日本体育大学の注目選手を紹介。今回はライフセービング競技の田澤優夏選手。 ・名前 / 田澤 優夏 ・身長 / 152cm ・所属 / 日本体育大学 ライフセービング部 ・出身校 / 日本体育大学柏高等学校 ▶︎経歴 ・大学1年 ライ…

日本体育大学の注目選手を紹介。今回はライフセービング競技の田澤優夏選手。

・名前 / 田澤 優夏
・身長 / 152cm
・所属 / 日本体育大学 ライフセービング部
・出身校 / 日本体育大学柏高等学校

▶︎経歴

・大学1年 ライフセービングに出会う
・BLS(一次救急処置)とウォーターセーフティーの資格を取得
・第48回全日本ライフセービング選手権大会 出場
・第37回全日本学生ライフセービング選手権大会 ビーチリレー4位

▶︎ライフセービングとは

『社会貢献』と『競技』の2つの軸があり、数あるスポーツの中で唯一『技術を高めた先に救う命がある』競技。
ライフセーバーは日々、海で命を救うためのトレーニングに励み、その体力や技術を競い合う「救助を想定した種目」が特徴である。
大会では、海、プール、SERC(レスキューの大会)に分かれており、他人に勝つことではなく、最も迅速で確実に溺者を救助することを目指すスポーツとされている。
競技種目は実際の救助さながらだが、子供から大人まで楽しめる生涯スポーツとしても発展しており、国際大会も開催。日本ではまだ一般的ではないものの、第2のオリンピックと呼ばれている「ワールドゲームズ」の正式種目に採用されており、世界的な認知度は高いスポーツだ。

▶︎ライフセービングとの思いがけない出会い

小さい頃から体を動かすことが好きだった彼女は3歳の頃に器械体操を始めた。小学校にあがり、当時器械体操で活躍していた内村航平選手が日体大に通っていることから、日体大に入学することが目標となった。
2022年4月、かねてからの目標だった日本体育大学への入学を果たした。そして友人と行った部活動説明会でライフセービングと運命の出会いを果たす。
当時のライフセービング部が作成した部活動紹介動画の”あなたは愛する人を救えますか”という言葉に深く心を打たれたそうだ。「大好きなスポーツを通して人の役に立てるようになりたい、自分の周りにいる沢山の愛する人を救えるようになりたいと思いました」と、未経験でありながら、強豪の日本体育大学ライフセービング部に入部を決意した当時の思いを語った。
また、「日体大がこんなにも強豪だとは知らなかったです」と、笑みを浮かべる場面も見られた。

▶︎競技の魅力は語り尽くせない

ライフセービング競技を始めて約2年、「沢山ありすぎて、永遠に語れそうなくらいですが」と、前置きを起きつつ、「世代を問わず幅広い人と交流を持てること、人として大きく成長させてくれるところがライフセービングの魅力です。レスキューや競技のスキルだけではなく人として、ライフセーバーとして大切な事を自分達に気づかせてくれます」
日体大ライフセービング部は、毎年夏になるとそれぞれ担当する海で監視活動を行い、学生だけではなく社会人のOB、OGと共に監視活動に携わっている。幅広い人と関わりを持つことで、自分達では決して気づくことのできない事を毎日感じ、様々な事を吸収して自分自身が日々成長している事を感じるそうだ。

▶︎怪我を乗り越え

3歳から高校卒業まで器械体操をやっていて、大きな衝撃が何回も加わっていた田澤選手の足首は、すでに限界を迎えていた。昨年、砂浜での練習中に両足首の靭帯を断裂。手術をしなければ、ライフセービングだけではなくスポーツを続けられないと医師に告げられた。将来的にもライフセービングに携わっていきたいと考えた田澤選手は、手術を受けることを選んだ。
「練習ができなくなることや、復帰後の自分を想像した時の不安や焦りは正直とってもありました」と当時の思いを語る。「ですが同期のみんなの存在や学校の友達、先輩の温かすぎる言葉や支えのおかげで、目の前にあることをしっかり頑張ろうと思い、リハビリに励むことが出来ました」と、支えてくれた周りの仲間の大切さについて語った。
また、手術を終え退院後、同期とご飯に行った際「優夏おかえりーー!」とサプライズをしてくれたことが本当に嬉しかったと笑顔で語る。
最後には、「辛いことはありますが、私の周りには本当に沢山の人がいてくれるので乗り越えられない壁はなさそうです」と話した。

▶︎ライフセービング界の課題

近年、全国的にライフセーバーが減少している。ライフセーバーがいる海といない海では、安全性が大きく変わり、ライフセーバーの減少は水辺の事故増加の大きな原因となってしまう。

日本のライフセーバーの1人である彼女は「魅力をもっともっと発信していけたらいいなと思います。なのでこのような機会をもらえたことは本当に有り難いです」と話した。

田澤選手も大学に入ってライフセービングを知った。まだまだ認知度が低いのが現状で、ライフセービングがもっと身近になると事故の件数も減ってくると田澤選手は語る。

「まずは、ビーチフラッグスや泳ぎなど簡単に出来る事から少しずつ興味を持ってもらえるといいなと思います。どんな人でも、取り組むことができる活動で、人それぞれのライフセービングという形がある事を知ってもらえたらいいですね。ライフセーバーを増やす事も重要ですが、他に私達ができることは、遊びに来てくれるお客様に水辺で遊ぶ時の注意事項や安全な遊び方など、少しでも事故を防ぐことが出来る知識を広めていくことも重要だと感じています」

▶︎将来の夢

「大学を卒業したら、オーストラリアに行きたいなと思っています。オーストラリアはライフセービングの発祥の地でもあるため、ライフセービングの技術や環境など実際に触れて沢山勉強したいです」と海外に行きたいという夢を語った。「国境を越えて、この競技と関わってみたい」彼女のライフセービングに対する熱い思いは計り知れないものだ。
「妥協をしない強い気持ちと、人への思いやり。競技・レスキュー・ライフセービングを常に学び続ける姿勢を大切にし、自分のライフセービングを見つけたいです」
まだまだ彼女の成長に期待したい。
 

(取材・文:市原 舞)