ついに、約一カ月にわたって行われる関東学生秋季リーグ(秋季リーグ)が開幕した。春に早大に敗北し、下位リーグに落ちた日体大にとって、早大は因縁の相手だ。優勝を目指す早大は、「初戦の日体大との試合にマックスを持っていきたい」(村上)と気合十分…

 ついに、約一カ月にわたって行われる関東学生秋季リーグ(秋季リーグ)が開幕した。春に早大に敗北し、下位リーグに落ちた日体大にとって、早大は因縁の相手だ。優勝を目指す早大は、「初戦の日体大との試合にマックスを持っていきたい」(村上)と気合十分に、初戦から負けられない一戦に臨んだ。宣言通り、試合序盤は早大ペースで試合を進める。しかし徐々に相手に主導権を握られると、点差を広げられてしまう。4年生の活躍が光り、試合終盤に追い上げるも一歩及ばず、悔しい敗戦となった。

 早大は出だしから好調な滑り出しを見せ、自分たちの思うような攻撃を展開した。CB村上楓主将(スポ4=福岡・明光学園)のパス回しから、相手ディフェンスをきれいにずらし、LW井橋萌奈(スポ1=東京・白梅学園)のサイドシュートへとつなげる。井橋はたとえ狭い角度でもチャンスを確実にものにし、そのシュート力が試合を通して光った。青木里奈(スポ4=東京・白梅学園) や村上の献身的な走りで、夏の期間に強化してきたという速攻からも得点を重ねた。しかし、徐々に流れが日体大に傾くと、21分に早大が取ったタイムアウト後も、相手サイドシューターを中心に得点を奪われる。浦野詩織(スポ4=愛知・旭丘) 副将が退場すると、なかなかディフェンスから勢いをつけることができない。その隙を見逃さなかった日体大に連続得点を許し、13-18で前半を折り返した。


7メートルスローを放つ井橋 今試合、全ての7メートルスローを任され、決定率は100パーセントだ 

 「全体の連携が取れていなかった」(浦野)状態は、後半なかなか縮まらない点差にも表れた。山本桃虹(スポ3=東京・佼成学園女) のカットインなどでなんとか食らいつくも、一時は8点のリードを日体大に許してしまう。そんな中、悪い流れを断ち切ったのは、やはり4年生だった。後半18分、PV杉浦亜優(スポ2=愛知・名経大市邨)のブロックを利用し、浦野が豪快なロングシュートを放つ。直後のディフェンスでは、GK川村夏希副将(スポ4=東京・佼成学園女)の好セーブで流れに乗る早大。そして、今試合特に目を引くプレーを見せたのは、村上だ。相手ディフェンスに指一本触れさせない爽快なカットインでゴールを奪ったかと思えば、今度はディフェンスに絡まれながらも、もろともせずにゴールを割る。決定率を課題としていたミドルシュートでも得点する。ケガから復帰した鶴田文乃(スポ3=山梨・日川) が右サイドから7メートルスローを獲得すると、井橋が落ち着いて沈め、ついに一点差まで追い詰めた。春のリベンジを果たすべくこの試合を迎えている日体大も、負けじと追加点を奪い27-29。しかし、あと2点が遠かった。怒濤(どとう)の追い上げも虚しく、タイムアップとなった。


ゴールを守る川村 今試合も好セーブが光り、試合終盤の逆転の可能性をつくりだした 

 点差が離れても諦めることなく、追い上げを見せた早大。そこには最後のリーグ戦に懸ける4年生の意地があった。後半波に乗り、得点源となった浦野だが、最後のプレーをこう振り返る。「最後の1点差まで追いついた時に相手が一人少ない状況で、チームとしては自分がシュートに行って欲しいところだったと思うし、エースとして自分が決めるべきだったと思うので、その気持ちが出ずに、弱気になってパスを選んでしまったことが、自分としては悔しい。もう二度とやってはいけない」。浦野のこの言葉からは、4年生としての気持ちの強さと、早大のエースとしての自覚と覚悟がにじみ出ている。初戦での悔しい経験を武器に、さらに成長した浦野をここから先のリーグ戦で見ることができるだろう。まだリーグ戦は始まったばかりだ。個人でもチームでも、今試合の課題を修正し、ここから先のリーグ戦を勝ち抜いていってほしい。

(記事 渡辺詩乃 写真 野中美結)

 

関東学生秋季リーグ
早大2713-18
14-11
29日体大
スタメン
GK 川村夏希(スポ4=東京・佼成学園女)
LW 井橋萌奈(スポ1=東京・白梅学園)
LB 浦野詩織(スポ4=愛知・旭丘)
PV 杉浦亜優(スポ2=愛知・名経大市邨)
CB 村上楓(スポ4=福岡・明光学園)
RB 山本桃虹(スポ3=東京・佼成学園女)
RW 青木里奈(スポ4=東京・白梅学園)
途中出場
RW 鶴田文乃(スポ3=山梨・日川)
LB 山野紗由(スポ2=北海道・釧路江南)
PV石坂美紀(スポ1=千葉・昭和学院)
 
