【神奈川】第103回全国高校ラグビー大会は7日、花園ラグビー場(大阪府東大阪市)で決勝があり、県代表の桐蔭学園が東福岡を8―5で破り、3年ぶりの優勝を決めた。花園での優勝は、引き分けで両校優勝となった第90回大会、連覇を果たした第99回、…

 【神奈川】第103回全国高校ラグビー大会は7日、花園ラグビー場(大阪府東大阪市)で決勝があり、県代表の桐蔭学園が東福岡を8―5で破り、3年ぶりの優勝を決めた。花園での優勝は、引き分けで両校優勝となった第90回大会、連覇を果たした第99回、第100回大会に続き4度目。

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 桐蔭学園は前半13分、フルバック・吉田晃己選手(3年)のPGで先制。同24分にはウィング・田中健想選手(同)が、ゴール前で相手が落としたボールを素早く拾い上げ、タックルを振り切りトライ。8―0で折り返した。後半16分にはトライを決められ、3点差に詰め寄られたが、屈強なモールやスクラムで相手の反則を誘い、失点の危機を何度もしのいだ。最後は相手ボールを奪うジャッカルで試合を終わらせ、リードを守り切った。

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 伸びのあるロングパスを決めたかと思えば、今度はワンタッチで隣につなぐタップパス――。「継続ラグビー」を貫いた桐蔭学園の攻撃の起点には、スタンドオフ・萩井耀司選手(3年)がいた。

 大阪府出身。幼稚園でラグビーを始め、花園ラグビー場はなじみの場所。聖地でのプレーを夢見てきた。

 「日本一のスタンドオフになる」ことをめざした中学3年時、コロナ禍で公式戦や全国大会は軒並み中止に。実力を試す機会は奪われ、練習すらままならず、「一時期はラグビーへの意欲もなくなった」。

 だが、河川敷の橋桁を相手にひとりパス練習を繰り返すと、「日本一のスタンドオフ」への思いは強まった。母に「高3で大阪での決勝に戻ってくる」と誓い、「東の雄」の門をたたいた。

 1年時に同学年で唯一、花園を経験したが、2年時は県予選決勝で敗退。自分以外の選手は「花園初心者」で挑む状況に重圧もあった。昨年10月の国体で、桐蔭学園主体の神奈川選抜が、東福岡主体の福岡選抜に17―38で敗れると、「こんなプレーするならラグビーをやめた方がいい」と、あえて厳しい言葉を口にし、奮起を促した。

 この日、試合終了のホイッスルが鳴ると、拳を突き上げ、飛び上がるように仲間たちと固く抱き合った。「日本一になったんや」。藤原秀之監督も「桐蔭のDNAを彼が引き継いでくれた」とたたえた。

 3年前、挑戦の機会すらなかった「日本一のスタンドオフ」。地元を離れ、仲間を得てたどり着けた。「最高のチームメートとラグビーができてうれしい」(堅島敢太郎)

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 チーム作りは失意のどん底から始まった。8連覇がかかった昨季の県予選決勝で、東海大相模に13―14で惜敗し、花園出場を逃した。「桐蔭はこのまま衰退する」。選手らの耳にはそんな言葉すら届いた。

 藤原秀之監督は「基本スキルと思考の部分が不足した」と振り返る。コロナ禍で練習時間や試合経験が不足し、県予選決勝では1点を追う試合終了間際に、ゴール前まで攻め込んでも、ドロップゴールで3点を狙う選択ができなかった。

 新チーム発足後は、ボールキャッチやランなどの基礎部分の練習を徹底。成果はすぐに現れ、昨年3月の全国選抜大会では、決勝で東福岡を34―19で破り、4年ぶり4回目の優勝。11月の県予選決勝では、東海大相模に59―0と大勝し、雪辱を果たした。

 この日も、前半13分に選手たちで選択したPGが勝敗を分けるなど、磨いてきた判断力が優勝の原動力となった。

■桐蔭学園の今大会の成績

2回戦  92―0 松山聖陵(愛媛)

3回戦  83―0 光泉カトリック(滋賀)

準々決勝 34―24 東海大大阪仰星(大阪第3)

準決勝  25―0 大阪桐蔭(大阪第2)

決勝   8―5 東福岡(福岡)