「今のはどうですか?」。ゴロを捕るたび、阪神の遊撃手・木浪聖也は、臨時コーチの鳥谷敬さんに助言を仰いだ。指導が終わるやいなや、今度は小幡竜平が小走りで駆け寄る。同じく質問をぶつけた。 8日の守備練習での一幕だ。現役時代にゴールデングラブ賞…

 「今のはどうですか?」。ゴロを捕るたび、阪神の遊撃手・木浪聖也は、臨時コーチの鳥谷敬さんに助言を仰いだ。指導が終わるやいなや、今度は小幡竜平が小走りで駆け寄る。同じく質問をぶつけた。

 8日の守備練習での一幕だ。現役時代にゴールデングラブ賞を5回受賞した球団OBによる指導はこの日まで。木浪が「せっかくの機会なので」と言えば、「聞かないともったいない」と小幡。2人は競い合うように名手でならした先輩を質問攻めにした。

 昨季、38年ぶりの日本一に輝いたチームで、レギュラー争いが最も熾烈(しれつ)なのが遊撃のポジションだ。昨季の開幕戦は23歳の小幡が先発の座を勝ち取ったが、シーズン途中に台頭した木浪は「恐怖の8番打者」と呼ばれ、計127試合に出場。初のゴールデングラブ賞を受賞した。

 ともにプロ6年目。年齢は木浪が6歳上だが、同期入団の2人は初日から火花を散らす。小幡が1日に早朝からノックを受けたのに対し、木浪はその日、居残り練習。全選手の中で一番最後に球場を後にした。

 阪神の不安は2番手以降の選手層の薄さ。複数の内野ポジションを守れる2人の競争は、チーム力の底上げにもつながる。岡田彰布監督は「ちゃんと守れる選手を使う」と明確だ。

 「木浪さんを超せるように頑張る」「小幡に負けたくない」。互いに、対抗意識をはっきりと口にする。10日からの第3クールでは紅白戦も始まり、つばぜり合いは、ますます熱を帯びそうだ。=宜野座(山口裕起)