夏季と冬季の両方のパラリンピックで、日本人として初めて金メダルを獲得した土田和歌子選手(49・ウィルレイズ)は、パリ大会で9回目の出場になります。数々の栄冠を勝ち取ってきた中で、「唯一頂点をとっていない」のがパラリンピック車いすマラソン。…

 夏季と冬季の両方のパラリンピックで、日本人として初めて金メダルを獲得した土田和歌子選手(49・ウィルレイズ)は、パリ大会で9回目の出場になります。数々の栄冠を勝ち取ってきた中で、「唯一頂点をとっていない」のがパラリンピック車いすマラソン。出場種目をマラソンに絞り、パリをめざしてトレーニングを続ける土田選手に今の思いを聞きました。

 ――1993年に競技を始めて30年が経ちました。土田さんがずっと走り続ける意味とは何でしょうか。

 障害を持ってからパラスポーツに出会いました。レクリエーションというリハビリの一環から競技志向に移ってきて、「もっと速くなりたい」「もっと強くなりたい」という思いが募り、その先にあったものがパラリンピックでした。

 大会ごとに課題が見えてきて、それを克服して次の舞台に立つ、そこで自分のパフォーマンスを発揮したいという強い思いで走り続けてきました。自分自身が続けてゆくことでパラリンピックの価値を高められるとも感じています。

 もうひとつは、パラリンピックの舞台で「よし、これでもう満足した、私は!」という結果が得られていないことも、今も走り続けている理由ですね。

 ――土田さんの著書やインタビューの中で「納得感」という言葉がたびたび出てきます。まだまだ納得感を自分の中で得られていないから、それを追い求めているという感じはありますか。

 競技レベルを高めてゆくことが重要で、まだ自分のなかで「可能性」をすごく感じています。車いす競技は道具と一体化して、初めて結果につながります。心と体と技術のバランスを整えてゆくこと。その三つを備えて初めて結果が出て、納得感というものにもつながっていくと思います。若い頃は心の部分が大きくて、根性論みたいなものが強く働いてやってこられました。技術の部分が進化してゆく中で、自分も今の時代に合わせた進化を続けてゆきたいですね。