奈良県と奈良市は25日、2031年に県内で開催予定の国民スポーツ大会(国スポ、現・国民体育大会)の陸上競技会場を同市のロートフィールド奈良(鴻ノ池陸上競技場)に決めたと発表した。また、県立奈良養護学校(同市七条町)を別の場所に移転すること…

 奈良県と奈良市は25日、2031年に県内で開催予定の国民スポーツ大会(国スポ、現・国民体育大会)の陸上競技会場を同市のロートフィールド奈良(鴻ノ池陸上競技場)に決めたと発表した。また、県立奈良養護学校(同市七条町)を別の場所に移転することも明らかにした。

 山下真知事と仲川げん・奈良市長がこの日、県庁で会見した。山下知事は県立の競技場を新設しないと表明。バリアフリー化など国スポ開催に伴うロートの改修費のうち、2分の1(上限1億円)を市に助成する。ただ、全体の費用については「まだ概算していない」という。開会式の会場も「未定」と説明した。

 ロートは全国規模の大会が開催できる県内唯一の第1種競技場で、日本陸上競技連盟の公認を維持するための管理費は市が長年にわたって負担してきた。県は今後も、日常的なメンテナンスにかかる管理費に関与しないという。

 山下知事は就任後の事業見直しで、橿原市に整備予定だった競技場の建設計画を凍結。代替案として、1984年の国体会場だったロートを改修して用いるか、競技場をもつ大阪市に打診する選択肢を示した。一方の仲川市長は「県南部の振興を阻害する」などと難色を示してきたが、この日の会見で「毎回新しい施設を建てるのは現実的ではない」と譲歩した。

 また、老朽化が指摘されてきた県立奈良養護学校の移転も決まった。現地建て替えはせず、別に建設地を探す。移転後は「特別支援学校」として機能を拡充し、奈良市内にある県立奈良東・奈良西の両養護学校で増えた知的障害のある児童生徒を受け入れ、各校で適正数の教育を目指す。

 県立奈良養護学校は築42年が経ち、多様化する児童生徒、大型化の車いすや支援機器に対応する設備改修が急務とされてきた。山下知事は移転計画は県が主体で行い、跡地活用は奈良市と協議すると説明。「児童生徒の行き場所が一時的になくなるため、現地建て替えは難しい。来年度から候補地の選定を始めたい」と述べた。

 同校の移転は、奈良市にとって大きな意味を持つ。市はごみ焼却施設・環境清美工場(同市左京5丁目)を七条地区に移転する計画を進めるが、地元住民の反対で難航している。候補地の近くに同校があることは地元住民の反対理由の柱だった。今回の県との合意で、仲川市長は懸案の一つをクリアした格好だ。

 一方で陸上競技場を確保した県とは利害が一致することから、報道陣が会見で関連性をただした。山下知事は「県立養護学校の移転は教育政策として実施するもの」、仲川市長は「県と市の課題解決を進めるなかでタイミングと状況が一致した」とかわし、互いに県と市の連携を強調した。(富岡万葉)