バレーボール 全日本高校選手権準々決勝 就実(岡山)2 25―20 0金蘭会(大阪)         25―19 この10年間で春高を3度制覇した金蘭会が、準々決勝で姿を消した。 敗戦後、うつむき、涙をこぼすチームメートたち。その中で一人…

 バレーボール 全日本高校選手権準々決勝

 就実(岡山)2 25―20 0金蘭会(大阪)

         25―19

 この10年間で春高を3度制覇した金蘭会が、準々決勝で姿を消した。

 敗戦後、うつむき、涙をこぼすチームメートたち。その中で一人、仲間たちの背中をさすってはげます選手の姿があった。

 3年生の上村杏菜だ。

 身長168センチとアタッカーとしては小柄ながら、180センチ級の選手に負けない最高到達点301センチを誇る。

 強豪で1年時からスタメンをつかみ、2年時は得点源として高校総体(インターハイ)の8年ぶり優勝に貢献した。

 しかし、最終学年は「しんどい」1年だった。

 昨年6月、練習中に左すねに「燃えるような痛み」を感じた。病院に行くと、骨折していたことが分かった。

 手術のため、1カ月の入院。夏のインターハイはベンチ入りしたものの出場できず、チームは初戦で敗れた。準優勝した国体は登録メンバーを外れた。

 6歳でバレーを始めて以来、コートに立てず裏方に回るのは初めてのことだった。

 「みんな、こんなに走り回ってくれていたんだ」

 見えないところで仲間に支えられたことを知った。それから応援団長を買って出たり、スコアを分析したり。裏方の役目を積極的にやった。

 春高は最終学年として臨む、唯一にして最後の全国大会となった。

 チームは大会前に主力選手をけがで欠き、万全ではない。だからこそ、大会前にこう誓った。

 「これまで迷惑ばかりかけてきた。恩返しする舞台は春高しかない。コートに立てない選手の思いも一緒にプレーする」

 準々決勝の相手は、一昨年に2連覇を達成している強豪の就実だった。

 チームは序盤から相手の堅守に苦しみ、第1セットを奪われた。焦りのせいか、無理やり打ったスパイクをブロックに阻まれる場面が増えた。

 そんな中、ボールを間一髪で拾うレシーブで孤軍奮闘していたのが上村だった。

 「自分にトスを持ってきて」と、セッターに声をかけた。

 第2セット、スコアは11―16。頭は冷静だった。

 スパイクは対角線方向に打つ得意な「クロス」だけでなく、相手を見てまっすぐ打つ「ストレート」を織り交ぜた。2連続でスパイクを決め、チームの4連続得点を演出。だが、反撃は及ばなかった。

 「やりきった」。試合後は晴れやかな表情で言った。

 昨年の春高は負けて涙を流すことしかできなかったが、この日は後輩たちを気遣う余裕があった。

 卒業後はVリーグ女子1部のPFUブルーキャッツ(石川県かほく市)への入団が内定している。

 「小さくても打てる、かっこいい選手をめざしたい。大きい選手だけがバレーできるわけじゃないってことを証明したい」

 心身ともに成長し、笑顔で体育館を去った。(大宮慎次朗)