父ステイゴールド、母オリエンタルアート、母の父メジロマックイーン。父の「ゴールド」、母の「アート」から連想されたオルフェーヴルという馬名には、フランス語で『金細工師』という意味がある。そんな同馬は、10年前のきょう、2013年12月22…

 父ステイゴールド、母オリエンタルアート、母の父メジロマックイーン。父の「ゴールド」、母の「アート」から連想されたオルフェーヴルという馬名には、フランス語で『金細工師』という意味がある。そんな同馬は、10年前のきょう、2013年12月22日の有馬記念を最後にターフを去った。せまる年の瀬の大一番を前に、彼の蹄跡と引退レースを振り返ってみよう。

 クラシック三冠制覇、GI・6勝、凱旋門賞2年連続2着――。どこを切り取っても輝かしい戦績に加え、レースぶりと型破りな立ち振る舞いで人気を集めたオルフェーヴル。引退年となった13年も大阪杯1着→フォワ賞(仏G2)1着→凱旋門賞(仏G1)2着と、まったく勢いにかげりはなかった。むしろ人気や知名度、何より強さもいまだ絶頂期。“Orfevre”の名前は日本国内にとどまらず、世界中にとどろき渡っていたが、13年の有馬記念を最後に引退、種牡馬入りが決まる。

■色褪せぬ金色の走り

 同じステイゴールド産駒のゴールドシップや、同世代の実力馬ウインバリアシオン、スタミナ自慢のアドマイヤラクティなどが出走。そんな中、オルフェーヴルは単勝1.6倍の圧倒的な支持を集めた。北風が吹き付けて気温が10℃にも届かず、底冷えする師走の中山競馬場。ファン投票1位の「81,198」の期待を背負い、詰めかけた10万人を超えるファンの声援を受け、最後のゲートが開く。

 オルフェーヴルはスタート後すぐに控え、ゴールドシップの背後に身をひそめる。13番手あたりのポジションに落ち着き、ホームストレッチを通過。ファンからの大声援を受け、グッと気合が入ったようにも見えた。1コーナーを抜け、最初の1000mは60秒ちょっとの平均ペース。レースはたんたんとした流れで進み、池添謙一騎手はがっちり手綱を抑えて仕掛けどころをうかがう。

 動きがあったのは3コーナー付近。目の前にいたゴールドシップがじわじわ上昇を開始し、馬群は一団になっていく。オルフェーヴルも同馬と連れるように進出すると、そのままマクリきって4角先頭という強気の競馬を展開。さすがに早すぎるのではないかと、驚いたファンもいたことだろう。だが、当時の騎乗について「あれもね、仕掛けてないんだよ」と池添騎手。「合図を送ったのは4コーナーを回りきってから」と後年、netkeibaのコラムで語っている。

 直線はどんどん後続が離れていく。最後は流す余裕も見せつつの8馬身差Vにファンは惜しみない大歓声と拍手を贈った。池添騎手は「まさにエンジンが違う感じだったからね。そのぶんこっちは大変だったけど(苦笑)」と同馬を振り返る。最強の走りで有終の美を飾った“金色伝説”。その走りは10年が経ったきょうも、決して色褪せることはない。種牡馬としても一流の成績を残している彼は、今年の有馬記念に2頭の産駒…アイアンバローズとライラックを送り込む。