新人戦サマーステージ(サマーステージ)、それはラクロスを始めてわずか5カ月の1年生のみが出場することができる晴れ舞台である。この大会は一般的なラクロスとは少しルールが異なる。試合は6人対6人で行われ、コートの広さも少し小さく、試合時間も…

  新人戦サマーステージ(サマーステージ)、それはラクロスを始めてわずか5カ月の1年生のみが出場することができる晴れ舞台である。この大会は一般的なラクロスとは少しルールが異なる。試合は6人対6人で行われ、コートの広さも少し小さく、試合時間も前後半合わせて16分と短い。またフェイスオフは前後半開始の際にしか行われない、重大な反則を犯したときはフリーシュートが与えられるなど様々な特別ルールが存在する。

 今年のサマーステージには早大αと早大βの2チームが出場。8月24日に行われたブロック予選を早大αは2連勝で危なげなく突破したが、早大βは1勝1敗で惜しくも敗退となった。そして2週間後に行われた決勝トーナメント。早大αは1回戦で法大、2回戦で東大αを破り3チームの総当たりで行われる決勝リーグへと進出。迎えた決勝リーグでは接戦を制し2連勝を収め見事優勝、そして※4連覇(2018年、2019年、2022年、2023年)を果たした。

※2020年、2021年は中止

 


法大戦の前に選手を鼓舞する宮野翔太学生コーチ(社4=東京・早実)

 1回戦の相手は法大。早大αはフェイスオフでボールを奪うとじっくりと攻撃を組み立てる。するとコート中央でパスを受けたMF三戸優也(商1=東京・早実)がシュートを決め、先制点を挙げた。しかし、直後に法大もゴールを奪い同点に。さらに2点目を追加され逆転を許してしまう。悪い流れの中で前半残り2分、MF三戸が相手DFのチェックを受けながら同点弾を決める。しかし再開後すぐに得点を返され、2―3で前半を終えた。負ければ即敗退という緊張感の中で迎えた後半。AT吉田宗一郎(教1=東京・早実)、MF山田伊織(国教1=早稲田佐賀)が立て続けに得点を奪い逆転に成功した。しかし食い下がる法大にまたしても同点に追いつかれ、さらに試合終了間際相手選手のシュートが早大ゴールのバーをたたく。絶体絶命のピンチだったが、法大が前がかりになった隙にAT吉田がブレークから勝ち越し点を決め試合終了。5―4で2回戦へと駒を進めた。

 


法大戦でシュートを放つMF三戸優也(商1=東京・早実)

 2回戦は、1回戦で成蹊大(ブロック予選で早大βが負けた相手)を倒した東大αとの対戦となった。開始早々、MF山田が相手DFのチェックを受けながらスタンディングシュートを決め先制点を奪う。さらにMF藤佳諒(法1=大阪明星)が相手選手を2人交わして右下にシュートを突き刺した。その後もG長田謙伸(政経1=埼玉・大宮開成)の再三の好セーブが光り、2―0で前半を折り返した。後半もMF長谷川遼太(スポ1=東京・青山)が相手ゴール裏から回り込み得点を決めリードは3点に。しかし、ここから東大αも追い上げる。スタンディングシュートを決められると、さらに早大αの反則によるフリーシュートも成功され1点差に。流れが一気に傾きかけたように見えたが、早大も守りに入るのではなく攻め続け主導権は渡さない。そのまま時間は過ぎ去り、3―2で試合を終えた。

 


東大α戦で安定したセービングを見せたG長田謙伸(政経1=埼玉・大宮開成)

