今季も、冬の自転車競技「シクロクロス」のシーズンが始まっている。シクロクロスとは、ドロップハンドルでありながらオフロードも走れるシクロクロスバイクに乗り、オフロードを中心としたサーキットを走るレース。コースの一部には「自転車に乗ったまま乗り…

今季も、冬の自転車競技「シクロクロス」のシーズンが始まっている。
シクロクロスとは、ドロップハンドルでありながらオフロードも走れるシクロクロスバイクに乗り、オフロードを中心としたサーキットを走るレース。コースの一部には「自転車に乗ったまま乗り越えられない障害物」を含めることとなっており、バイクを降り、担いで飛び越えたり、階段を登ったりと、普通の自転車競技では見られないアクションが含まる。そのため、コースによっては、泥や砂などの難関セクションが設けられることから、非常にドラマチックな展開となり、観るものも、走るものも楽しめるレースとして、人気が高まっている。非常に強度が高く、原則的に水分等の補給もなく行うこともあり、最長のエリート男子でも60分と競技時間が定められている。



コース内には上り階段などのセクションも配置される

国内では、各地に競技団体が活動しており、シーズン中は毎週末各地でレースが開催されている。注目レースとしては、全日本選手権の他、UCI(世界自転車競技連合)認定レース、AJOCC(一般社団法人日本シクロクロス競技主催者協会)が選定し、上位選手にポイントを与え、ランキングを定めるJCXシリーズ対象レース、JCF(日本自転車競技連盟)シクロクロスシリーズが挙げられるが、UCIレースなどの主要レースは複数の設定を兼ねている。
今年もJCXシリーズ初戦は10月上旬に土浦で開催され、副島達海(大阪産業大学)と石田唯が男女のそれぞれの勝者となった。シクロクロスに臨む選手たちの多くは、グリーンシーズンはロードやMTBでレースを転戦しており、シーズン終了後にシクロクロスリーグへの参戦を始める形となる。
続くJCX第2戦は、10月29日に宮城県亘理郡亘理町の「鳥の海公園」特設コースで開催された「”亘理町長杯”わたりラウンド」だ。これは、JCFシクロクロスシリーズとしても認定されている。



防潮堤を生かしテクニカルなコースが設計された

昨年から、全日本選手権への出場資格の獲得が厳しくなっていたのだが、今季は規定がさらに厳しくなった。付与対象レース数は昨年より増えたものの、JCFポイントを獲得し、さらにランキングでも80位以内に入らねば参戦することができない。このわたりラウンドは、ランキング対象レースとなっており、全日本出場をかけて、多くの選手が戦いを繰り広げることになった。
この日、使用されるコースは、2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた後、整備され、開園した公園に設定されている。防潮堤に沿って配置され、防潮堤を利用したキャンバー(斜面)セクションは長く、折り返しや、登り返しも含まれる。多様なスキルが求められるコーナーが設定され、さらに、砂利、芝、階段、シケインと多くの要素が盛り込まれ、テクニックと脚力、様々な能力が試されるコースと言っていいだろう。



地形を生かして設計されたテクニカルなコース

男子の最上位カテゴリーであるME1(男子エリート1)には、全日本チャンピオンである織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が今季初参戦。他の注目選手としては、アメリカで開催されたワールドカップ初戦にも参戦した鈴木来人(OenbyESU-ICV)が挙げられた。



エリート男子がスタート

好スタートを切ったのは積田連(SNEL CYCLOCROSS TEAM)。先頭でコーナーを回り、先行した。先行する選手たちの中で、8名ほどの先頭集団が形成された。



序盤は混戦状態に



先頭を行く鈴木来人(OenbyESU-ICV)と加藤健悟(臼杵レーシング)

混戦の中、鈴木来人が先頭に現れた。そのすぐ後ろには織田がぴったりとついていた。2周目に入るころには、全日本チャンピオンジャージ姿の織田が抜きんでた実力を発揮し、自然と先頭に上がって来た。ここに食らいつきたい鈴木だが、細かいミスもあり、じわじわと差が開いてしまう。



順調に追い上げた織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)が先頭に立った

織田は、独走状態に入り、淡々と走り続けた。単独3位に浮上した加藤健悟(臼杵レーシング)も必死で追い上げるが、先頭2名に追いつくことはできなかった。



キャンバー(斜面)も軽快に駆け抜ける織田



シケイン(障害物)をバニーホップで跳び、先行する織田を追う鈴木

織田は後続の選手をまったく寄せ付けぬまま、悠々と独走でフィニッシュ。2位に鈴木、3位に加藤が入った。



織田は悠々と独走でフィニッシュし、今季初優勝を決めた



織田、鈴木、加藤の表彰台

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【結果】
JCX第2戦 わたりラウンド エリート男子1(ME1)

1位/織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)55:39.4
2位/鈴木来人(OenbyESU-ICV)+0:39
3位/加藤健悟(臼杵レーシング)+1:33
4位/斎藤朋寛(RIDELIFE GIANT)+1:59
5位/松田賢太郎(SUPACAZ)+2:50

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女子の最上位カテゴリーであるWE1(女子エリート1)では、全日本チャンピオン経験を持つ渡部春雅(明治大学)や、世界選手権に日本代表で出場した大蔵こころ(早稲田大学)、小田恵利花(SNEL CYCLOCROSS TEAM)などが参戦した。



勢いよくスタートした女子WE1クラス

勢いのあるスタートを決め、ホールショットを決めたのは小田。だが、冷静にラインを読んで仕掛けた大蔵が追い上げる。ここに渡部が迫り、大蔵をかわすと、先頭に立った。



独走態勢に入った渡部春雅(明治大学)

渡部はそのまま独走態勢に入り、快調に周回を重ねていく。
このまま優勝かと思われたが、レース終盤にまさかのパンクに見舞われてしまう。ピットに駆け込み、バイク交換を行うが、先頭は大蔵に奪われてしまっていた。



大蔵こころ(早稲田大学)が先行

渡部は受け取ったスペアバイクで猛烈な追い上げを始める。渡部は見事、大蔵をとらえ、再度トップへと躍り出た。



猛追し、大蔵をとらえた渡部

渡部はこのまま後続を振り切り、単独でフィニッシュラインへ飛び込むと、今シーズン初勝利を飾った。大蔵が2位、小田が3位に入っている。



独走で優勝を決め、笑顔の渡部



笑顔で表彰を受ける優勝した渡部、2位の大蔵、3位の小田

今季はUCIレースが野辺山と琵琶湖の2戦のみに限られ、少々寂しいところだが、国内のレースは増え、参加人口も増えている。ロード等のシーズンが終わると、トップカテゴリーにも、実力のあるレーサーが参戦を始めるだろう。今季はどのようなシーズンになるか、楽しみだ。

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【結果】
JCX第2戦 わたりラウンド エリート女子(WE1)

1位/渡部春雅(明治大学)39:56
2位/大蔵こころ(早稲田大学)+0:19
3位/小田恵利花(SNEL CYCLOCROSS TEAM)+3:36

画像:Satoshi ODA