■大相撲初場所3日目(16日、東京・国技館) 大関貴景勝が突き合いの末に若元春に苦杯。横綱照ノ富士は阿炎の腕をうまく手繰って連敗を回避した。霧島と豊昇龍の両大関、関脇琴ノ若は3連勝。新入幕の2人は明暗。島津海は初日からの連勝を伸ばしたが、大…

■大相撲初場所3日目(16日、東京・国技館)

 大関貴景勝が突き合いの末に若元春に苦杯。横綱照ノ富士は阿炎の腕をうまく手繰って連敗を回避した。霧島と豊昇龍の両大関、関脇琴ノ若は3連勝。新入幕の2人は明暗。島津海は初日からの連勝を伸ばしたが、大の里は阿武咲の圧力に屈し初黒星。

■島津海、得意の両差しで寄り切る

 新入幕の島津海が得意の両差しで宝富士を寄り切り、初日から3連勝した。「自分を思い切り出せて、良い結果につながった」。27歳は未知の舞台でも臆することなく戦っている。

 本名は中園空(なかぞのそら)。古くから相撲が盛んな鹿児島・種子島で生まれ育った。柔道、バスケットボール、素潜りと好きなことをしてのびのび過ごした。

 相撲にさほどひかれなかった少年が入門するきっかけは、先代の師匠で同郷の元大関若嶋津がつくった。中学3年の時、知人を通じて招待された九州場所で大相撲を初観戦。幕内力士の力強さに「一目ぼれ」した。

 経験も実績もなかったが、母の猛反対を押し切って「俺はいく」と角界入りを決意。旅立ちの日、父親の信乃(しの)さんはフェリーに乗る息子が島に背を向けたままだったことを覚えている。「泣いているのを見られたくなかったんじゃないか」

 思いを貫き飛び込んだ世界で、身長175センチの小兵は出世に時間を要した。十両昇進まで10年、新入幕までにさらに2年近く。苦労の末に、憧れだった舞台にたどり着いた。

 種子島出身の新入幕は2001年九州場所の光法以来だ。島津海は場内放送で出身地を「西之表(にしのおもて)市」ではなく「種子島」とするようお願いしている。今場所からは先代師匠の現役時代と同じ深緑色の締め込みをつけた。いずれも「色んな人に地元を知ってほしい」から。勝ち星とともに届けたい思いがある。(大宮慎次朗)

■若元春、思い切りのよさ際立つ

 若元春が横綱に続き大関貴景勝を破った。立ち合いこそ押し込まれたが、相手が引いたところで一気に攻勢に出て、突き出した。昨年は全6場所で三役を務めたが、先場所は8場所ぶりに負け越し。平幕の今場所は思い切りのよさが際立つ。「負けたことで自分の相撲に向き合えた。大関相手でも、気持ちで負けず押し返すことができた」と話した。

 ○豊昇龍 豪快な投げでくせ者の宇良を下し3連勝。「悪くないと思いますよ、まわしも取れたし。一日一番です」

 ●熱海富士 対大関3連戦は3連敗。「先場所、上位に勝てないと言っていて、またこのざまですからね」と深いため息。

 ●阿炎 横綱を突き放して慌てさせたが、最後は右腕をつかまれる。「一日ずつよくなっている。攻めることはできました」

 ○琴ノ若 肩すかしで3連勝。決まり手に「狙った? たまたま。ただ流れの中で決まることもありえる」と笑顔。

 ○照ノ富士 連敗を免れ、「昨日は昨日、今日は今日なんで。15日間とり続けることが大事」。

 ○幕下・照強 阪神大震災の日に兵庫・淡路島で生まれた幕内経験者。石川県の被災者に思いをはせ、「相撲が励みや力になれるといい。被災地では話題もないし、みんなしんどいと思う。話題の一つになれば」。