  決勝リーグ1試合目は中大との対戦となった。試合が始まるとすぐに、AT吉田が早大αとしてこの日3戦連続となる先制点を挙げる。連続得点を奪い試合を決定づけたかった早大αだがこの試合、中大が驚異の粘りを見せる。カウンターから中大が得点を奪いスコアを振り出しに戻した。その後も前半にAT吉田、MF長谷川が得点を挙げるが、点差を離すには至らず逆に同点に追いつかれる。迎えた後半、MF三戸が3回目の勝ち越し点を奪うが、そこから中大に攻め込まれる時間帯になった。試合終了直前、中大の選手がシュートを放つ。そのボールはゴールを揺らしたが一足先にホイッスルが鳴っており得点は無効に。4―3で辛勝となったものの、優勝に向けて大きな1勝を挙げた。

 


中大戦でゴール裏から回り込みシュートを放つMF内田玲央(商1=東京・国学院久我山)

 決勝リーグ2試合目の相手は学習院大。学習院大は1試合目で中大を2点差で破っており、早大αが優勝するためには勝利が絶対条件となった。そのため是が非でも先制点を欲しい早大α。しかし、試合は学習院大の先制点で幕を開けた。すぐに早大もMF石川慶(法1=県立千葉)が相手ゴール付近に転がったグラウンドボールを拾い、シュートを決める。勝ち越し点を奪いたい早大αだったが、自チームの反則からフリーシュートを決められ2度目のリードを取られてしまう。この日、4試合目の疲労からか選手たちはミスを連発し、なかなか決定機には至らず。1―2とリードされた状態で後半を迎えることになった。前半終了間際に学習院大の選手が犯した反則により、後半はMF内田玲央(商1=東京・国学院久我山)のフリーシュートから始まることに。それを冷静に決め同点に追いついた。しかし、自陣のパスミスから得点を奪われまたしても追いかける展開に。苦しい局面だったが、上級生と早大βの選手たちの応援が早大αの選手たちを後押し。MF井原幸輝(商1=東京・早大学院)がフリーシュートを決めると、さらにAT吉田がゴール裏から回り込み放ったシュートで逆転に成功した。その後は一時同点に追いつかれるが、MF三戸が勝ち越し点を奪う。試合終了間際、学習院大の選手が放ったシュートは2度ポストとバーをたたいたが得点には至らず。5―4で勝利を収め、悲願のサマーステージ優勝そしてこの大会4連覇を飾った。

 


優勝が決まりベンチを飛び出す早大αの選手たちとスタッフ陣

 「すごくプレッシャーがあった」とMF井原は優勝後のインタビューで吐露した。この日行われた4試合すべてが1点差での勝利ということが、それを如実に物語っている。しかし、その重圧をはねのけ見事4連覇を果たした。新人戦グランドスラム(サマーステージ、ウインターステージ、あすなろカップをすべて優勝すること)に向けて残すはあと2つ。常勝軍団の礎を築くだろう若武者たちのこれからの活躍に期待だ。

(記事 飯田諒 写真 廣野一眞)

結果
▽予選Eブロック◯早大β4ー1千葉大(得点者:長谷川颯2、黒田、五郎川)●早大β0-4成蹊大(得点者:なし)▽予選Hブロック◯早大α5-3慶大(得点者:吉田2、樋田、内田、栢森)◯早大α5-2東洋大・関東学院大・東経大連合チーム(得点者:樋田2、石川、長谷川遼、吉田)▽決勝トーナメント1回戦早大α ◯5-4 法大(得点者:三戸2、吉田2、山田)2回戦早大α ◯3-2 東大α(得点者:山田、藤、長谷川遼)▽決勝リーグ1試合目早大α ◯4-3 中大(得点者:吉田2、長谷川遼、三戸)2試合目早大α ◯5-4  学習院大(得点者:石川、内田、井原、吉田、三戸)

 

井原優太 新入生担当コーチ(令5商卒)

――優勝した率直な気持ちを教えて下さい

 自分が1年生の時にこの大会で優勝したのですごく思い入れのある大会でした。やはり勝つのは難しいなと思いましたが、優勝して最高の気分です。

――コーチとして初めての大会でしたが、コーチならではの難しさはありましたか

 練習試合では他大学を圧倒することはできていたのですけど、試合当日は緊張でなかなかうまくいきませんでした。全試合1点差の勝利ということで正直最後何があるか分からず、ずっとハラハラしていました。

