全日本学生選手権(インカレ)直前特集・第8回は橋本礼徳主将(スポ4=長野・飯山)と山本侑弥副将(スポ4=長野・飯山)。高校時代から同じチームで高め合ってきたお2人が一緒に取材を受けるのはこれが初。最後のインカレへの思いやチームへの思いを伺…

 全日本学生選手権(インカレ)直前特集・第8回は橋本礼徳主将(スポ4=長野・飯山)と山本侑弥副将(スポ4=長野・飯山)。高校時代から同じチームで高め合ってきたお2人が一緒に取材を受けるのはこれが初。最後のインカレへの思いやチームへの思いを伺った。

※この取材は10月31日に行われたものです。

「すごく変わることができたサマーシーズン」(山本)


――お互いに紹介をお願いします

山本 主将の橋本礼徳です。種目はクロスカントリースキーで出身は福井です。ずっと愚直にというか少しずつ積み重ねて今の成績までもってきている感じがあるので、本当に努力家だなと思います。部としては統率をとってくれるすごく頼りになる主将だなと思います。

橋本 山本侑弥は同じ高校に通っていたので知り合いで、中学から同じ県でスキーをしていたので、もともと名前は知っているようなかたちでした。実際に会うのは高校生が初めてで、4年生になってからみんなの前に出たり、僕のできないことをやってくれたり、主将で発言が難しいところをサポートしてもらっていると思います。本当に頼りにしていて、同期で唯一の男子で4年間一緒にやってもらってすごい助けてもらうことが多いです。いちばん信頼しています。

――お2人が初めて会ったのは高校入学時ですか

橋本 多分その前に会っていて、あまり記憶がないです。

山本 もしかしたらクロスカントリーの会場で会ってるかなとは思うけど、あまり印象はお互いもってないね。

――覚えている最初の印象はいかがですか

山本 高校からにはなるんですけど、背丈が高くてうらやましい感じもありつつ、エネルギッシュというかエネルギーに満ちあふれた感じで、周りも自然と明るくなるような存在だったかなと思います。

橋本 僕がやっている競技の友達は侑弥と同じ地域出身の子が多かったので名前だけは知っている状況で、初めて会った時は山本侑弥くんだ、みたいな感じでした。

――この夏の印象的な出来事は何ですか

橋本 練習面だと長野県の志賀高原、標高1500メートルくらいのところで合宿を行いました。志賀高原は猿と熊がいっぱいいるところで今年はとくに多くて1日1、2匹見つけて、真横に熊がいるような状況で練習することがあったので印象的でした。ローラースキーをやる時に道の真ん中に熊がいて僕は引き返したんですけど、前をいっていた小池駿介(スポ2=北海道・富良野)が帰ってこなくて、「これはやばいんじゃない」となってた時に違う道で戻ってきて結局大丈夫でした。こういう状況でもすごく充実した練習はできたかなと思います。プライベートでは教育実習に行ったので、そこが僕の中では競技との両立としても、社会に触れるという部分でもすごくいい経験になったと思います。

山本 すごく忙しい期間でした。主将ほどではないですけど、寮の仕事もあって、就活や競技のこと、学校のこと、自分のこと、いろいろなことをやっていたんですけど、忙しすぎてあまり印象に残っていないです。期間は短くはなかったんですけど忙しいというのだけが印象に残っていて、ちょっとずつ落ち着いてきたくらいです。先週くらいまでヨーロッパの方で遠征をしていて、早稲田のOBの方がたくさんいらっしゃって、オリンピックでメダルを取られている渡部暁斗(平22スポ卒=現北野建設)さんと一緒に練習をさせてもらいました。夏に暁斗さんと練習できるというのはなかなかなくて、本当に会う機会も全然ない中での合宿だったので、僕にとってはすごくいい合宿だったと思います。たくさんのことを吸収できたので、直近ですけどすごく印象に残っています。