コメント

浦野詩織副将(スポ4=愛知・旭丘)

――秋季リーグはどのような気持ちで臨みましたか

 秋季リーグは優勝を掲げていて、全勝で優勝する心構えでした。1回戦も絶対に勝つという気持ちで、一番大事にしていた試合でした。秋リーグ全体で考えても、初戦で勢いづけることが大事だと思っていたので、日体戦は全員が一番いい状態に持っていけるように意識していました。

――日体大戦ではどのような攻撃の組み方を考えていましたか

 攻め方はいつも通り、ディフェンスを広げるためにアウトをしっかりと狙っていました。上からのシュートも最初からは決まらないので、最初はカットインを多くして、自分たちがいつもやっているプレーで攻めました。また、春リーグでは自分たちが速攻をやられる側だったので、今度は自分たちが速攻で点を取れるように練習してきました。また、先手を取って確実にシュートを決められる方法を選択するようにしていました。

――実際に今日、速攻はどうでしたか

 後半、(早大が日体大に)追いついてきた時間帯は速攻で点を取ると勢いづきましたし、前半自分たちが勝っていた時間帯も、速攻で点を取れると自分たちに有利になることが顕著に表れた試合でした。

――点差が離れてしまった要因は

 全体の連携が取れなかったことと、私の退場が多くて、ディフェンスに入れず、ディフェンスから勢いづけることができなかったことが要因です。ディフェンスからしっかり守って速攻に行かないと、やはり点差はどんどん離れてしまいますし、足も止まっていました。誰が入っても、同じレベルでできるようにとチームとしてやっていたのですが、人がイレギュラーに変わった時に、連携が必要なんですけど、その時に足を動かしてプレーすることができずに、運動量が圧倒的に落ちてしまいました。

――最後の追い上げは、浦野選手のアウトカットインやロングシュートが大きく関わっていましたが、個人のプレーを振り返って

 後半に足を動かして、ディフェンスをして、速攻で点を取れたことを、前半からやれなかったことが自分としては課題かなと思います。前半は、相手のセンターにディフェンスでもうまくかわされたりしていて、自分的にはもっと早く相手に対応して、ディフェンスもオフェンスも自分が主導でやっていくのができていなかったので、悔しいです。後半はディフェンスも守れるようになりましたし、オフェンスも速攻が多かったので、うまく点につながりました。また、最後の1点差まで追いついた時に相手が一人少ない状況で、チームとしては自分がシュートに行って欲しいところだったと思うし、エースとして自分が決めるべきだったと思うので、その気持ちが出ずに、弱気になってパスを選んでしまったことが、自分としては悔しいです。もう二度とやってはいけないなと思います。

――来週の意気込みをお願いします

 来週の日女体大には、春リーグではしっかり点差をつけて勝てたので、来週の二戦とも自分たちの良いところを出したいです。今回自分たちが点差を離されてしまいましたが、今回は自分たちが点差を離して、しっかり足を動かして運動量を上げて、ここからもう一回勢いをつけて勝ちにいきたいと思います。

川村夏希副将(スポ4=東京・佼成学園女)

――秋季リーグ戦はどのような気持ちで臨みましたか

 春は上位に食い込むことができたので、初戦から一試合一試合大事に、優勝を狙っていこうという気持ちでしたが、(第一戦目は)結果的にこういうことになってしまって悔しいです。

――今日の試合はどのような気持ちで挑もうとしていたのですか

 絶対勝つぞという気持ちが一番にあったのですが、自分は4年生で最後(のリーグ戦)ということもあって緊張がありました。チーム全体としても、もちろんみんなも勝つぞという気持ちはあったと思うのですが、少し浮足立ってしまったり、緊張が出たり、なかなかいつも通りの動きができない部分がありました。

――試合では川村選手の良いキーピングが多く見られました。ご自身のプレーを振り返っていかがですか

 キーピングは一試合を通して相手のシューターに合わせきれなかったというのがあります。ディフェンスにもっと要求しなければならない部分もあったのですが、最初の10分くらいで合わせてこの選手はこうだからこう守るという、選手に合わせたキーピングができなかったところが今日はだめだったなと思います。

――自身のプレーで良かったと思う点は

 最後の方で追い上げてきた部分で、前半だと止められなかったサイドシュートを止められたのは良かったと思います。

――最後追い上げたものの惜しいところで敗北となりました。敗因は何だと思いますか

 後半、追い上げられた部分があるということは良かったのですが、それができるということは、もっと最初からやっておけば前半に離されるということがなかったと思いますし、後半の入りが悪かった部分もなかったのではないかと思います。自分たちの本来の力を自分たちのマインドセットによって出せなかったというのが敗因だと思います。

――来週の試合への意気込みをお願いします

 今日負けてしまって、優勝を目指している以上、もうこれ以上負けられないので、全員で気持ちを一つにして必ず勝ち点を取りにいけるように頑張りたいと思います。