「THE ROAD RACE TOKYO TAMA(ザ ロードレース東京多摩)2023」が、東京2020オリンピック競技大会で自転車ロードレースの舞台となったコースと、1964年の東京五輪で使用されたコースを活用して設計した、都内の特設コー…

「THE ROAD RACE TOKYO TAMA(ザ ロードレース東京多摩)2023」が、東京2020オリンピック競技大会で自転車ロードレースの舞台となったコースと、1964年の東京五輪で使用されたコースを活用して設計した、都内の特設コースで12月3日に開催された。
都内の一般公道で本格的なロードレースが行われること自体がまず稀だが、交通規制のハードルが上がるスタートとフィニッシュが異なる「ワンウェイコース」であることも注目を集めた。

※前日の「チャレンジレース in 味スタ」レポートはこちらからご覧ください。



女子レースも公道を用いて開催された

男女ともに、同じコースをベースとするが、先にスタートする女子のコースは49.8km、男子は72.6kmだ。八王子市内の富士森公園をスタートした後、男子は八王子市内を周回するが、女子はそのまま東に向かう。町田市、多摩市、稲城市、府中市、小金井市、三鷹市を通り、フィニッシュは調布市の味の素スタジアム。激坂や、長い登坂はないが、アップダウンが続き、最後は下り基調となる。男子の獲得標高は865m、女子は566mとなった。




前日に味スタ内で開催された「スタジアムフェスタ」では、華やかに参加選手のプレゼンテーションが開催された



出走ボードにサインする



多くの観客がプレゼンテーションを見守った

この日の朝、スタート会場は気温5度。体感気温は極めて低かったにも関わらず、多くの観客が集まった。特に国内では、女子選手の公道レースは稀で、出走前にステージに立つ機会も極めて少ない。コメントする選手たちに温かい拍手が送られた。



スタートラインに並ぶ女子選手



晴天の下、特設コースを走る

まずは、女子からスタート。スタートからアタックが続く活発な展開となり、終始ペースは上がったままだった。



紅葉が残る美しいコース



仕掛ける渡部春雅(明治大学)

この日の本命は、今季シクロクロスレースでも調子の良さを見せており、このコースを熟知する渡部春雅(明治大学)。特に12月ということもあり、シクロクロスを走る選手たちは調子を保つ面でも、寒さ対策の面でも有利とみられた。
その渡部と、川口うらら(TEAM TATSUNO)、木下友梨菜(Bellmare Racing Team)が3名で抜け出したが、後続が合流し、7名の集団が形成された。この中には、ともにシクロクロスで活躍する大蔵こころ、西田唯(以上 早稲田大学)、ロード、MTBでも全日本のタイトルを持つ小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)、2021年のロードチャンピオン植竹海貴(Y’sRoad)ら、主要選手を含んでいた。



是政橋を渡る



大蔵こころ、西田唯(早稲田大学)を先頭に観客の声援を受けて走る

この集団のまま終盤を迎え、最終決戦は、7名でのゴールスプリントに。

ロード、シクロクロスだけでなくトラック競技でも活躍する渡部は、抜群の加速を見せ、片腕を天に突き上げ、トップでフィニッシュした。2位に植竹、3位に小林が入った。



渡部がスプリントに勝ち、初代女王に



表彰台に立った渡部、植竹、小林

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【結果】
THE ROAD RACE TOKYO TAMA 2023
女子エリート(49.8km)

1位/渡部春雅(明治大学)1時間16分27
2位/植竹海貴(Y’s Road)
3位/小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)
4位/エリザ・セルネ(High Ambition 2020 jp、オランダ)
5位/石田唯(早稲田大学)

( )内の国名は海外選手の国籍名

※男子エリートの結果は次ページへ→

女子に続いてスタートした男子エリートは、この日のゲストである団長安田さん、元スピードスケート日本代表の高木菜那さん、声優の井上和彦さん、元プロロードレーサーの今中大介さんを先頭にパレード走行からスタートした。



