番外編となる第2回はノルディック複合を専門とする、谷地宙(スポ4=岩手・盛岡中央)と山本侑弥(スポ3=長野・飯山)。日本国内はもちろん、世界を舞台に活躍を見せるお2人に今まで、そしてこれからの競技生活についてお話を伺った。 ※この取材は2…

 番外編となる第2回はノルディック複合を専門とする、谷地宙(スポ4=岩手・盛岡中央)と山本侑弥(スポ3=長野・飯山)。日本国内はもちろん、世界を舞台に活躍を見せるお2人に今まで、そしてこれからの競技生活についてお話を伺った。

※この取材は2022年10月13日にZoomで行われたものです。また谷地選手、山本選手は世界選手権に出場されるため、インカレには出場しません。ご了承ください。

「僕たちは2人とも大きな目標に向かって、頑張っている」(谷地)


――お互いに紹介をお願いします

谷地 3年の山本侑弥は僕と一緒のノルディック複合のチームで活動していて、結構一緒にトレーニングすることもあります。本当にライバルというか非常に切磋琢磨できる存在で、元気も良く明るくチームの雰囲気を明るくするような人だと思っています。

山本 4年の谷地宙さんはもちろん僕と同じ競技をしています。昔の話をすると僕が先に全日本強化指定選手に選ばれていて、そこから後に宙さんが選ばれて一緒に戦うというようになってきていて、自分の中では宙さんのイメージというか今ももちろん変わらないですが、目標に向かって進んでいく姿勢がすごくある人だと思います。自分に厳しくてできるところも僕は尊敬できるところだと思っているので、しっかり目標が明確化されていて、なおかつそれに進むことができる人だと思います。

――谷地選手いかがですか

谷地 そう思ってくれているのはすごくうれしいなと思います。僕だけじゃなくて本当に僕たちは2人とも大きな目標に向かって、頑張っているところは同じなので共通するところはあると思います。

――普段はお2人は交流はありますか

谷地 練習を一緒にすることも結構ありますが、普段からずっと一緒に練習しているという訳ではなくわりと個人練習も多めな部門ではあります。その中でも一緒に練習したときには気づいたことを教えたり、教えてもらったりということはあります。

――オフの日はどのように過ごされていますか

谷地 オフの日は友達とご飯に行ったり、ネットフリックスとかユーチューブを見たりしています。

山本 僕もそんなに変わりはないですね。友達とご飯に行ったり、ユーチューブ見たり、寮にいる人とゲームしたりという感じです。

――お2人が初めて会ったのはいつだったか覚えてますか

山本 いつだろう(笑)。

谷地 あんまり覚えてないな。ちゃんと話すようになったのは多分僕がナショナルチームに入ったときくらい。

山本 その前じゃないですか。インハイ(インターハイ、全国高等学校総合体育大会)とかじゃないですかね。

谷地 インターハイか、そっかインターハイくらいで入賞したときとか。

山本 そうですね、そのときくらい。

谷地 そのときくらいですかね。詳しくいつとかはちょっと覚えてないです。ただお互いに知っていたので、ちょいちょい話すことはありました。

――そのときの印象と今違うなと感じるところはありますか

谷地 昔はすごい侑弥は走りがめちゃくちゃ速くて、どちらかというとジャンプよりも走りで追いかけてくるようなタイプだったという印象があります。最近はすごくジャンプもめちゃくちゃ上手くなってきて、ちょっとまずいなという(笑)。そんな感じです。

山本 僕の場合は逆なのかな、多分。宙さんはジャンプがもともと上手で、今も突出して上に来てるというのがあります。そこで宙さんが全日本の強化指定選手に入ったときに、「これはやばい」となって、何とかしなきゃなと思ったのは覚えています。

「スキー部は家族みたい」(山本)

――スキーを始めたきっかけは何ですか

谷地 僕はもともと小学6年生までサッカーをしていました。岩手県出身なんですが小学4年生のころに、地元のタレント発掘育成事業という、その地域から世界を目指すトップアスリートを発掘・育成しようというプロジェクトに参加しました。そこで三ケ田礼一さんというアルベールビルオリンピック(1992年)のノルディック複合団体金メダルを獲得した方の講演を聞き、「人は自分の思い描いた人生を歩むことができる」という言葉に感銘を受けまして、三ケ田さんに憧れて自分もノルディック複合、スキージャンプを始めようと思い、中学1年生から始めました。

――そこからずっとノルディック複合1本で競技を続けられましたか

谷地 中学、高校まではスキージャンプの試合にもノルディック複合の試合にも出場している、インターハイなどはどちらも出ていました。大学からは主戦場がW杯などの海外の大会に移ったこともあり、今はノルディック複合1本でやっています。

