全日本選手権で3位に入った島田麻央「すばらしい選手がたくさんいるなかで3位をとれたのはすごくうれしいんですけど、自分の演技に関しては悔しい部分が何個かありました。悔しい気持ちとうれしい気持ちと、両方あった試合になりました」 全日本選手権で1…



全日本選手権で3位に入った島田麻央

「すばらしい選手がたくさんいるなかで3位をとれたのはすごくうれしいんですけど、自分の演技に関しては悔しい部分が何個かありました。悔しい気持ちとうれしい気持ちと、両方あった試合になりました」

 全日本選手権で15歳の島田麻央(木下アカデミー)はショートプログラム(SP)とフリーの合計を202.18点とし、昨年と同じ3位。坂本花織と千葉百音に続く順位だった。

 昨季ジュニアに移行し、それ以来、全日本ジュニア選手権は3連覇中、ジュニアカテゴリーの国際大会と2度のグランプリ(GP)ファイナルも含めて全勝中の島田。シニア勢と戦う唯一の大会である全日本で目指していたのは自己最高得点(SP73.78点/フリー152.76点/合計224.54点)の更新だった。

【ジャンプ失敗に悔しさしかない】

 SPではジュニアのルール上では跳べないトリクルアクセルをプログラムに組み込めて、演技時間が少し長くなるフリーはジュニアにはないステップシークエンスがある。大技に加えて、要素が増えるため、自己ベスト更新の見込みは十分にあたった。

 だが12月22日のSPで、その目標を果たせなかった。

 冒頭のトリプルアクセルは、直前の練習でも決めていたように、しっかり跳んで1.71点の加点をもらうジャンプとする。「リスクはあっても、挑戦する立場だと思うので挑戦したかった」と島田。しかし、最後のジャンプだった3回転ルッツ+3回転トーループは、いつもよりやや速いスピードで入り、ルッツの回転軸が斜めになり、アンダーローテーションで転倒。連続ジャンプにできなかった。

 全日本ジュニアとジュニアGPファイナルと2戦続けてSPでミスをしていただけに、「今回こそ」と強い思いがあったが、順調に来たからこそ最後は力が入った。

 ルッツの転倒がありながら、そのあとのスピンとステップはきっちりとこなした。とくに最後のコンビネーションスピンはいつもより速い回転で少し長く回った。「失敗した分、スピンやステップで少しでも多く点をとりたいと思った」。最後に向く方向を間違えたが、彼女の悔しさと気迫が伝わってきた。

 SPの得点は65.23点で7位。合計200点台にのせる可能性は残したが、島田は「正直、トリプルアクセルを入れるし、自己最高得点は更新したいと思っていたので得点を聞いた時は悔しさしかなかったです」と言う。

【足が震えてしまう感じがして...】

「ジュニアGPファイナルもショートでミスをしてから(フリーで)切り替えられたので、そこは自信につながっている。目指していた表彰台は遠くなったと思うので、逆にプラスにとらえて、もう何もかかってないと思ってやりたいです」

 そして、12月24日のフリー。6分間練習までは平常心を保っていたという。だが、本番は違った。

「自分の出番になってリンクに入った時にいきなり緊張してしまいました。心臓の緊張っていうより、足が震えてしまう感じがして。去年の全日本も同じような緊張感があったけど、全日本ジュニアやジュニアGPファイナルとは少し違った。シニアの選手に少しでも近づきたいという思いもあったけど、それより自分がいい演技をしたかったし、フリーでは大技以外のジャンプを絶対に決めなければと思って......緊張しました」

 最初のトリプルアクセルは、SPと同じように確実に決めた。そのあとの4回転トーループはアンダーローテーションで転倒したものの、それは想定内。SPでミスをした次の3回転ルッツ+3回転トーループは1.52点の加点のジャンプとし、流れに乗ったように見えた。

 しかし、丁寧に入った後半の3回転ループは、ジュニアGPファイナルと同じく1回転になってしまった。

「前の試合で失敗するまではあまり気にせず跳んでいたけど、失敗してからやっぱり気にしてしまうようになっていて、ちょっと力が入ってしまったのかなと思います」

 島田はこう振り返り、2大会連続で同じミスをしたことを悔やむ。

 フリーの結果は136.95点。ミスを重ねながらも合計を202.18点にして底力を示した島田は、最終組で滑った同じジュニアの上薗恋奈を1.47点抑えて表彰台は死守した。

【「自分をほめる」女王・坂本花織の金言】

 11月の全日本ジュニアまでは、2本そろえることを目標とするトリプルアクセルと4回転トーループの大技でミスが出ても、他の5本のジャンプは確実に決める安定感があった。だが、ジュニアGPファイナル、全日本と2試合続けてミスが出てしまった。

 4回転トーループのあとは、ミスを抑えようという気持ちが強くなったのか、慎重すぎたのかもしれない。それもあってか全体的にジュニアの試合よりも少し淡泊な滑りになったのは否めない。演技構成点は国内大会では国際試合より高めに出る傾向があるが、今回の島田は、プレゼンテーションとスケーティングスキルはジュニアGPファイナルより低く、3要素の合計も1点以上、低い得点になっていた。

「やっぱり全日本という舞台は、他の試合と違う緊張感が出てくる。それに勝てなかったかなって思うので、次は勝てるようにしたいです」

 15歳で全日本の緊張感を体感できるのは貴重だ。次に控える大舞台は、2024年1月のユース五輪と連覇を狙う2月下旬開幕の世界ジュニア選手権。そこでは同世代の選手たちと競り合うなかで、「大技ジャンプ2本をそろえる」目標に専念できるはずだ。

 試合後の記者会見で坂本が、「トップを走り続けるために必要なメンタリティは?」との質問にこう答えた。

「完璧な演技を求め続けるけど、たまには『まあいいか』っていうのも必要かな。あまりに完璧を求めすぎるとどうしても力が入りすぎて、体が思うように動かなかったりする。自分が目指しているところまで行けなかったらダメだと、自分に厳しくしすぎないようにしている。たとえば、なかなかノーミスができなかったのにある日、急にノーミスができるようになったら、『自分はすごい』という感じで自分自身を褒めて伸ばす。今シーズンはずっとそうやってきています」

 世界女王の秘訣を聞いた島田は、「自分は失敗してしまったらすごく落ち込んだりしてしまうので、次にノーミスができたら自分を褒めてみようかなと思います」と感想を述べた。

 余裕をもった気持ちでジュニアを戦っていけば、来年の全日本では目標に近づけるかもしれない。