フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナル(12月7〜10日)がいよいよ開幕する。12月8日にショートプログラム(SP)、9日フリーが行なわれる女子シングルは、日本勢3選手が出場する。 その試合をリードするのは、世界選手権連覇中の坂…

 フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナル(12月7〜10日)がいよいよ開幕する。12月8日にショートプログラム(SP)、9日フリーが行なわれる女子シングルは、日本勢3選手が出場する。

 その試合をリードするのは、世界選手権連覇中の坂本花織(シスメックス)になるだろう。昨季から頭角を表わし始めていた20歳の住吉りをん(オリエンタルバイオ/明大)と、18歳の吉田陽菜(木下アカデミー)も出場権を獲得している。

【坂本花織は悲願のGP女王となれるか】

 坂本は昨季、2022年北京五輪3位、世界選手権優勝の達成感でモチベーションを見失っていた。昨季のGPファイナルはSP1位発進をしながらも、フリーで総合5位まで順位を落とす惨敗。優勝はチームメイトの三原舞依(シスメックス)が手にしたが、坂本にとって確実と思われるなかで優勝を逃した悔しさが残った。



10月のジャパンカップの坂本花織。GPファイナル初勝利を目指す

 その悔しさをきっかけに気持ちを立て直し、坂本は全日本選手権と世界選手権の連覇につなげている。坂本は北京五輪シーズンのあと、五輪メダリストと世界女王にまで育て上げてくれたブノワ・リショー氏から振付師を変更した。「ずっと競技を続けられるわけではない。新しい世界に挑戦したい」(坂本)との思いからだった。

 新SPの『Baby, God Bless You』は今年生まれた甥(おい)と姪(めい)にインスピレーションを受けた。

「新しい命に関わるのは今年しかないと思い、テレビドラマの『コウノドリ』の曲が最初に頭に浮かび、これしかないと思った」と坂本。競技用プログラムで初めて自分でリクエストした曲だった。またフリーは、初挑戦のジャズ。「大人っぽい感じで、今までにはなかったジャンル」と話す。

 滑り出しは得点を伸ばせず、数多くの大会に出場することでプログラムを完成させてきた。8月のげんさんサマーカップでシーズンインすると、9月のオータムクラシックのあとは10月のジャパンカップにも出場。その次の全兵庫選手権で222.39点を出し、早い仕上がりを見せていた。

 そして10月下旬のGPシリーズ・スケートカナダでは、今季世界最高の226.13点を獲得して優勝。存在感を見せつけた。GPシリーズ2戦目、11月のフィンランド大会はフリーでジャンプの回転不足やタイムバイオレーションの減点もあって205.21点と得点を伸ばせなかったが2勝目をあげている。

 GPファイナルは、フィンランド大会と同じ中2週での戦いになるが、シリーズ2戦と違って時差の影響が少ない中国・北京開催。前回取り損ねたタイトル獲得への気持ちも強いはずだ。

【坂本を追いかけるヘンドリックス】

 坂本を追いかけるのは、昨季世界選手権3位のルナ・ヘンドリックス(ベルギー)。昨年のGPファイナルはフリーで転倒などのミスが出て3位だったが、安定感が持ち味の選手だ。今季のスケートアメリカでは、自己ベストの221.28点を出して優勝している。

 中国杯では合計201.49点にとどまり、203点台に乗せた吉田と渡辺倫果(TOKIOインカラミ/法大)にフリーで逆転されて3位だったが、大舞台の経験も豊富なだけに、立て直してくるだろう。

 続くイザボー・レヴィト(アメリカ)は、自己最高こそ215.74点だが、演技構成点は少しずつ伸びてきており、坂本やヘンドリクスとさほど差がない状態になっている。ジャンプの回転不足などのミスがなければ、昨季の全米選手権で非公認記録ながら223.33点を出しているように、高得点が期待される。

 ただしレヴィトの今季最高得点は、スケートアメリカの208.15点。坂本とヘンドリックスの競り合いが220点台中盤から後半になれば届かない可能性もある。

【吉田陽菜、住吉りをんにも好機あり】

 そんななかで面白い存在になるのが、中国杯で203.97点を出して初優勝を果たした吉田。自己最高は、2022年ジュニアGPシリーズ・イタリア杯の208.31点だ。

 今季の中国杯では、SPはトリプルアクセルで転倒したもの、それ以外のジャンプはノーミス。フリーも成長を見せた。トリプルアクセルに挑戦しながら、同時に他のジャンプの安定感を高めてきたことで高得点獲得の可能性が出てきている。

 冒頭のトリプルアクセルを成功させることが最優先事項だが、今季最高が64.65点にとどまるSPの得点を上げられるようになれば、その勢いで210点台に乗せることもあり得る。レヴィトが足踏みする状況になれば、表彰台圏内に入れそうだ。

 また住吉は今季、フランス杯のフリーで成功した4回転トーループを再び成功させられるかが焦点。フランス杯のフリーは、1位の136.04点を獲得して、SP5位から総合3位まで順位を上げた。フランス杯の合計197.76点が自己最高だが、190.20点で2位に入ったフィンランド大会では、SP自己最高の68.65点を出している。

 住吉は、ここにきて200点台に乗せられる勢いを見せてきているだけに、GPファイナルでトップを追いかける存在になってほしい。海外勢では17歳のニーナ・ピンザローネ(ベルギー)も出場する。

 接戦が期待される。