竹俣 紅連載:『紅色の左馬』第10回スポルティーバとフジテレビの競馬中継番組『みんなのKEIBA』とのコラボ企画、竹俣紅アナウンサーの連載『紅色の左馬』。今回は、ジャパンCを最後に引退したイクイノックスについて振り返ってもらいつつ、"グラン…



竹俣 紅連載:『紅色の左馬』第10回

スポルティーバとフジテレビの競馬中継番組『みんなのKEIBA』とのコラボ企画、竹俣紅アナウンサーの連載『紅色の左馬』。今回は、ジャパンCを最後に引退したイクイノックスについて振り返ってもらいつつ、"グランプリ"有馬記念で注目している馬について語ってもらった――。



 GIジャパンCでの勝利の直後、クリストフ・ルメール騎手の目にあふれた涙を見た時、「やっぱり、これが最後なのかな......」と想像はしていましたが、その決定をあらめて知らされると、頭のなかをいろんな思いが巡りました。

 GI天皇賞・秋から中3週と、これまでで最も詰まった間隔での出走。しかも、前走では"世界レコード"を記録。その反動も心配されていたなか、斤量で優位な三冠牝馬・リバティアイランドをも寄せつけず、GⅠ6連勝の偉業を成し遂げたイクイノックス。このジャパンCをラストレースとして、現役引退が発表されました。

 もっと走る姿を見ていたい。でも、健康なままで後世に夢をつないでいってほしい――私の心境は複雑でした。

 多大なプレッシャーを強いられたなか、見事に結果を出したことでホッとした部分もあると思いますが、ルメール騎手もこの馬と歩んできた道のりを思い出し、感極まっていたのかもしれません。

「イクイノックスっていう馬が強いらしいけど、何がすごい馬なの?」

 この秋、普段は競馬を見ていないけれど、イクイノックスをニュースで見たという人たちから、度々聞かれました。

 私のような初心者が気軽に答えていい質問ではないと思いますが、私が知ってほしいなと思うイクイノックスのすごさは「競馬という勝負をわかっている」というところです。

 レース映像を見直すと、鞍上がはっきりと合図を出さなくても、加速すべきタイミングで、自分で加速しているように見えますよね。ここで他の馬たちを抜かないと勝てない、ここでスピードを落としたら勝てない......そういったことをイクイノックス自身が考えているようにも見えます。だからこそ、ルメール騎手の「イクイノックスはポニーみたい。誰でも乗れます」という愛情の詰まったほめ言葉が生まれたのではないでしょうか。

 もちろん、どんな位置につけても勝てるというのもイクイノックスの強さですよね。3歳時のイクイノックスには差し馬というイメージがありましたが、今年3月の海外GIドバイシーマクラシックでは先頭でレースを進め、そのまま逃げきって圧勝してしまいました。

 あの時の私は、4月から『みんなのKEIBA』を担当することに決まって競馬を勉強し始めたばかりで、ドバイで勝つなんてすごい! とは思っても、イクイノックスの逃げというものがどれだけ異例なのか、どれだけすごいことが起きたのか、わかっていませんでした。あらためてドバイシーマクラシックの映像を見ると、この時がイクイノックスの競馬の幅が広がるきっかけになったのかもしれないとも思います。

 私自身、ラップタイムや位置取りの重要さがわかるようになって、イクイノックスのすごさがよりわかるようになりました。私もイクイノックスとともに、少しは成長できたのかな......そんなことを感じています。

 競馬番組を担当し始めた年にこの馬と出会えたことは、本当に幸運でした。この貴重な時間を、きっと10年後、20年後に思い出すことでしょう。

 競走馬としての引退には寂しい気持ちがありつつ、種牡馬になるこれからは産駒の誕生が楽しみでもあり......。イクイノックス産駒がデビューする時には、込み上げてくるものがあるんだろうなと、今からもうウルウルしています。

