1月2日の青空の下、舞台は国立競技場。第59回全国大学選手権大会準決勝が行われた。早大の対戦相手は関西王者・京産大。前半は劣勢となる場面も見られたが、NO・8村田陣悟(スポ3=京都成章)とWTB槇瑛人(スポ4=東京・国学院久我山)のトライ…
1月2日の青空の下、舞台は国立競技場。第59回全国大学選手権大会準決勝が行われた。早大の対戦相手は関西王者・京産大。前半は劣勢となる場面も見られたが、NO・8村田陣悟(スポ3=京都成章)とWTB槇瑛人(スポ4=東京・国学院久我山)のトライで反撃し、17ー13で試合を折り返した。緊迫した展開が続いた後半は、京産大の猛攻に苦しめられたが、ゴール前でSO伊藤大祐(スポ3=神奈川・桐蔭学園)が相手のギャップを突いて、決勝トライ。34ー33と1点差を守り抜き、決勝へと駒を進めた。
前半序盤、京産大の接点の強さに早大は苦戦し、素早いブレイクダウンからペースを握られる。前半20分にはWTBシオネ・ポルテレ(京産大)の豪快なランからトライを奪われ、3ー10。対する早大は26分、ターンオーバーからSH宮尾昌典(スポ2=京都成章)のパスを受けた村田が相手の守備網を破り、インゴールへと持ち込んだ。CTB吉村紘(スポ4=東福岡)が難しい角度のキックを決め、スコアを10ー10とする。同点で迎えた30分、早大はゴールラインまで残り5メートルの右サイドでスクラムを獲得。見事なサインプレーから相手ディフェンスを翻弄(ほんろう)し、オープンサイドに走り込んだ槇がトライを決めた。前半終了間際にはPGを決められるが、17ー13とリードするかたちで前半を終えた。
先制トライを挙げたNO・8村田
迎えた後半は、互いに一歩も引かない点の取り合いとなった。開始早々、京産大FWの連続攻撃からゲインを許し、ディフェンスの間を抜けたロックのアサエリ・ラウシー(京産大)にトライを奪われる。続けてPGも献上し、17ー23。早大が流れを変えたのは後半14分、WTB松下怜央(スポ4=神奈川・関東学院六浦)が大外で勝負を仕掛けて大きく前進する。サポートに入った宮尾が、敵を何人も交わしながら約40メートルを走り切るスーパートライを決めた。ここでも吉村が安定したキックを決め、24ー23と再逆転。しかし相手の素早く力強いタックルに苦しみ、PGを許すとリードは再び京産大へ。緊迫した空気が流れる中、27分に左右を広く使った展開から伊藤が相手のギャップを突き、値千金のトライを奪う。度重なる逆転劇に、国立競技場は熱気に包まれた。その後は京産大の猛攻から1点差にまで迫られたものの、なんとか守り抜きノーサイド。最終スコアは34ー33という激闘を制し、早大は決勝進出を決めた。
インゴールに向かうSO/FB伊藤
本試合のテーマは『スペースとセットスピード』。ブレイクダウンのプレッシャーに苦しんだものの、攻守にわたって粘り強さを見せ、全員で勝利をつかみ取った。大田尾竜彦監督(平16人卒=佐賀工)は「苦しい中でこれまでの成長を見せてくれて良く勝ち切ってくれた」と試合を振り返る。大学日本一、そして念願の『荒ぶる』まであと1勝。部員150人全員で最後まで戦い抜き、1月8日大一番の帝京大戦に挑む。
(記事 阿部健、写真 谷口花、前田篤宏)
コメント ※記者会見より
大田尾竜彦監督(平16人卒=佐賀工)
――今日の試合を振り返って
今日の試合は準備することが非常に難しいところもありましたが、苦しい中でこれまでの成長を見せてくれて良く勝ち切ってくれたなと思っています。
――勝ち切れた要因は
試合中に修正することができたことだと思います。特にアタックに関しては、自分たちのプランと相手のディフェンスの出方を見ながら空いているところにボールを運べたことが大きかったと思います。そのあたりの修正力は非常にレベルアップしたのかなと思います。
――相手はスクラムやラインアウトに強みを持つ大学でしたが、今日ご覧になっていかがですか
スクラムに関してはよく組んでくれたと思いますし、後半に井元(正大、文4=東京・早実)を残せるというところは我々としては大きいですし、川﨑(太雅、スポ3=東福岡)がよく頑張ったなと思います。ラインアウトでは、準備してきたものがいろいろありましたが、獲得ではそこまで苦労していないので、セットプレーに関してはよかったのかなと思います。
――この大学選手権で一番チームが成長した部分はどこでしょうか