――現在の調子はいかがですか

橋本 数値的なところでいくと昨年より少しいいのかなという感じはあります。力感的には昨年よりも緊張感をもってシーズンに挑まないといけないかなという感じはしています。数値は出たには出たんですけど、出るべくして出た数値ではないかなと思います。偶然勝てたレースってここまで競技を続けていると誰もが1回はあると思うんですけど、そういうのじゃなくてしっかり理由づけされて勝つことがすごく重要で、それが仮に両方1回だったとしても勝ちというのは後者の方が価値があると僕は思うので、理由づけができない状況で成績が出てしまっているのは危ない状況かなと思います。なぜここになったのか、自分の中で練習が積めているか、練習に対する質の自信が出ていれば数値が出たことに対して自信を持っていたんですけど、練習がうまくいかなくて自信をもって練習を積めていたかというとそうじゃなかった部分もあります。数値は出ているのでそこは数値として見て、自分の練習や競技、パフォーマンスとどうつながってくるかというところを冷静に判断したうえで、自分の目標をしっかり回していくというかたちです。シーズンに向けて今夏の成長を整理する状況にあるのかなと思います。

山本 私は昨年1年間初めてW杯を全試合回らせていただいて、世界選手権も経験させていただきました。世界との差が大きすぎる、自分が甘すぎるというところが2点、すごく大きなところで課題としてあげられたのを今年どう改善していくかというところからスタートしました。スキージャンプの方はすごく手応えはあるし、昨年よりも確実性というかいいジャンプの再現性が増えてきたと思うので、礼徳も言っていたたまたまではなく理由づけされていいジャンプになってきたところは少し自信にはなっています。8月中旬くらいに体調を崩してしまってそこから体重が戻っていないとか、いろいろありクロスカントリーの方は少し不安ではありますけど、不安になってもしょうがないのかなとも思います。まずは必ずやってきたことをかたちにできるようにいい準備ができればなと思うので、1つひとつ基礎から見直してシーズンに入ればいいなと思います。

――昨シーズンを振り返っていかがですか

橋本 昨年の目標としては、全国大会で学生の中で8位以内はとりたいと考えていました。初めての大会で4位という成績で、練習にもしっかり自信をもっていたのでジャンプアップするかなというところはありました。8位以内は確実に取れるだろうなという中で自信もありましたし、ここ数年表彰台に上がることがなかったのでそこはうれしかったです。ただ順位が高くなればなるほど優勝に対する欲が増えてきて、次のレースでそこの順位を超えていったとしても満足しきるものがなかったです。何回か学生の中でチャンピオンを取る機会があったんですけど、そこも取りきれずにシーズンが終わってしまって、シーズンの中でできた目標に対しての満足度はかなり低かったかなと思います。シーズンが始まる前、春に立てた目標に対しての達成度は120パーセントクリアしていたかなと思うので、ここからどんどんいい成績が出せていけるとは思うんですけど、満足せずにやり続けていたら競技を続けていける指標になるのかなというのを昨年感じました。本当に競技者に向いた性格をしているんだろうなというのは感じています。

山本 私は昨年3つ目標を立てました。そのうちの2つがW杯のポイント獲得、あとは世界選手権への出場です。そこは果たせたんですけど、世界選手権に関しては少し△という感じですね。個人戦には出場できずに団体戦のみの出場となり、そこはめちゃくちゃ悔しかったです。初の大舞台ですごく雰囲気が変わったなというのが印象的で、W杯とは雰囲気が全然違っていて、本当に各国どの選手もメダルにすごく執着してるような感じでした。いろいろと質が変わっていく中で自分自身ついていけなかったなというのはありました。自分の目標を達成できたことはすごくいいかなと思うんですけど、初戦のW杯では記録としては出ていましたが、再現性というところはずっと課題なのかなと思います。まずはW杯でいい条件で自分のいいところが出ればしっかり戦えるんだなというのは少し自分でも自信になりました。

――今年の夏とくに意識していたことはありますか

橋本 重点的に取り組んでいたこととしていつも考えていることではあるんですけど、質にはこだわりたいと思っています。教育実習もありましたし、練習に今まで通り取り組める時間っていうのはかなり減っている中で質にこだわる、小さいころから意識していたんですけど、意識しないと成績に直結していかない状況だったので、そこは本当に意識してできたというのが今年の夏のイメージです。合宿で目的をもっていけるようになったので、量を積めない時にどういう練習するのか今後の課題でもありますが、1人の時にどういったメンタリティで練習に挑むとか、常に質の高さを意識した練習をしてきたつもりです。

