将、社4=東京・早実)。完敗を喫し、目を赤らめた相良主将。『Tough Choice』をスローガンに掲げ、相良組は今日までを駆け抜けてきた。低く、強く踏み込んで、相手を倒す。倒れたらすぐに起き上がり、またファイトする。どこまでもスローガンを体現し、貪欲に突き進む赤黒戦士の姿は多くの人の目に映ったことだろう。この敗戦の悔しさを次の世代につなぎ、それぞれが新たなスタートを切る。「絶対にどこにも負けないようなスクラムを組みます」(プロップ亀山昇太郎、スポ2=茨城・茗渓学園)。すでにバトンは受け継がれた。『荒ぶる』という凱歌を響かせるべく、来季も再び決勝の舞台に戻ってこよう。飽くなき向上心を胸に日々戦い続けてきた相良組、たくさんの感動をありがとう。
(記事 谷口花、写真 冷水睦実、山田彩愛)
コメント
大田尾竜彦監督(平16人卒=佐賀工)
――今日の試合を振り返って
今日は大差がついてしまいましたが、ここまで本当に(相良)昌彦をはじめこのチームが歩んだ道のりは本当に素晴らしいもので、胸を張れるチームでした。本当に勝たせられなかった、大差の展開になってしまったのは、本人たちはすごく辛かったと思いますが、全て僕の責任で、力のなさを痛感しました。
――今日のゲームプランとその遂行具合はどのように感じていますか
前半、とにかく粘ろうということで、キックでエリアマネジメントもきっちりとやりながら、攻めるタイミングがあれば自分たちが準備してきたもので攻めていくということを用意していました。前半最後のトライなどが試合の流れとしては非常に痛かったですし、前半もう少しうまく戦えていたら戦術なども変わっていたのではないかと感じています。そこでない部分も、力の差を感じました。
――その力の差というのはどの分に感じていますか。また、点差が開いた原因をどのように考えますか
ミスをした時の処理が大きな穴となって失点につながるところがありました。帝京さんは、最小の傷口で済んでいるという印象です。(具体的には)ボールを失わない力ですね。相良が言っていたように、前半は(早大も)人数をかけて粘っていたのですが、ボールを取れる気がしない。その上でオプションを持ったアタックを仕掛けてこられるので、ボールキープ力が何枚も上手だと上から見ていて感じました。また、これだけの大きな点差になったというのは、ラインブレイクされる数の差と感じています。ファーストフェーズからあれだけラインブレイクされるというのは経験したこと、想定したことがないですし、そこは対抗戦の時と変わったと思います。
――ボールキープ力とは相手のフィジカルが強いという話だと思うのですが、あのあたりの差を埋めるには
今年は、フィジカルに注力してベースアップして、去年よりはだいぶ戦えるようになっています。それに加えて少しイメージ鋭さが足りない、プレースピードが足りないと感じています。特にディフェンスでボールを取り返せる選手は、昌彦をはじめとして(早大には)いるのですが、なかなか彼らがコンテストをするような相手を早く倒せるタックルが少ない感じがします。2、3秒粘られてラック、2、3秒粘られてオフ、この連続と思うので、真っ直ぐ来た相手に対して、タックルですぐコンテストに行けるくらいの鋭い動きが+α乗っかってくる必要があると思います。
――帝京大が試合中に使い分けていたキックの種類、変化を見ていて早稲田としてどのように対応していこうと考えていましたか
勝つチャンスを考えた時に、帝京の余裕を奪うことが重要であると感じていました。点差をくっついていくしかないのですが、元々セットプレーが強みのチームがセットプレーを多く使ってきて、うちがついていけなくなり、(相手に)余裕を持たせる展開になったと思います。(自分たちが)やりたいエリアでもう少しプレーしたかったというのが感想です。
――ハイパントとの球際のリアクションの差について、どのように捉えられていますか
今年1年間作っていく中で、対抗戦の帝京戦あたりから非常に自信というのを、コンテストボールに対応していって、それの少し一本調子になったのかというところがありますし、最後の槇(瑛人、スポ4=東京・国学院久我山)が競り合ったところの帝京さんの選手の数が5、6人いたと思うのですが、ああいうのをうまく散らしながら蹴るというのがなかなかできなかったかなと思います。こぼれ球の反応、一歩抜け出した時のああいう反応などを全て上回られたという印象です。
――これから、帝京大とのこの差を埋めるために何が必要であると感じていますか
今年僕が(監督を)2年やってるのですが、攻撃に比重を置いたベースづくりをしてきました。これをベースと捉え、極端に練習時間をアタックもしくはディフェンスに割く、このベースを信じて、中盤のアタックはあまり手を加えずに組み立てるといった、本当に極端な何かを仕掛けないといけないかなと思います。今日、本当に多くの失点をして、選手たちはショックだと思いますが、これで折れない、得られるものを探した、(試合の中で)手に入れたものとかにフォーカスしてやっていくしかないと思います。