先攻されても焦らない、トライを取るべきところで取り切れていること、トライに至るまでのプロセスでみんなで共通のビジョンが見えているあたりが良くなってきていると思います。
――前回の試合後の会見で、伊藤選手(伊藤大祐(スポ3=神奈川・桐蔭学園))の起用法についてお話しされていましたが、今回のような起用法は監督にとって定着した感覚はあるのでしょうか
小泉(怜史、文構4=東京・早実)の左足のキックはゲームをつくる上で非常に大きいです。前半は伊藤が10番、小泉が15番で出場してゲームをつくり、お互いどこにギャップが見えるかとなった時に伊藤がスペースを走るということが、チームの型としてパターン化できているのかなと思います。
――そういった意味で、今日伊藤選手がスペースを見つけてトライを取り切った点に関しての監督の評価は
野中(健吾、スポ1=東海大大阪仰星)は球離れがすごくいい選手ですので、野中を10番に入れることで、外側の選手は走りやすいのではないかと思います。大祐の力ならばあのようなスペースは走り切れるかなと思います。
――今シーズンはチームの押し上げの時期を遅らせてチームづくりをされていたと思いますが、その評価は
今日の試合から出来としてどうかと言われれば必ずしもベストではなかったと思いますが、そうした中で京産大さんという強い相手に勝ち切れたことは、伸ばしたかった素の力が伸びてきたのかなと思います。ペナルティーが少し多かったのですが、多かった理由も自分たちがコンタクトで前に行けていたからこそのペナルティーでもありましたので、そのあたりでも成長を感じます。
――準々決勝から準決勝の部分が難しいというお話をされていましたが、具体的に間の期間にどのような部分が困難でどういった工夫をされてきたのでしょうか
やはり準々決勝での早明戦というのは、定めやすくて、選手の思いとしても強いものがありました。そこで勝った後に、時間も(3回戦から準々決勝の間よりも)1日多かったので、どれくらいリカバリーをするのか、どれくらい強度を上げるのかというところが難しかったです。選手も一生懸命やっているのですが、なんとなく空気感としてマインドづくりが難しかった部分があったのかなと思いますね。
――SH宮尾選手(昌典、スポ2=京都成章)が大きい試合でビッグプレーをしていますが、試合に出ていない時期と比べて何が良くなったと感じていますか
チャンスとピンチに対する反応スピードです。あとは昨年の宮尾がいろいろなところで痛感した反省点を思い出したのかなと思います。今日のトライシーンを振り返ってみても、すごく丁寧にグラウンディングしていました。昨年はそういったところが雑なところもあったので、もう一度自分の中で大事なこととして捉えて、復調しているところはあるのかなと思いますね。
――決勝で勝つためには何が必要になってくると思いますか
僕が思うには、ラグビーチームにはタイプが2つあると思っています。自分たちにフォーカスしてやるべきことをやりきるチームと、相手を研究してゲームプランを変えてやりきるチームがあると思っています。早大は明らかに後者なので、監督・コーチ陣が勝ち切れるプランをしっかりと組んで、選手としっかりと意思統一をして選手が「いける」と信じられるくらいの落とし込みが必要になってくるのではないかと思っています。
フランカー相良昌彦主将(社4=東京・早実)
――今日の試合を振り返って
今日の試合のテーマは『スペースとセットスピード』でした。その部分はアタック、ディフェンス共にできていたと思うのですが、やはりブレイクダウンの部分で京産大さんのプレッシャーを受けてしまい、自分たちの思うようなゲーム展開ができなかったので、そこをしっかりと修正して、決勝に臨みたいと思います。
――後半最初の京産大のトライについて、何か意識づけがあったのか、選手たちのパフォーマンスを見ていかがですか
そこはチームとして自陣ではなく敵陣に行こうと意思統一ができていたので、後半は22メートルに入れさせずにプレーできたと思います。
――前半はPGを取れそうな場面でタッチに出したり、PGにしたりと選択がバラバラだったイメージがありますが、どのような意図だったのでしょうか
最初はショットを狙ったのですが、京産大さんはFWに強みを持っていますし、14番の選手はすごく怖いランナーなので、とにかく自陣に入れずに敵陣で戦うようにしたいというのがありました。PGが決まると自陣からスタートとなるので、トライを取れなくともタッチキックを狙って、敵陣でプレーしようと意思疎通を図っていました。
