兵庫県西宮市の洋菓子メーカーに勤めるパティシエが、ケーキ作りとスケートの「二刀流」に挑戦している。松林佑倭(ゆい)さん(20)。10月にスケートの世界大会に初めて臨み、これまでに銅メダル2個を獲得。「メダルを取って、改めて世界トップとの差…

 兵庫県西宮市の洋菓子メーカーに勤めるパティシエが、ケーキ作りとスケートの「二刀流」に挑戦している。松林佑倭(ゆい)さん(20)。10月にスケートの世界大会に初めて臨み、これまでに銅メダル2個を獲得。「メダルを取って、改めて世界トップとの差を感じた」。スケートもケーキ作りも、さらなる高みを目指す。

 神戸市灘区出身。5歳でスケートを始め、「スピード感と、最後まで誰が勝つかわからないドキドキ感」に魅せられて、スピードスケート・ショートトラックの道に入った。

 高校を卒業後、洋菓子メーカー「アンリ・シャルパンティエ」でアルバイトをしながら競技を続け、今年4月には正社員に。現在、アンリを運営する「シュゼット・ホールディングス(HD)」の氷上競技部に所属する。

 10月にカナダ・モントリオールであったワールドカップでは男子5千メートルリレーで銅メダルを獲得。11月にカナダ・ラバルであった四大陸選手権では男子千メートルで銅メダルに輝いた。

 県スケート連盟の鈴木信子副理事長は松林さんについて「才能あふれる選手。特に追い抜く技術は世界レベル」と評価する。2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪での活躍も「期待してもらっていい」という。

 一方のケーキ作りは、アンリでアルバイトをするまで経験はまったくなかった。最初は鍋を焦がすなど失敗も多かったが、持ち前の生真面目さで勉強を重ね、今では職場でも頼りにされる存在だ。

 店の人気商品「W(ダブル)チーズケーキ」を主に担当。多い日は一日500個以上作る。「仕事をいかに効率よく進めるかを絶えず考えていた。それは練習メニューの組み立てなど、スケートにも生かされています」

 氷上競技部の社員は7~3月は仕事を離れて競技に専念する。松林さんも12月は海外遠征が続く。

 クリスマスシーズンを迎え、会社は繁忙期。松林さんもアルバイト時代は年中ケーキを作っていて、この時期の忙しさを忘れてはいない。

 競技に集中できる環境に感謝し、「応援してくれている仕事仲間の期待に応えたい。良い結果を出すのはもちろん、自分にしかできないレースをみせたい」。

 残り数周で一気に仕掛けて逆転――。そんな会心のレースでメダルを持ち帰り、お世話になった人たちに恩返しするつもりだ。(真常法彦)

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 〈シュゼットHD氷上競技部〉地域スポーツの活性化と雇用を通した選手支援をめざし、2018年に創部。松林佑倭選手のほか、島根くるみ選手、昨年現役引退した小山陸コーチの3人が所属。本拠はひょうご西宮アイスアリーナ(兵庫県西宮市)。