2014年のフェブラリーSは、歴史に残る大波乱となった。レース後、ターフビジョンに映し出されたのは「単勝13番 27,210円」の文字。GIはもとより、平場戦でも年に1、2回しかお目にかかれない超人気薄の勝利に、東京競馬場はしばらく騒然…

 2014年のフェブラリーSは、歴史に残る大波乱となった。レース後、ターフビジョンに映し出されたのは「単勝13番 27,210円」の文字。GIはもとより、平場戦でも年に1、2回しかお目にかかれない超人気薄の勝利に、東京競馬場はしばらく騒然となっていた。

 勝ったのはコパノリッキーだ。デビュー戦こそ8着だったが、その後は順調に勝ち星を挙げ、3歳春までに重賞含む6戦4勝。ところが、兵庫チャンピオシップの後に骨折し、復帰後は霜月Sで10着、フェアウェルSで9着と勢いを失ってしまう。それでも陣営は、フェブラリーS挑戦を選んだが、1/2抽選をくぐり抜けてやっとの出走。東京マイルで勝ち星が無かったことを含め、確かに買い要素には乏しい。

 ところが、ここぞの場面で素質が完全開花した。レースでは好スタートから先行すると、やや遅めのミドルペースを味方に楽々2番手。直線ではすでにJpnI・5勝を挙げていたホッコータルマエが一瞬前に出かけたが、しぶとく食い下がって先頭は譲らない。2番手から上がり35.3でまとめられては、後続にもなす術がなく、前年のJCダート覇者ベルシャザールも、差し届かずの3着に敗れている。

「なんとまさかのコパノリッキー!」

 JRAの平地GIにおいて、最低人気馬が勝利したのは3例目のこと。とあるアナウンサーも「まさか」と実況した。しかし、同馬はこの勝利がフロックで無かったことを実力で証明していく。ダートのビッグタイトルを次々に獲得。ホッコータルマエとライバルストーリーを展開し、砂で双璧をなす存在になっていった。

 なお、15年のフェブラリーSには“1番人気”で出走し、自身以外7頭のGI/JpnI馬を向こうに回して連覇を達成している。アナウンサーは「前年はまさか、今年は“やっぱり”コパノリッキー」と表現。1年間で誰もが名馬と認める存在になった。

 もし、抽選に漏れていたら…。もし、最初から別のレースを選んでいたら……。その後、かしわ記念、帝王賞、JBCクラシックと進んだローテも異なっていたと思われ、GI/JpnI・11勝の日本記録も生まれていなかったかもしれない。陣営の果敢な挑戦が実を結んだ“コパノリッキー伝説”の幕開けだった。