■大相撲初場所14日目(27日、東京・国技館) 関脇琴ノ若が2敗で並んでいた大関霧島を寄り切って12勝目。大関豊昇龍の休場で不戦勝となった横綱照ノ富士も2敗を保った。優勝は2敗の2人と、綱とりがかかる3敗の霧島に絞られた。関脇大栄翔、7連勝…

■大相撲初場所14日目(27日、東京・国技館)

 関脇琴ノ若が2敗で並んでいた大関霧島を寄り切って12勝目。大関豊昇龍の休場で不戦勝となった横綱照ノ富士も2敗を保った。優勝は2敗の2人と、綱とりがかかる3敗の霧島に絞られた。関脇大栄翔、7連勝の阿炎が、それぞれ勝ち越しを決めた。

■冷静さ保った琴ノ若

 立ち合い、2度の待った。つっかけたのは琴ノ若だった。大関霧島は涼しい顔。ただ、関脇も腹は据わっていた。「慌てないでいこうと」

 3度目で呼吸があった。相手ののどわを落ち着いて外し、いなしで崩す。後ろまわしをつかむと、一気に寄った。土俵上で大歓声に包まれた26歳は、小さくうなずいた。一瞬、興奮した顔を見せたが、すぐに平静を取り戻していた。

 14日目の朝、豊昇龍が休場。対戦相手の照ノ富士が不戦勝で12勝目を手にしたことで、この日の一番が持つ意味合いは、より明確になった。霧島を破らなければ、優勝の可能性は消えるからだ。

 だけではない。負ければ、大関昇進の目安とされる「直近3場所を三役で33勝」にも届かない。豊昇龍との大関戦が消滅するため、格上から勝利がないまま、今場所を終えることにもなっていた。

 まさにここが、絶対に負けられない大一番だった。

 大きな白星をつかんで戻った支度部屋。優勝争いについて問われると、琴ノ若はささやくように答えた。「明日の取組に集中しないと意味がない。それ(優勝)はあとからでいい」

 国技館を去った後、楽日の相手が平幕翔猿に決まった。結び前で星を伸ばし、一番あとの照ノ富士に重圧をかけたい。初の賜杯(しはい)獲得と大関昇進。最高のフィナーレを迎える可能性を残し、千秋楽を迎える。(松本龍三郎)

■負けて絶叫の霧島

 支度部屋へ戻る廊下で霧島が絶叫した。「ああ、くっそー」。琴ノ若に敗れ、横綱昇進が一歩遠のいただけにショックは隠せない。付け人が報道陣を制し、無言のまま帰路についた。ただ、千秋楽で2敗の琴ノ若が敗れ、さらに本割で2敗の照ノ富士を自身が倒せば、3敗で3力士が並び、優勝決定巴戦(ともえせん)に持ち込める。2場所連続優勝の可能性はまだ残っている。

■不戦勝、実は初めての照ノ富士

 照ノ富士は不戦勝で首位を維持する形になった。不戦勝は2011年5月に初土俵を踏んでから初めて。勝ち名乗りを受けて支度部屋に戻ると、「不戦敗がいっぱい(10回)あるから、1回くらいはいいんじゃないですか」と自嘲気味に笑った。休場明けの横綱は上り調子。9度目の優勝を狙って楽日に臨む。

 ○阿炎 7連勝で勝ち越し。昨年12月に急逝した師匠錣山親方(元関脇寺尾)への報告は「場所が終わってからですね。最後までしっかりやれと言われると思うので」。

 ●宝富士 幕内連続出場記録989回で歴代6位の36歳は、幕内残留に向けて痛い9敗目。「(現役は)やめないからね。また戻ってきて千回。そういう気持ちでがんばりたい」