山本 僕もどれだけ質を上げられるかというのは一緒かなと思います。練習をやること、こなすことというのはすごく簡単ではあるしやればいいという話ではあるんですけど、そこじゃないというのがもちろんあるので、1時間あったら1時間どれだけ自分のものにできるかというのが必要になってくきて、質を上げるというのは取り組んでいました。あとはモットーとして1つあるのが今年はチャレンジの年、2年目と決めています。どれだけ自分を変えられるかチャレンジし続けていて、どれだけいい方向にもっていけるかを大事にしてきました。昨年W杯を1年間回ったと話したんですが、そこで何を学んだかというのをどれだけ練習に注ぎ込めるか、自分がどうなりたいか、どうしたいかというのが春に明確に決まったので、そこにいくためにはどうしたらいいんだろうという日々の積み重ねができていました。質もすごく上がりましたし、自分なりにはすごく変わることができたサマーシーズンではあったと思います。

「多様性に富んだチーム」(橋本)


――チームの雰囲気はいかがですか

橋本 難しいな。

山本 難しい。

橋本 本当に多様性に富んだチームだなと思います。フリースタイルは4学年ある中で1学年に1人いるかいないかというくらいだったんですけど、今年はかなり1年生が入ってきました。フリースタイルはこれまでのスキー部だと、モーグルとかエアリアルであくまでもスキー板を履いているイメージだったんですけど、今年はスノーボーダー、違う種目のスノーボーダーがいて、すごい多様になってきたなという感じがあります。いざ練習する時にはまとまってやれているというのは、早稲田大学にに来て高い志をもっているんだなと感じます。多様性に富んでいても、強くなるというチームとしての方向性は一致しているところはすごくいいことだと思います。スノーボードも含めてスキーに対しての情熱が高いからこそまとめやすかった部分もありますし、いろいろな人がいるからこそ、すごく楽しい生活も送れています。本当に多様性がある中で、目標が一緒だからみんなでやることところはみんなでできるというようなチームです。

山本 全く同じです。僕がつけ加えるならば、いちアスリートとして主観にはなりますが多様性があるって、いい刺激がたくさんあるなと思います。いい刺激やいいインスピレーションを話していて共有できるというのがすごくうれしいです。自分的にスノーボードの人と話をする機会はなかなかないですし、そういうところでもいい刺激というかそういうことを与え合っているのはすごくいいなと思います。若い1,2年生の力ってすごく3,4年生を鼓舞してくれるようなところがあると思うので、辛いことも多いですけど1、2年生のがむしゃらに上に食らいついていこうというのが伝わってくると、もう1度そういう気持ちを思い返させてくれます。1年生が入ってきて刺激がありますし、すごくいいチームだと思います。

橋本 上級生よりも下級生の人数の方がかなり多い状況で、やっぱり下級生の力というのはすごく感じていて、下級生からもどんどん意見を言ってもらえることによって見直していくこともできていたので、上下関係がそんなに厳しくなくて意見を言いやすい状況にはなっていると思います。

――インカレの注目選手はどなたですか

橋本 決められない。

山本 僕はみんなと一緒に練習する機会があまりなかったので、期待を込めてというのはあるんですけど、2年生には期待しています。インカレで僕も実際2年生の時に2種目優勝していますけど、4年生はプレッシャーが絶対出てくるし、(チームの)顔だし、それを支えてくれる3年生っていうのはちょっと重荷にはなってくると思います。猪突猛進というかいい意味で突っ走ってくれるような存在になってくれれば早稲田がいい盛り上がり方をして、3、4年生にもいいつなぎ方ができて部全体としていい着火剤になればいいかなと思っています。