――山本選手はいかがですか

山本 僕は父親がもともと同じ競技をしていて、4歳上に兄がいるんですが、兄も同じ競技をしていたのがいちばんの大きなきっかけかなと思います。物心ついたときにはもうやってたかなという感じです。そこからずっとコンバインド1本でやってきてます。

――早大に入ったきっかけを教えてください

谷地 僕が早大に入った理由は3つ理由があります。1つは先輩たち、OBの方々も含めて強い先輩たちが早大スキー部からたくさん輩出されていたことです。渡部暁斗(平23スポ卒=現北野建設)選手、荻原(健司、平4人科卒=現長野市長)(次晴、平4人科卒)さん、河野孝典(平3人科卒=現全日本スキー連盟)さんなど、僕が1年生のときには昨シーズンのオリンピックで銅メダルを獲得された山本涼太(令2スポ卒=現長野日野自動車)さん、侑弥のお兄ちゃんが4年生にいらっしゃったというのがあります。もう1つは監督が、一戸(剛、平11卒=青森・弘前工)監督、トリノオリンピック(2006年)でスキージャンプの日本代表として活躍されていたことです。クロスカントリーの方では藤田善也(平19スポ卒=北海道・旭川大高校)助監督・准教授がいらっしゃり、その教授がクロスカントリーを専門に研究されています。最後に環境の面で、早大の所沢キャンパスでローラースキーのトレーニングなどができ、寮の近くでは15キロくらいのランニングコースがあります。そういった環境面でも非常にいい環境が揃っています。人、環境があり早大に入学しました。

山本 僕も宙さんとそんなに変わりはないかなと思います。僕の中でいちばん強いのは、強い選手たちがみんな早大から出てるなということはずっと思っていて、僕も単純な人なので「早大に入学したら強くなれるんだ」と思って行きたいと思ったのが1つです。その関係に付随してですが、何か早大でしか学べないことがあるんじゃないかなと思い、そこに魅力があるのかなと感じて早大に来ました。僕も環境面はすごくいいと思っていて、練習を自主的にするのは僕は苦手な方なので関東圏ではありますが練習しかできないくらいのこういった環境の方がいいのかなと思い、そこが早大だったのかなと感じます。

――早大スキー部の好きな点やいいなと思う点はありますか

谷地 スキー部は個人練習や個の考え方を尊重してくれるような部だと思います。それぞれみんな目標が高い選手が多いので、いつも誰かがトレーニングしている、それもレベルの高い選手たちがトレーニングしているというところで、いろいろな種目の選手がいますが、いい刺激をもらえるところだと思います。

――いちばんトレーニングしている印象がある選手はどなたですか

谷地 ちょっと難しい質問なんですが、やっぱりいちばん僕の中で刺激を受けているのは同期の広瀬崚(スポ4=富山・雄山)ですね。一緒にトレーニングすることもありましたし、一緒にオリンピックに行ったということもあります。そういったところで同期でオリンピックに一緒に出場できたというのは非常にいい刺激になりました。いろいろな技術面やトレーニング面で聞くことも多いので。他にも主将(星野誉貴、スポ4=群馬・利根商)がいちばん練習していると思いますし、侑弥からもいろいろと追い上げてきてもらっているので、すごくいい刺激をもらっています。1人には絞りきれないです。

――山本選手はスキー部の好きなところやいいなと思うところはありますか

山本 もちろん上下関係というのはありますが、僕はスキー部は家族みたいだと思っています。いろいろなことも聞きやすくて、一緒に悩めるし、でも確実にレベルの高い人たちといるからこそ迷ったときに上に相談しやすいというのがあります。そういう人たちがいてくれるのはすごく頼もしいことだしそこは僕的にすごくいいところだと思います。

――1人には絞れないと思いますが、尊敬している先輩はいらっしゃいますか

山本 それだと僕はやっぱり宙さんですね。

谷地 言わせた感あるな(笑)。

山本 いやいやいや(笑)。いろいろトータルで考えると、やっぱりそうですね。もちろんみなさんそうですが、目標に向かって現実的に考えているかということを考えると、宙さんがいちばんだと思っています。妥協のない目標だからこそ、そこがすごいなと思っていて、僕だったら今シーズンちょっと妥協してこういう目標を立てようかなと、ちょっとクリアできそうでできないみたいな微妙なところで目標を立ててしまいますが、宙さんは今後のプランというのがしっかりあるからこそ、そういう計画が立てられているのですごく尊敬できるなと感じます。

谷地 ありがとうございます(笑)。

――普段、授業があるときはどのように練習をされていますか

谷地 授業があるときには時間を見つけて練習してます。1年生のときは対面の授業がほとんどで、1限から3限、4限があると学校で授業を受けていることが多かったですが、授業が終わった後や朝の時間があるときに練習をするようにしていました。

