京都府舞鶴市の児童や生徒たちが参加した初めてのレスリング大会が市内で開かれた。「舞鶴をレスリングのまちに」――。指導者や保護者、地元のライオンズクラブがそんな思いで開催をかなえ、選手たちが熱い戦いを繰り広げた。 「いけー!」「まわせ、まわ…

 京都府舞鶴市の児童や生徒たちが参加した初めてのレスリング大会が市内で開かれた。「舞鶴をレスリングのまちに」――。指導者や保護者、地元のライオンズクラブがそんな思いで開催をかなえ、選手たちが熱い戦いを繰り広げた。

 「いけー!」「まわせ、まわせ!」「我慢だ!」

 1月14日、舞鶴文化公園体育館のレスリング場。マット上でタックルを決めたり寝技をかけたりする選手に、他の選手や保護者から声援が飛び続けた。

 大会には舞鶴レスリングクラブで練習を重ねている小中高校生と年長児の計34人が出場した。体重や実力で八つのグループに分かれ、リーグ戦かトーナメント方式で勝敗を競った。

 「初めて大会で試合をする選手もいる。普段の練習とは違う緊張感で、みんな良い表情をしています」。クラブの監督で舞鶴市レスリング協会理事長の山田来哉さん(29)は顔をほころばせた。

 全43試合。熱戦が続き、予定を1時間オーバーしてすべての試合を終えた。

 小学生8人のトーナメントで優勝した市立朝来小学校1年の堂田葉生(どうだよう)さん(7)は「とても楽しかった。将来はオリンピックに出て、1番になりたい」と目を輝かせた。

 大会は市レスリング協会が主催し、舞鶴ライオンズクラブが後援した。近年、市出身の選手が国際大会でも活躍しており、「市内で大会を開いて一層盛り上げよう」と開催した。

 試合の進行を担ったり、審判を務めたりしたのは主に選手の保護者たちだ。子どもがレスリングを習い始めてから審判資格を取得した保護者も多いという。ほかにも試合の記録をつけたり、表彰状を作ったりと動き回っていた。

 選手と指導者、保護者、そして地域が手を握って開いた初の大会。市レスリング協会の元理事長で、現在は副会長を務める三村和人さん(63)は「地元でこうした大会が開けるのは大きな意義がある。トップ選手の育成と競技の普及に一層努力して、支援に恩返しをしていきたい」と取材に話した。(富田祥広)

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 舞鶴市とレスリングの深いつながりは、2015年の全国高校総体でレスリングの競技会場となったのがきっかけだ。

 開催に先駆けて、13年に市レスリング協会が設立された。女子の五輪メダリスト、伊調千春さんらを京都府京丹後市の高校で育ててきた三村さんが舞鶴市内の高校教諭に赴任し、協会理事長に就任。14年から子ども向けのレスリング教室でも指導を始めた。

 「当時、園児や小学校低学年だった子たちの中から良い選手が出てきた」と三村さん。日本オリンピック委員会(JOC)が有望な中高生を選抜して指導をするJOCエリートアカデミー(東京)には、舞鶴レスリングクラブ出身の女子選手2人が所属している。

 クラブのメンバーは現在約45人。東京五輪・パラリンピックを機に舞鶴市が21年に新設し、今回の大会会場になった常設のレスリング場で練習に励んでいる。

 現在は市内のスポーツクラブ館長を務める三村さんは「多くの子どもたちがレスリングに親しみ、オリンピックでメダルを取るような選手となり、いずれ指導者として舞鶴に戻ってくるようなサイクルが生まれれば」と話している。(富田祥広)