――接戦が非常に多かったですが、選手にどういった指示をしていましたか

 どんなことがあっても自分を信じて自分たちのラクロスをすれば絶対に勝てると、常々言っていました。それもあって選手はみんな冷静だったのかなと思います。

――井原コーチから見て今年の1年生はどういう1年生ですか

 本当にみんなラクロスが大好きだというが第一印象です。オフの日も練習が終わった後もラクロスをしています。技術的なことを言うとシュートがみんなうまくて誰からでも点が取れるいいチームだと思います。

――最後に新人戦ウインターステージへの意気込みをお願いします

 新人戦はあと2大会あってそれに勝つと新人三冠でグランドスラムになります。自分たちはそこを目指しているので次のウインターも厳しい戦いになるとは思いますが1年生全体で勝てるように頑張りたいと思います。

MF井原幸輝学年キャプテン(商1=東京・早大学院)

――優勝した率直な気持ちを教えて下さい

 練習も完成度が高くできていなくて不安な部分もあったのですけど、先輩たちも午前中練習があったなか来て下さって。自分としては(優勝して)ほっとしていますし、チームとしてはすごく嬉しいです。

――早大勢が連覇をしている大会でやはりプレッシャーはありましたか

 個人的にはすごくありました。去年優勝して2大会はコロナ禍でなかったのですけどその前の社会人コーチの方々の代でも優勝されていて、早大は常勝軍団なのでプレッシャーもありました。予選から予選敗退は嫌だなと、色々不安やネガティブなことも考えたのですけど味方やコーチ陣が力になる声掛けをしてくださってそれで勝てたのかなと思います。

――学年キャプテンとしてチームをまとめる難しさはありましたか

 最初は自分で抱え込んでいることが多かったのですけど、副将2人に頼ったり一個上の学年キャプテンや4年生のキャプテンに意識していることを聞いたりして。合宿を経てチームとしてはまとまってきたかなという実感がありました。人数も多くて難しいこともありますが、一人一人がしっかりしていてみんなに助けられています。

――今日は全試合1点差の勝利でしたが、どういう気持ちでプレーされていましたか

 圧勝しなくてはいけないという思いが初めからあった中で、簡単にはいかないよと言われていたのですが本当にその通りだと思いました。最後の試合も同点だと優勝できないという状況でした。ただ合宿で1対1のメニューを1000本やるなどどこの大学よりもこだわってやってきた自信があったので、最後自信で勝ち切ることができました。

――最後に新人戦ウインターステージへの意気込みをお願いします

 入部当初から自分としては、グランドスラムを目標にしていて今日でひと段落しますが気を緩めることなく次は圧勝できるように1段階、2段階さらにあげて頑張りたいです。

AT吉田宗一郎(教1=東京・早実)

――優勝した今の率直な感想を教えて下さい

 とてもうれしいですが、それ以上にほっとしています。学年キャプテンが真面目でしっかりしている代で、練習中とかも厳しかったのですが、みんながキャプテンを勝たせたいという気持ちで頑張りました。

――試合に臨むに当たって意識したことはありますか

 4試合あるので一試合一試合、気持ちが途切れないように毎試合しっかり気持ちを切り替えて頑張ろうと思いました。

――試合ではゴールも多く決められていました。ゴールシーンを振り返っていかがですか

 自分は点を決めましたが、ディフェンスだったり、ゴーリーだったり他の選手たちがつないでくれたボールだったので、なんとしても決めようと思っていました。

――疲労が残る中で決勝リーグを迎えられたと思います

 最後はもうみんなガクガクでしたが、なんとか優勝しようという気持ちで頑張りました。

――これからに向けて意気込みをお願いします

 僕たち一年生の目標はあくまで新人戦3つ勝ってグランドスラムを達成することで、まだまだ気が抜けないのでこれからも頑張りたいと思います。