――事前取材の時にSOを迷っていたという話がありました。伊藤大祐(スポ3=神奈川・桐蔭学園)選手が起点となった、早稲田の2本目のトライは想定通りでしたか
そうですね。2本とも前半の2本のトライは相手を分析して準備してできたトライだったので、そこに間合いのところで大祐のプレッシャーはあったと思います。
フランカー相良昌彦主将(社4=東京・早実 )
――今日の試合を振り返って
悔いが残らないように1年間やってきて、今週1週間いい準備ができていたのですが、やはりラグビーは接点とセットプレーで負けたら勝てないということを改めて感じました。やはりそこが帝京は一枚も2枚も上手だったなと、今年積み上げてきたはずの接点やセットプレーを、100パーセントやっていたつもりだったのですが、もっと頑張らなくてはいけなかったのかなと感じました。
――開始しばらくはタックルも良いインパクトの強さで入れたと思うのですが、接点の強さというのは、強さの種類が違うということでしょうか
序盤は粘れていて、ゲインラインも(前に)来させないようにできていました。接点で相手は2枚くらいで来ていたのに対して、自分たちはそこに3枚、4枚かけていたので、互角にやれているように見えていたのですが、結局はそこが互角じゃなかったのかなと思います。
――(相手を)22メートル内に入れてしまうと厳しかったですか
そうですね。やはりそこを強みにしているチームなので、22メートルに入れられたら厳しかったです。帝京はどこからでもトライが取れるチームというのを試合中に改めて感じました。接点で行かれる部分もあったのですが、大外でFWだけでなくて、BKも凄かったと感じています。
――前半スクラムマイボールは確保できていたのに対し、後半確保するのが難しくなった印象がありました。相手の圧によるものか、自分たちの圧かどのような印象をお持ちですか
再三組み直しになったりして、レフリーとのコミュニケーションがうまく取れなかったのかなという印象ですね。
――今日のゲームテーマを教えてください
『荒ぶる』というテーマでした。その中で接点のところでファイトし続けることを心がけました。
――ご自分としてはいかがでしたか
前半ファイトはできていたのですが、後半はディフェンスの時間はありながら ブレイクされたりラインブレイクされたりと、自分が絡むシーンがほとんどなかったので後半の出来は良くなかったです。
――4年生にメッセージをお願いします
選手権に入って勢いをもたらしてくれたのは、4年生の早明戦があったからだと思うので本当にそこは感謝しています。4年間一緒に戦ってきて、 結果的に優勝はできなくてとても申し訳ない気持ちはあるのですが、 本当にこの1年間みんなついてきてくれてありがとうと言いたいです。
――最後に後輩にメッセージをお願いします
壁は本当に高い。今日の負けを忘れず、これから一日一日を大事に過ごしてほしいです。
CTB吉村紘副将(スポ4=東福岡)
――今のお気持ちをお聞かせください
悔しいです。試合内容的にもスコア的にも早稲田としては受け入れ難い結果になってしまったなという印象です。
――試合全体を振り返っていかがですか
こうしとけばよかった、ああしとけばよかったっていうのは正直もうなくて、一人一人戦ってのこの結果だと思うので、本当に実力差かなとは思います。
――1つ目のトライでは結構練習されてきたプレーなのかなと思ったのですが、そのトライを振り返っていかがですか
分析した上でのトライだったので、すごいいい形のトライがとれたかなと思います。
――ご自身のプレーは今日いかがでしたか
その、振り返られるほど・・・。正直、やり切ったという感じではないです。そこは本当に悔いが残ってます。もっとアタックでチームに貢献できたんじゃないかっていうのがあるので、そこはまだ自分のいたらなさなのかなと思います。
――今年のチームを振り返ってどんなチームでしたか
成長し続けたチームだと思います。ラグビー的にも、チームワーク的にも最後の日まで成長し続けたチームだと思います。
――後輩に託す思いをお願いします
早稲田が日本一を目指すのは当たり前なので、そこは来年目指してくれると思います。後輩たちには早稲田が今後も憧れられる組織であり続けるように試合に出てないメンバーも全部員が同じ方向を向いて頑張ってほしいなと思います。
――今後もご自身はラグビーを続けられると思うのですが、今後どのように自身を高めていきたいですか