橋本 1人にフォーカスすることはインカレっぽくないなとは思うので、出る人出ない人関係なく早稲田全員に注目してもらいたいなと思います。他の大学に行ったら僕たち1人ひとり、その大学の顔になるくらいの選手が揃っています。ただ毎年どうしてもそこにピークをうまく合わせられないというのがランナー男子の現状です。世代の顔が集まってきたようなチームが早稲田大学で、どのセクションも入る時に厳正な審査を勝ち進んでいて、どのチームからもマークされてなんぼです。リレーは2年連続足の差で負けるという悔しい思いもしています。今年はインカレのリレーで優勝するという目標で1年きているので、ぜひ全員に注目してもらえればなと思います。他の大学に比べたら人数も少なくて1人ひとりがポイントを取らないと総合優勝は難しいので、1人ひとり外さないで注目してもらえると損しないインカレになると思います。僕はもともと名前が売れて入ってきている選手ではないですし、今高校生から見て憧れる選手と言ったら2年生、3年生の高校時代からずっと強かった選手がいるので、そういった選手がスターとして顔としてやってくれればいいなと思います。僕は僕として目指したいところもありますし、高い意識もってやっているつもりではいるので全員自信をもって推せるメンバーです。

――今シーズンの目標をお願いします

橋本 いちばん大きな目標はU23(ノルディック世界選手権)に出場して15番以内に入ることです。15番以内に入ったらW杯を回る権利ももらえますし、そこはチャンスがあると思っているので、狙っていきたいと思います。シーズン後半はインカレで僕の得意種目であるスプリントでタイトルを取りたいです。来年度からも社会人として続けていくので、そういった意味ではシーズントータルして社会人がいる中で上位で争っていく必要があると思います。全日本選手権などの全日本規模の大会で6位以内に入って周りにしっかりプレッシャーを与えられるような選手になるという目標です。昨年は2、3回チャンスがある中で優勝しきれなかったので今年は確実に優勝して、名を売って社会人に出ていきたいと思っています。高校時代に苦しい思いをした選手の光になれるような選手になって、社会人でも活躍していきたいです。

山本 私は

橋本 W杯で1位を取ることです。

山本 それができたらいいね、本当に。結構近しい目標なんですけどトップ10に3回以上は入れるようになりたいというのが1つと、あとは平均の順位を上げるということですね。良くも悪くも20番以内くらいには入りたいという目標があって、長いシーズンでずっとスキーをやっているわけでもないので、自分なりにどう試合にもっていくかというところです。リセットできるところを作っていく、1週間あるとしたら週末が大会で、会場が変わってジャンプ台が変わって戦っていかなければならない状況です。前回のダメだったことを引きずっちゃうことも昨年は多かったですが今年はそれをなくして、どうしたら飛ぶのか飛ばないのか、前回何がダメだったのかというのを1つひとつリセットさせて、地に足をつけた状態で1週間スタートさせるるのが目標です。

――最後に色紙に言葉を書くとしたらどんな言葉を書きますか

橋本 昨年と同じ「喧嘩は自分より強い人に売りなさい」です。自分よりも強い人がいっぱいいる中で、昨年の成績で言うと今までの自分からしたらいい成績を取っているんですけど、優勝を諦めずに狙っていったというのは僕の性質のいいところだったので、どんどん上の人に喧嘩を売っていく。現状維持が競技者としてはいちばんいけないことだと思うので、常に新しいことに挑戦したい、常に強い人を意識した練習をしていきたいです。無名だったからこそ雑草魂みたいなところです。

――山本さんはいかがですか

橋本 現状打破です。

山本 それもいいね(笑)。「真剣」にします。競技と真剣に向き合うというのは、来年から競技1本で社会人としてやっていくんですけど、今はいくらでも言い訳ができるというか、学校があるからとかやることがあるとか、卒論があるとか言い訳はたくさんできます。渡部暁斗さんからもらった言葉で「どれくらい自分を犠牲にして競技に対して本気で熱を入れているかというところが重要」と言われて、言い訳はできるけど今年の冬からより真剣にやってみようというチャレンジの年として真剣に向き合ってみようと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 堀内まさみ)

◆橋本礼徳(はしもと・ゆきのり)

長野・飯山高出身。スポーツ科学部4年。クロスカントリー部門。いつも明るく対談を盛り上げてくださる橋本選手。4年生として最後のインカレではその勇姿に注目です!

◆山本侑弥(やまもと・ゆうや)

長野・飯山高出身。スポーツ科学部4年。ノルディックコンバインド部門。対談の際は穏やかな笑顔が印象的な山本選手。2年ぶりにインカレに出場されます。その滑りとジャンプにご注目ください!