山本 1年生のときは新型コロナウイルスの影響で全てオンライン授業で、寮にも集合していなかったので練習ができないというよりは、やってなかったというのが大きいかなと思います。それがあってからの今なのでだいぶ時間を上手く使えるようにはなってきて、授業の合間や朝走ることも増えたという感じです。いろいろ考えながらやっています。

――昨シーズンは振り返っていかがでしたか

谷地 目標の達成度で言うと90パーセント、95パーセントくらいかなと思います。ただいちばん欲しかったところが取れなかったという悔しさもありますが、オリンピックに出場できました。またW杯の総合成績で30番以内に入ったというのと、W杯成績最高11位、夏のサマーグランプリは10位というところで、昨シーズンは非常にいいシーズンを過ごせたと、総合的に見れば思います。W杯が始まる当初はオリンピックの出場枠が5人でしたが、6番目で派遣されてW杯を通してオリンピックの選考まで緊張感をもって試合に臨むことができ、代表権をつかみ出場できたことはすごく良かったと思います。繰り返しになりますが、ただ1ついちばん悔しいのはメダルに絡めなかったことです。

山本 僕は昨シーズンすごく良かったかなと思っています。パーセンテージに表すと120パーセントくらいは達成できたのかなと自分で思っています。昨年(2021年)の春に全日本の強化指定選手を1度外れて、そこから8月にもう1度全日本強化指定選手に入れるチャンスがありました。そこまでいろいろ変えられて基準をクリアできて、全日本の強化指定選手に戻るという年でした。しっかり成績を残さないともちろん先がないと自分でも感じていて、でも後がないからこそというか、失うものがないからこそ(力を)全部出すことができました。W杯に出場できたというのはすごく大きくて、それも自分の力で勝ち取ってつかんだ切符で行けたので、それが自分の中ですごく自信になったかなと思っています。比較的すごく良かったシーズンかなと思います。

谷地 言い忘れたことがあるので言わせてください。成績のことしか話してなかったですが、昨シーズンの夏のトレーニングについて少し話をさせていただきたいと思います。昨シーズンの夏のトレーニングは僕的には100パーセントやりきったと思っていましたが、高所トレーニングだけ、できなかったです。それ以外は自分が考えられる100パーセントのトレーニングを積んできて、自信をもってオリンピックに挑んだつもりです。ただ1つ挙げるとするならば、高所対策というところができていなかったので、そこでオリンピックの際にクロスカントリーであまり成績が良くなかったと感じます。

――今年(2022年)の夏はどのようなことに重点を置いて練習されてきましたか

谷地 今年の夏はジャンプの助走姿勢の改善を重点的に取り組んできました。スキージャンプは助走姿勢から踏み切りまで、精度が非常に大事です。踏み切りの精度を上げるために助走姿勢をつくるということを重要視していました。クロスカントリーに関してはテクニック面、とくに上り坂のテクニックに重点を置いてトレーニングを積んできました。

山本 昨シーズンW杯に出場して、まず前半のジャンプでビハインドをなるべくつけたいと感じました。ジャンプに重点を置いてやってきたので宙さんや兄と一緒に練習する機会があっても、練習するゲートの高さやどれくらい飛んだのかと頭の中で何秒(差が)ついているなと計算して、日頃からやっていてできるのでそこの中で少しずつ差が縮まってきているということも分かってきました。そういった自信も少しありました。何を大きく変えたかと言うと自分の中だと固定概念、これはこういうものだからという考えを1つ1つ、何でこうなっているのか、何でジャンプは飛ぶのかというところに重点を置いて取り組んできたら、今やっていることは無駄じゃないかということも増えてきました。無駄をなるべく省いていいものにもっていくということを意識していました。

――練習の際、ジャンプとクロスカントリーで配分など意識されていることはありますか

谷地 質を上げなければいけないのはジャンプトレーニング、時間を割かなければいけないのはクロスカントリースキーなのかなと思っています。トレーニングの内容自体がジャンプトレーニングは短い時間しかできない、クロスカントリースキーは長い時間やらなければいけないということもあります。2026年のイタリアのオリンピックの開催地は、クロスカントリースキーが強い選手が有利な場所だと思っているので、僕はクロスカントリースキーを優先的にトレーニングするようにはしていました。ただその中でもジャンプでいい成績を残さなければW杯でトップ争いはできないと思っていたので、ジャンプは高い質をキープしてトレーニングしようと考えていました。

山本 先ほども言ったようにジャンプの方に重点を置いています。完全にクロスカントリーを切り捨てる訳ではないですが、ジャンプの本数をなるべく飛んで何かきっかけや感じるものを得るために経験を増やしたいと思って、いろいろなことにチャレンジしています。クロスカントリーに関しては今年(2022年)はそんなにかなと思っていて、僕の頭にあるプランでは来年(2023年)にクロスカントリーの強化をできればいいのかなと考えています。まずは今年ジャンプをなるべく完成させたいなと思っているので、今はジャンプに重点を置いています。