早稲田で学んだことはたくさんあって、ラグビー的なところもそうですし、人間的なところもそうです。その学びをしっかり今後もラグビー選手を続けていく上で生かしていきたいです。プレーヤーとしては日本代表に入れるような選手になりたいので、そこは貪欲にラグビーし続けたいなと思います。
ロック鏡鈴之介副将(法4=東京・早大学院)
――試合を振り返っていかがですか
準備してきたところはハマっていたので、良い準備はできていたのかなと思います。やっぱり地力の差が相当あったなというのが率直な感想です。
――セットプレーの分析もされていたそうですが、鏡副将から見て今日のセットプレーを振り返っていただけますか
分析通りではあったのですが、もう少しやり切ることができれば少し結果が違っていたのかなと思います。
――4年生最後の試合、4年生が戦う姿を見ていてやはり何か感じるものはありましたか
そうですね。対抗戦(関東大学対抗戦)と大きく違うのが、(4年生が)自分から発信して自分から前に出ようという意識がプレーで伝わってくるところです。他の人からしたら変わらないかもしれないのですが、プレーに気持ちが表れるようになってきたのが今日の試合では見えました。
――今日、試合を見ていて一番心に残った瞬間を教えてください
平山が出たところですね。ほんとにずっと一番下のチームだったのに、こうやって決勝の舞台に立って、数分だったとしてもこの舞台に立つということ自体に価値があると思います。すごく不器用で身体能力がすごく高いわけではないですが、努力でここまで来られるということを示してくれたので、下のチームの選手、下級生も現状に甘えるのではなく、努力し続けてみんなで赤黒をつかみとると信じて頑張ってほしいです。
――副将としての役目を終えられて、やはり肩の荷が下りたような気持ちはありますか
ほんとにすごく(笑)。ほんとは『荒ぶる』が取れなくて悔しいですが、シーズンが深まる中で4年生が成長してくれて、チームとしての成長を感じられたので、充実感のあった1年になったのかなと思います。
――来年『荒ぶる』に向けて挑戦する後輩にメッセージをお願いします
今日はみんな悔しい思いをしたと思うので、ほんとにその悔しさを忘れないでほしいです。今試合に出ているメンバーも現状に甘えないで、帝京大を圧倒するくらいの気持ちでやらないと、『荒ぶる』は取れないのかなと思います。シーズンがスタートした直後から、頑張ってほしいなと思います。
全国大学選手権 | ||||
---|---|---|---|---|
早大 | スコア | 帝京大 | ||
前半 | 後半 | 得点 | 前半 | 後半 |
2 | 1 | T | 4 | 7 |
1 | 0 | G | 4 | 5 |
0 | 1 | PG | 0 | 0 |
0 | 0 | D | 0 | 0 |
12 | 28 | 計 | 8 | 45 |
20 | 合計 | 73 | ||
【得点】▽トライ 槇(2T)、松下 ▽ゴール 吉村(1G1PG) | ||||
※得点者は早大のみ記載 |
後半36分交代→16安恒
後半33分交代→18平山
後半24分交代→19藤井
後半24分交代→20永嶋
後半36分交代→21島本
後半36分交代→23磯崎
後半8分交代→22野中
※◎はゲームキャプテン、監督は大田尾竜彦(平16人卒=佐賀工)
早大メンバー | |||
---|---|---|---|
背番号 | 名前 | 学部学年 | 出身校 |
1 | 井元 正大 | 文4 | 東京・早実 |
2 | 佐藤 健次 | スポ2 | 神奈川・桐蔭学園 |
3 | 亀山 昇太郎 | スポ2 | 茨城・茗渓学園 |
4 | 前田 知暉 | 社4 | 東海大大阪仰星 |
5 | 池本 大喜 | 文構3 | 東京・早実 |
6 | ◎相良 昌彦 | 社4 | 東京・早実 |
7 | 栗田 文介 | スポ1 | 愛知・千種 |
8 | 村田 陣悟 | スポ3 | 京都成章 |
9 | 宮尾 昌典 | スポ2 | 京都成章 |
10 | 伊藤 大祐 | スポ3 | 神奈川・桐蔭学園 |
11 | 松下 怜央 | スポ4 | 神奈川・関東学院六浦 |
12 | 吉村 紘 | スポ4 | 東福岡 |
13 | 岡﨑 颯馬 | スポ3 | 長崎北陽台 |
14 | 槇 瑛人 | スポ4 | 東京・国学院久我山 |
15 | 小泉 怜史 | 文構4 | 東京・早実 |
リザーブ | |||
16 | 安恒 直人 | スポ2 | 福岡 |
17 | 川﨑 太雅 | スポ3 | 東福岡 |
18 | 平山 貴喜 | スポ4 | 北海道・函館ラサール |
19 | 藤井 将吾 | スポ3 | 大阪・早稲田摂陵 |
20 | 永嶋 仁 | 社3 | 東福岡 |
21 | 島本 陽太 | スポ3 | 神奈川・桐蔭学園 |
22 | 野中 健吾 | スポ1 | 東海大大阪仰星 |
23 | 磯崎 錬太郎 | 商3 | 徳島・城東 |