日本のトライアスロンのトップ選手、ニナー賢治さん(30)は来夏のパリ五輪出場が有力視されている。宇都宮市民であり、市内を練習拠点にしている。朝日新聞のインタビューに応じ、「五輪でのメダル獲得をめざす」と意気込みを語った。 トライアスロンは…

 日本のトライアスロンのトップ選手、ニナー賢治さん(30)は来夏のパリ五輪出場が有力視されている。宇都宮市民であり、市内を練習拠点にしている。朝日新聞のインタビューに応じ、「五輪でのメダル獲得をめざす」と意気込みを語った。

 トライアスロンは水泳(スイム)、自転車ロードレース(バイク)、長距離走(ラン)の3種目を連続して行う耐久競技だ。

 ――9月のアジア大会、10月の日本選手権で優勝した。アジアでは無敵だが、今季の戦いをどう振り返るか

 両大会で優勝できたのは良かった。今年のシーズンは確実にステップアップできた。

 世界最高峰のワールドトライアスロンシリーズ(3~9月の計7戦)では、5月の横浜の試合で11位。さらに10位以内が2回あった。過去にないことだ。

 特に6月にあったカナダのモントリオールの試合は10位だったが、ランの最後まで集団での優勝争いに加われた。表彰台が見えたレースだった。

 ――世界トップレベルとの差はどこか

 違いは長距離走(ラン)だ。走る際の効率がまだ良くない。少ないエネルギー、低い心拍数で動き、走りにブレーキがかからないようにしたい。克服すれば、世界とは互角に戦えると思う。

 ――来年7月のパリ五輪では何を目標に置くか

 メダルを取ることだ。これまでに世界のトップ10~15くらいを経験している選手はメダルを取れる能力があるのではないか。ランの改善ができれば、可能性はさらに高まる。

 五輪までは欧州にいることが多い。東京五輪金メダルのクリスティアン・ブルンメンフェルト(ノルウェー)らと練習を積む。

 来年3月は、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビでワールドトライアスロンシリーズの初戦、4月は広島の廿日市でアジア選手権がある。五輪出場につながるポイントを得て、このあたりで五輪出場が決まる可能性がある。5月に横浜であるワールドトライアスロンシリーズの2戦目までには遅くとも五輪出場を決めたい。

 ――トライアスロンの魅力はどこか

 トライアスロンに出会ったのは13歳。三つの種目をバランス良くのばす必要がある面白いスポーツだと思った。たとえば、スイムで頑張り筋肉がつきすぎるとランができなくなる。3種目ともプロフェッショナルな状態に持っていくのが難しいが、そこが魅力でもある。

 考えすぎると、目の前の判断を一瞬でできなくなる。頭を使っているようで使っていない部分もある。消耗していく自分の体の状態を正確に把握することが大事で、分かっていればペースをコントロールできる。

 ――最終的な目標は

 競技者としてはパリ五輪でメダルを取ること。スポーツは純粋なもので、やったことは結果として出てくる。苦しいことも成長につながる。スポーツの経験は自分の人生の今後にもいきる。

 友人がほぼいない孤独の中で、難しい環境で生活することなど、全てが自分の人生の重要な学びの機会だと思っている。(山下龍一)

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 ニナー賢治さん オーストラリア・パース生まれ。父がオーストラリア、母は東京・吉祥寺の出身。2021年4月に日本国籍を取得。同年の東京五輪は個人14位、混合リレー13位だった。日本食ではすしとウナギが好き。過酷な練習でやせるのが怖いといい、1日4千~5千キロカロリーは摂取しているという。