巨人の育成2年目・中田歩夢は紅白戦で攻守に存在感 就任1年目の巨人・阿部慎之助監督には“秘蔵っ子”がいる。プロ2年目の育成選手・中田歩夢(あゆむ)内野手。監督就任直後の昨年11月、1軍秋季キャンプに抜擢され、連日直接指導を受けた。その“恩”…

巨人の育成2年目・中田歩夢は紅白戦で攻守に存在感

 就任1年目の巨人・阿部慎之助監督には“秘蔵っ子”がいる。プロ2年目の育成選手・中田歩夢(あゆむ)内野手。監督就任直後の昨年11月、1軍秋季キャンプに抜擢され、連日直接指導を受けた。その“恩”に報いるように、今年の紅白戦でピカイチの存在感を放っている。

「最高だね、あれ」。阿部監督が膝を打ったのは、宮崎キャンプの11日に、ひなたサンマリンスタジアムで行われた紅白戦だ。紅組の「9番・遊撃」でスタメン出場した中田は、3回先頭で右中間に打ち返すと、中堅手の動きを見ながら迷わず一塁を蹴り、二塁に猛然とヘッドスライディング。二塁打にして、阿部監督を「“暴走族”が出たなと思ったよ。完全にアウトのタイミングでもああいう走塁ができるというのは、みんなが見習わないといけないと感じました」とうならせた。

「微妙なタイミングで一瞬止まろうかと思いましたが、2軍の全体のテーマが『アグレッシブ』なので、アウトでもいいから行ってみようと思いました」と19歳のホープは会心の笑みを浮かべた

 しかも、これだけではなかった。この後、オコエ瑠偉外野手の犠打で三塁に進み、続く鈴木大和外野手の投ゴロで三本間に挟まれたが、諦めない。三塁手のタッチをかいくぐり、三塁へ戻りセーフ。ここでも阿部監督から「頑張っていましたね。イナバウアーみたい」と称えられた。

「瞬時に体が動きました。三塁手が走り気味に来ていたので、そこはちょっと(本塁方向へ走ると見せかけて)逆をつきながら、グラブの下をくぐり、少し横へ逃げた感じです」としてやったり。「ああいう技が1つあるだけで、いつか生きてくるのかなと思います」と自信を得た様子だ。

 翌12日に行われた2、3軍の紅白戦(都城運動公園野球場)にも、視察に訪れた阿部監督の前で「2番・遊撃」で出場。3打数無安打に終わったものの、遊ゴロを放った際に俊足で焦らせ敵失を誘う一幕があり、遊撃守備でも切れ味鋭いフットワークを見せた。

少数派の青森出身「支配下を勝ち取って地元の方々に恩返ししたい」

「阿部監督にチャンスをいただいているので、なんとか恩返ししたい。チーム全体でリーグ優勝、日本一を獲って、胴上げしたいです」と中田は言う。それにはまず、支配下登録を勝ち取ることが大前提だ。「今年中に(支配下選手に)なりたい思いはあります」とうなずく。

 2022年の育成ドラフト4位で、青森・東奥義塾高から入団。球界で青森県出身者は西武・外崎修汰内野手らがいるものの、少数派である。二塁手としてゴールデングラブ賞に2度輝いている外崎から、プロ入りのお祝いにグラブを贈られた。

 内野の複数ポジションをこなす中田は「二塁を守る時に、外崎さんからいただいたグラブを使っています」。さらに「地元のいろいろな方にお世話になっているので、支配下登録を勝ち取って恩返ししたいです」と郷土愛を滲ませる。

 自身の将来像は「(巨人の先輩の)吉川尚輝(内野手)さんをイメージしています。守備は完璧で、足もあって、打撃でも率を残せる。状況を考えた打撃ができて、時にはパンとホームランも出る」とバランスの取れた選手を思い描いている。

「『夢に向かって歩いていけ』という意味で、両親が付けたと聞いています」と言う名前の通り、まずは支配下登録を目指す。巨人では中田翔内野手が中日へ去ったが、全くタイプの異なる“もう1人の中田”がスターダムにのし上がろうとしている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)