「1つ1つのことを楽しみながら全力で」(山本)


――ご自身の競技における強みは何だと思いますか

谷地 僕の強みはやっぱりジャンプです。ある程度経験も浅いとは思いますが、昨シーズン戦ってきて少し自信がついたこともあるので安定していいジャンプができるというのが強みかなと思います。

山本 正直強みが見つかってないかなと自分の中で思います。国内でずっと戦ってきた中で強みはありましたが、W杯に出場してから自分の強みがなくなってしまったような気がして、上には上がいるなと感じました。まずはジャンプを強みにしたいなと思って今練習しています。

――全日本学生選手権(インカレ)会場の印象はありますか

谷地 正直なところインカレは目指しておらず、W杯の成績と世界選手権を目標にしています。鹿角の印象は、いろいろな競技が1カ所で開催されるので、インカレに行ったことはありませんが盛り上がるんだろうなと思います(笑)。昨年は侑弥が2冠して絶対に盛り上がっただろうなと思います(笑)。

山本 僕も今年は世界大会に重点を置いて目指しているので、インカレには出場できない可能性の方が大きくなってしまうと思います。昨年と会場が変わらないということで、僕は鹿角でインカレを行うのがいちばんいいのかなと思っています。先ほど宙さんが話していたようにアルペンスキー、ジャンプ、ノルディック複合、クロスカントリーを見られるというのはなかなかないので、場所的にもいいところだと思います。インカレをやるんだったら鹿角がいいなとずっと思っています。昨年2冠してすごく盛り上がったし、スキーは個人競技ですがチームとして早大として戦うというのがすごくいいなと感じたので、自分のためだけじゃなくてチームのために頑張るという原動力は大きかったと思います。

――2月以降のシーズンの目標や意気込みをお願いします

谷地 世界選手権でメダルを獲得します。W杯総合、最低15位以内、目標10位以内です。

山本 世界選手権への出場とW杯個人戦で15位以内を1回以上は獲得したいと思っています。

――谷地選手は大学生として最後のシーズンになりますが、特別な思いはありますか

谷地 特別な思いは正直そこまでないですが、学生最後の年、学生最後の年だからというよりは、どちらかというと社会人になって競技を続ける前段階でどれだけいい成績を残して社会人の競技生活につなげられるかということを意識しています。学生のうちは、学生だからといって成績を残さなくていい訳じゃないですが、ある程度自分のためだけにやっていればいいのかなと思います。社会人として競技をするとなるとこれまで以上に多くの人たちの支えがあって、競技ができるのかなと思っているので、その方たちのために、そしてこれまで大学生活で支えてくださった監督やコーチをはじめ、チームメートの思いも背負って最後にいい成績を残していい大学生活だったと思いながら卒業できるように頑張りたいと思います。

――山本選手はシーズンへの思いなどはありますか

山本 もちろん競技をやっている以上、W杯は1つの目標でした。そこを1戦目から回れるというのはすごくうれしく思っていて、少しずつですが夢が叶ってきたのかなと実感しています。小さいことでも夢が実現するとすごくモチベーションにつながるし、やる気も出るし、やっていて楽しいという思いもあります。1つ1つのことを楽しみながら全力でやっていければいいのかなと思います。

――最後に色紙に文字を書くとしたら、何かありますか

谷地 ちょっと待ってくださいね。

山本 ちょっと待ってください(笑)。

谷地 難しいなあ。

山本 じゃあ僕最初いいですか。「自信」という言葉を書きたいなと思います。理由としては高校1年生のときに全日本の強化指定選手に入って、入っただけだけど過信になっていたり、自分が強いと感じになっていたりして、過信や慢心がありました。それに気づかされたのが昨年で、過信や慢心ではなく自信にしようと思ってずっとトレーニングしてきました。今は自信という言葉がいちばんいいかなと思います。

谷地 「勝つ」です。これは人に対してというよりも自分に対して勝つということです。とくに目標に対して向かっていく際のプロセスというところで、普段の生活1分1秒無駄にしないようにしていきたい、自分に勝つという意味を込めました。結果として人にも勝つことができればいいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 堀内まさみ)

※谷地選手、山本選手の世界大会での活躍にぜひご注目ください!

◆谷地宙(やち・そら)


岩手・盛岡中央高出身。スポーツ科学部4年。ノルディック複合部門。2022年北京冬季五輪日本代表。ハマっていることは韓ドラ鑑賞と香水ショップで香水を探すこと。

◆山本侑弥(やまもと・ゆうや)


長野・飯山高出身。スポーツ科学部2年。ノルディック複合部門。ハマっていることは読書。雑談力が鍛えられる本を読まれているそうです!