(30日、第103回全国高校ラグビー大会2回戦、天理《奈良》27―15関大北陽《大阪第1》) じわりと、濃紺の固まりが押し寄せた。前半23分。天理はゴール前10メートルのラインアウトからモールをつくる。そのまま押し込み、最後はフランカー清…
(30日、第103回全国高校ラグビー大会2回戦、天理《奈良》27―15関大北陽《大阪第1》)
じわりと、濃紺の固まりが押し寄せた。前半23分。天理はゴール前10メートルのラインアウトからモールをつくる。そのまま押し込み、最後はフランカー清水将太郎(2年)がゴール左隅へ同点トライを決めた。
「よし、いけるぞ」。選手たちの声が飛び交った。ボールを投げ入れた主将でフッカーの内田涼(3年)は「あれで僕たちの武器が通用するとわかった」。15人の狙いは定まった。
後半、一気に攻める。3分にゴール前7メートルから、14分は15メートルをラインアウトモールで押し切った。どちらも最後に持ち出してトライを決めたフランカー内田旬(2年)は誇らしげだ。「めっちゃ練習したので自信がありました」
今春、花園に14回出場する県内のライバル・御所実にモールで圧倒されて敗れた。その夜、寮の一室で涼と旬の兄弟を中心に選手たちの輪ができた。「やっぱりモールは大事やな」。チームは自主性を掲げる。選手たちだけで立てる練習メニューに、「モール練習」が毎日加わった。夏の暑い日も冬の雨の日も欠かさなかった。気づけば最大の強みを手に入れた。
花園をかけた11月の県大会決勝。その御所実からモールでトライを奪い雪辱した。そして、大舞台でもFW平均体重で2キロ上回るシードの関大北陽の防御を切り開いた。4トライのうち三つをモールから奪った。
劣勢でも自分たちで打開策を見つけ、実践する。旬は得意げに言った。「コツは低い体勢で全員が同じ方向に押すこと」。10月から指揮を執る王子拓也監督(28)は「特に僕が何かすることはない。子どもたちは頼もしい。ラグビーを楽しんでいますよね」。めざすはノーシードからの頂点。地道に築いた新たな武器は、簡単には崩れない。(山口裕起)