 引退と言えば、この馬のことも話したいですね。パンサラッサです。

 海外GIのサウジCを逃げきって勝った時のパンサラッサの映像は、競馬初心者の私に「こんな馬が日本にいるの!?」と大きな衝撃を与えてくれました。ただこの馬は、圧巻の大逃げを打った昨年の天皇賞・秋を最後に、ずっと海外レースを使われてきたうえに、春には右前脚繋靱帯炎を発症。私は彼の走りを過去のレース映像で見ることはできても、リアルタイムで見ることができずにいました。

 ですから、ジャパンCに出走してくると聞いた時は、タイトルホルダーとの競演ということもあってワクワクドキドキ。レース後、パンサラッサも引退が発表され、これが現役最後のレースとなったわけですが、念願の大逃げを目のあたりにした感想は、「かっこいい!」のひと言です。

 たいていのレースでは、集団がひとかたまりになって4コーナーを回ってくるのに、パンサラッサだけは一頭だけで悠々と回ってくる。その姿のかっこよさと言ったら、もうたまりませんでした。

 結局12着に敗れはしましたが、パンサラッサがいたからこそイクイノックスのすごさがさらに伝わってきたと思います。このレースのMVPをあげられるとしたら、私はイクイノックスだけではなく、パンサラッサにもあげたいですね。

 大逃げのセンスは、産駒にも伝わるのでしょうか。逆に、産駒からすごい差し馬が出てきたら、それはそれで面白いのですけれど(笑)。イクイノックス同様、こちらの子どもたちも楽しみにしています。

 さて今週は、いよいよ1年を締めくくるグランプリレース、GI有馬記念です。

 昨年の優勝馬、イクイノックスの名前こそありませんが、イクイノックスがいなかったら、今誰が最強なのかを決めようじゃないか! というような豪華決戦となりました。

 まず注目は、スターズオンアースです。ジャパンCでは、大外からリバティアイランドと1馬身差の3着。リバティアイランドより斤量が2kg重かったことを踏まえると、ただ者ではない強さを感じます。

 加えて、今回はルメール騎手とのコンビが復活。中山・芝2500mのコース適性が未知ですが、不利を超えてくる能力と根性のある馬のように思えるので、かなり期待しています。

 それから、ダービー馬のタスティエーラは、どこの競馬場で走っても安定した強さがありますよね。今回が古馬との初対戦になるのがどうかというところだと思いますが、立ち回りのうまさがトリッキーなコース形態に合うかもしれません。

 もちろん、有馬記念が引退レースとなるタイトルホルダーにも、特大の注目をしています。

 ジャパンCでは、大逃げを打ったパンサラッサの2番手につけ、そこから粘り込んでの5着。勝ったイクイノックスを筆頭に上位勢が強すぎたことを考えれば、この馬も相当強い競馬をしたと思います。GI天皇賞・春での競走中止は心配しましたが、その後、復調しているのは間違いありません。

 東京より中山のほうが合っているでしょうし、これがタイトルホルダーを見られる最後のレース。しっかり応援したいです。

 そして、忘れてはいけないのが、私の"推し"であるスルーセブンシーズです。

「もしかして勝っちゃう?」と夢を見た海外GIの凱旋門賞(4着)からおよそ3カ月。フランス帰りなので疲れの心配はありますが、ドリームジャーニー産駒ですからコース適性はありそうです。まずは無事に走ってくれることを祈りつつ、初のGI勝利に期待ですね。

 気になる穴馬は、ライラックです。個人的に、この馬は前々走のGII府中牝馬Sから走りが変わったと思っていて、すでにGI2着の経験はあるものの、舞台が合えばさらに活躍する日がくるのではないかと思っている一頭です。

 1800mや2200m、2500mなどのいわゆる非根幹距離を走ってきていますし、オルフェーヴル産駒というのも波乱を巻き起こす可能性があると思っています。

 とにもかくにも、私にとっては『みんなのKEIBA』のMCになって初めての有馬記念。いずれの馬が勝つにせよ、目の前で繰り広げられる名勝負を存分に堪能しようと思っています。


Profile
竹俣 紅(たけまた・べに)
1998年6月27日生まれ。東京都出身。2021年フジテレビ入社。
趣味:おいしいおそば屋さん巡り

 ウォーキング ガチャピン
モットー:元気に、地道に、前向きに

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