世界一に挑む男がいる。江森大希(法4=埼玉・開智)だ。江森は早大ワンダーフォーゲル部に所属しながら、ラフティングチームAGALLASの一員として活動している。 AGALLASは、5月24日から6月1日にかけてボスニア・ヘルツェゴビナで行…

世界一に挑む男がいる。江森大希(法4=埼玉・開智)だ。江森は早大ワンダーフォーゲル部に所属しながら、ラフティングチームAGALLASの一員として活動している。

AGALLASは、5月24日から6月1日にかけてボスニア・ヘルツェゴビナで行われる、ラフティングの世界選手権大会(世界大会)のために結成されたチームである。もともとは日本唯一のプロのレースラフティングチーム”TEIKEI”のジュニアチームとして活動していたが、様々な事情を考慮し昨年の12月に独立。自分たちの力で世界一を目指すU-23の学生チームとして動き出した。江森は当時を「サポートを受けられない分タスクが増えるので、やらないといけないなという気持ちはありました。でも意気込みとしては特に変わらず『世界一に向けてやるぞ』という感じでした」と振り返る。


笑顔を見せる江森

まだテイケイジュニアとして活動していた昨年11月。世界大会の出場権を懸けた全日本レースラフティング選手権(全日本選手権)に臨んだ。大会前の約2か月間、毎日のようにTEIKEIとともに練習を重ねていたAGALLAS。技術面はもちろんのこと、練習方法、さらには試合に向けた気持ちのつくり方など、プロ選手としてのノウハウを多く吸収してきた。迎えた本番、惜しくも一橋大学のチームに敗れ自力での世界大会出場を逃したものの、一橋大学は出場を辞退。大会への切符は江森たちのもとに差し出された。その中で「代表権をもらってうれしいという気持ちよりは、(このままでは)やばいな、という気持ちの方が大きかった」と迷いも見せた。だが、AGALLASの4人が集まった理由はラフティングで「世界一を目指す」ため。悩み抜いた末に世界大会への出場を決意した。「全日本選手権前はたくさん練習していましたけど、どちらかと言えば『プロチームがこう言ったからこうしよう』みたいな。自分たちで考えてはいたんですけど、他のチームよりはあまり考えずに言われたことをやるだけという感じでした」しかし独立後は自分たちで全て考えて活動し、着実に成長を続けてきた。

そして4月も後半に差しかかったころ、世界大会前最後の試合である第23回御岳カップに出場した。種目はスラローム。これはアップゲートとダウンゲートという2種類のゲートを通過しながら漕ぎ進み、速さを競う競技である。ゲートに体が当たったり、ゲートを通過できなかったりした場合はそれぞれ5秒、50秒のペナルティを加算。レースは2本行われ、成績の良かった方が採用される。AGALLASの結果は14位。1位のTEIKEIの記録が2分31秒73なのに対し江森たちは4分1秒23と、目標としていた上位には遠く及ばなかった。まず江森が「ダメダメだった」と話す1本目。「自分たちがもともと決めていた、ここをこう行こうというルート通りに全然行けなくて。あとは集中力も結構切れていて、ダメダメでした」。3番ゲートに入る直前、左岸の岩にぶつかり跳ね返るというハプニングがあるなど、レースの序盤から本来の勢いに乗ることができなかった。この結果を踏まえ、3番ゲート付近の岩への注意、そして集中力をあげるための積極的なコミュニケーションを意識して2本目に臨んだ。しかし例の3番ゲートで江森が左肩を脱臼。全日本選手権の際にも悩まされていた脱臼癖が、ここでも再発してしまったのだ。直後は右手のみで何とか漕いでいたが痛みに耐え切れず、途中からはただ仲間に任せるかたちとなった。


実力を発揮できなかった御岳カップ


左後ろ(正面から見て右後ろ)でボートを漕ぐ江森

 十分に実力を発揮できなかった御岳カップ。江森は大会後、何度も「ダメダメだった」と漏らしていた。しかし下を向いている暇もなく、世界大会はすぐに迫ってくる。江森は「目標はとりあえず世界大会で日本ジュニア初の優勝をしたいと思っているので、それに向けて今日の反省点もそうですけどいろいろ、あと1か月もないのでしっかりやっていきたいと思います」と話した。現時点でAGALLASはこの世界大会を最後に解散する予定。最高のかたちでチームにピリオドを打てるよう、早スポからも全力でエールを送りたい。

 

(記事 槌田花、取材・写真 堀内まさみ、槌田花)