東日本大震災前に毎年、駅伝大会が開かれていた福島県大熊町で、震災後初めて駅伝大会が開かれた。各地から集まった82チーム計約320人の選手たちが、町内を駆け巡った。 大熊町では1989年ごろから町内を巡る「大熊駅伝」が毎年冬に開催されてきた…

 東日本大震災前に毎年、駅伝大会が開かれていた福島県大熊町で、震災後初めて駅伝大会が開かれた。各地から集まった82チーム計約320人の選手たちが、町内を駆け巡った。

 大熊町では1989年ごろから町内を巡る「大熊駅伝」が毎年冬に開催されてきた。ただ、原発事故後は全町避難を余儀なくされ、大会も中止になった。

 そんな中、郡山市に避難している病院職員、渡辺隆弘さん(42)が、町に駅伝大会の復活を提案。震災前のコースは再開発工事が進むため、町役場などがある大川原地区をめぐる1周2キロ(小学生は1・5キロ)のコースで、一般と小学生の部に分かれて「おおくま駅伝2023」として開催が決まった。

 時折、雪が降る中、全チームが完走した。震災前も参加していた須賀川市の公務員、加藤将士さん(39)は友人とチームを組んだ。「震災前は町民の方々の手作りを感じることができ、大好きな大会だった。また、この大熊で走ることができうれしかった」と振り返った。

 レース前には、箱根駅伝の山登り5区で活躍し、「山の神」と呼ばれた旧小高町(現南相馬市)出身の今井正人選手(現トヨタ自動車九州)から寄せられたメッセージが紹介された。小学生の頃、初めて走った駅伝が大熊駅伝で、「この大会で駅伝の面白さを味わえたことが今の私の競技につながっています。久しぶりに大会を開催できることをうれしく思います」。

 渡辺さんは「大熊にこれだけ多くの人が集まり、走ってくれたのは夢のよう。来年以降も開催していきたい」と話した。(滝口信之)