水上のF1とも称されるカヌースプリント。欧州で人気が高いスポーツだが、流れの速い川が多い日本での認知度は高くない。そんな競技で世界に挑む選手がいる。立命館大学1年、中田寛治郎選手(18)。アスリートとしての素地は、兵庫県芦屋市の海で育んだ…

 水上のF1とも称されるカヌースプリント。欧州で人気が高いスポーツだが、流れの速い川が多い日本での認知度は高くない。そんな競技で世界に挑む選手がいる。立命館大学1年、中田寛治郎選手(18)。アスリートとしての素地は、兵庫県芦屋市の海で育んだ。

 神戸市出身。小学4年のとき、作家でカヌーイストの故・野田知佑さんが校長を務めた「川の学校」でカヌーと出会った。四国を流れる吉野川を下り、自然と一体になれる楽しさ、水面を疾走する爽快感のとりこになった。

 中学、高校でもカヌーを続けたいと思い、中高一貫でカヌー部のある県立芦屋国際中等教育学校に入学した。

 高校2年で海外派遣選手選考会シングル1000メートルで優勝。16歳以下の日本代表としてチェコであった世界大会に出場した。2022年3月の全国高校カヌー長距離選手権では、学年別で前年に続いて優勝した。23年4月にカヌー競技の強豪、立命館大学に進み、練習場は芦屋の海から琵琶湖に移った。

 武器は、体幹の強さとバランス感覚。パドルをこぐ力を効率よく推進力に変えるには、この二つの要素が鍵を握る。それらは、静水面に比べて波がある芦屋の海で培ったものだ。「芦屋の海で鍛えてもらったからこそ、今の自分がある」

 将来の目標は二つある。競技者として、五輪や世界大会で活躍すること。そしてもう一つは「芦屋のカヌー聖地化」だ。自らの活躍を呼び水とし、カヌー人口の裾野を、芦屋の海から広げたいと思っている。

 「芦屋の海で練習していると、夕日が空と海と六甲山をオレンジに染める瞬間があるんです。あの景色を見たら、カヌーも芦屋の海も、きっと好きになりますよ」

 中田選手は活動資金をクラウドファンディングで募る「地元アスリート応援プログラム」(明治安田生命主催)に参加している。集まったお金は、艇の運搬や大会参加の移動費などにあてる予定だ。支援は、朝日新聞のクラウドファンディングサイト「A―port+」(https://a-portplus.asahi.com/projects/nakata2023)で2月末まで受け付けている。(真常法彦)

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 〈カヌースプリント〉 流れのない池や湖などの静水面で、一定の距離(200メートル、500メートル、1000メートルなど)と水路を決めて複数の艇が着順を競う。1人乗り、2人乗り、4人乗りがあり、水かきが片端にあるパドルを使うカナディアン、両端にあるカヤックがある。