――後半、自陣でのドロップアウトでの再開をタップキックで始めましたが、長いアタックを仕掛ける中で、どのようなマインドセットをしていたのでしょうか
早稲田はこの一年間「アタックマインド」磨いてきて、チャンスだと思えれば自陣からでもどんどん回していくことを一年間やってきて、それをやった結果があのトライだったと思います。
――チャンスを感じたのはどの点でしたか
前が空いていて、吉村が判断して始めたのだと思います。
――大田尾監督から「なんとなく空気感としてマインドづくりが難しかった部分があったのかなと思う」というお話がありましたが、主将の目にはチームどう映っていて、どのようにチームを引っ張ってきたのでしょうか
練習で少し強度が上がった時に、体の動きや声の部分で先週よりも上がっていなかったと感覚的に感じてそこは不安に思っていました。京産大は昨年の準決勝で帝京大を苦しめた相手だったので、「乗せたら怖い」ということを毎日伝え続けて、早明戦以上のマインドで臨もうという話をしました。ですがやはり、明大は今季1番大きな相手でしたし、昨季のリベンジも懸かっていたので、すこし達成感に浸ってしまっている選手もいたのかなと思います。なかなかマインドを切り替えるのが難しかったので、そこに苦労しました。
――選手権開始から今日の試合を通して成長を感じている部分は
僕が不在の中、対抗戦の早明戦と、東洋大戦を戦った中で吉村を中心に4年生がまとまって、いつもはリーダーシップを発揮しない選手も、声を出してくれました。そういうことがあって、チームが一丸となれた、本当のチームになれたという感覚があります。
――決勝で勝つためには何が必要になってくると思いますか
毎試合、いろいろな対策や分析をしていますが、そこを全員が意思統一をしてやりきるところが一つです。あとは1年間信じてやってきたスローガンの『Tough Choice』や、『1/1000の拘り』をひたむきにやりきることが勝利に向けて必要なのかなと思っています。
◇試合後の他選手コメントはこちらから◇
全国大学選手権 | ||||
---|---|---|---|---|
早大 | スコア | 京産大 | ||
前半 | 後半 | 得点 | 前半 | 後半 |
2 | 2 | T | 1 | 2 |
2 | 2 | G | 1 | 2 |
1 | 1 | PG | 2 | 2 |
0 | 0 | D | 0 | 0 |
17 | 17 | 計 | 13 | 20 |
34 | 合計 | 33 | ||
【得点】▽トライ 村田、槇、宮尾、伊藤 ▽ゴール 吉村(2PG4G) | ||||
※得点者は早大のみ記載 |
後半36分交代→20永嶋
後半36分交代→23磯崎
後半10分交代→22野中
※◎はゲームキャプテン、監督は大田尾竜彦(平16人卒=佐賀工)
早大メンバー | |||
---|---|---|---|
背番号 | 名前 | 学部学年 | 出身校 |
1 | 川﨑 太雅 | スポ3 | 東福岡 |
2 | 佐藤 健次 | スポ2 | 神奈川・桐蔭学園 |
3 | 亀山 昇太郎 | スポ2 | 茨城・茗渓学園 |
4 | 前田 知暉 | 社4 | 東海大大阪仰星 |
5 | 池本 大喜 | 文構3 | 東京・早実 |
6 | ◎相良 昌彦 | 社4 | 東京・早実 |
7 | 栗田 文介 | スポ1 | 愛知・千種 |
8 | 村田 陣悟 | スポ3 | 京都成章 |
9 | 宮尾 昌典 | スポ2 | 京都成章 |
10 | 伊藤 大祐 | スポ3 | 神奈川・桐蔭学園 |
11 | 松下 怜央 | スポ4 | 神奈川・関東学院六浦 |
12 | 吉村 紘 | スポ4 | 東福岡 |
13 | 岡﨑 颯馬 | スポ3 | 長崎北陽台 |
14 | 槇 瑛人 | スポ4 | 東京・国学院久我山 |
15 | 小泉 怜史 | 文構4 | 東京・早実 |
リザーブ | |||
16 | 安恒 直人 | スポ2 | 福岡 |
17 | 井元 正大 | 文4 | 東京・早実 |
18 | 平山 貴喜 | スポ4 | 北海道・函館ラサール |
19 | 藤井 将吾 | スポ3 | 大阪・早稲田摂陵 |
20 | 永嶋 仁 | 社3 | 東福岡 |
21 | 島本 陽太 | スポ3 | 神奈川・桐蔭学園 |
22 | 野中 健吾 | スポ1 | 東海大大阪仰星 |
23 | 磯崎 錬太郎 | 商3 | 徳島・城東 |