男子のパレード走行がスタート



リアルスタート直後から活発な動きが続く

リアルスタートが切られると、なんとしても抜け出したい選手たちが次々と決死のアタックを仕掛け、一気にペースが上がる。だが、抜け出しはなかなか決まらず、数名が先行しても、うまく歯車が合わず、吸収されてしまう。レースはしばらくハイペースの集団のまま推移した。
スタート後、30kmほどの地点で、全面交通規制を敷けず、危険回避のためにニュートラルとした区間があったのだが、この地点も大きな動きが決まらないまま迎えることになった。



決定的な動きが生まれないまま、ハイペースの展開が続く

折り返しの距離となるころ、ゆるんだ隙をついてトラック競技でも活躍する兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)と、今季の全日本チャンピオン山本大喜(JCLチーム右京)が先行した。リスクの高い実力者2名の抜け出しであったが、集団は捕らえることなく、目視できる程度に差をキープしながら走る。先頭2名は逃げ切りをかけ、協調しながら先頭を走った。



兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)と山本大喜(JCLチーム右京)が先行する



コース沿いには多くの観客が並び、声援を送った

終盤に入り、山本大喜が橋のフェンスに接触、転倒し先頭からは遅れてしまうアクシデントが発生した。兒島は単独での先行となったが、スピードをキープし、落ち着いてゴールを目指した。兒島と集団との差は、20秒程度。集団は兒島を追うが、兒島を逃がすため、スピードを抑えたいチームブリヂストンサイクリングの思惑もあり、思うように差が詰まらない。



山本大喜が遅れ、兒島は単独での先行となった

東京2020五輪日本代表の増田成幸(JCLチーム右京)が、しびれを切らせて単独で追走に入るが、差が詰まらない。兒島は先頭をキープしたまま、単独でホームストレートに入る。スプリンターたちを擁する集団も、全力で追い上げ、スプリンターたちが飛び出したが、わずかに及ばず、勝利を確信した兒島は何度も力強く両腕を突き上げながらフィニッシュ。



両腕を上げ、フィニッシュに飛び込む兒島

2位には、集団の先頭を取った岡本隼、3位には佐藤健(共に愛三工業レーシングチーム)が入った。



兒島、岡本、佐藤が表彰台に

兒島は初代王者となり、国内のロードレースの賞金としては、極めて大きい優勝賞金200万円を手にした。

スタート会場だけでなく、沿道やゴール地点には多くの観客が集まり、初開催ながらも大きな盛り上がりを見せた「THE ROAD RACE TOKYO TAMA2023」。初回は12月の開催となり、選手たちは好調をキープするのも難しかったことと思うが、参加選手たちのモチベーションは高く、見応えのあるレースが展開された。観戦に足を運んだ観客も、目の前で展開する迫力あるレースに、満足し、大きな関心も持ったようだった。

今回は、単発の競技レースではなく、東京都が自転車に関する様々なイベント等を総合的に進める「GRAND CYCLE TOKYO」の一環として開催され、この日までにも都内で多くの自転車スクールや関連イベントが実施されてきた。多くの都市問題の解決策になりうる自転車の普及や、安全利用にも大きな役割を果たす核になりうる大会であったと思う。また、高速で走る自転車を間近に見ることで、自転車の可能性に気づいた方も多かったことだろう。

今後は「THE ROAD RACE TOKYO」の名称を、「東京で開催される本格的なレース」として、ブランド化を図り、国内外に発信し、大会の認知度向上を目指すという。レースとしての格だけでなく、レースを通じ、日本の魅力を発信してくれるような国を代表する国際レースへと発展してくれることを期待したい。

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【結果】
THE ROAD RACE TOKYO TAMA 2023
男子エリート(72.6km)

1位/兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)1時間29分13秒
2位/岡本隼(愛三工業レーシングチーム)+3秒
3位/佐藤健(愛三工業レーシングチーム)
4位/松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)
5位/岡篤志(JCLチーム右京)

画像:GRAND CYCLE TOKYO(グランドサイクル東京)実行委員会