なでしこジャパンが戦う「トーナメント・オブ・ネイションズ」の第2戦が30日(現地時間)にサンディエゴ(アメリカ)で行なわれ、日本はオーストラリアに2-4で完敗を喫した。指揮官から高評価を受ける2試合2得点の籾木結花 初戦のブラジル戦か…

 なでしこジャパンが戦う「トーナメント・オブ・ネイションズ」の第2戦が30日(現地時間)にサンディエゴ(アメリカ)で行なわれ、日本はオーストラリアに2-4で完敗を喫した。



指揮官から高評価を受ける2試合2得点の籾木結花

 初戦のブラジル戦から中2日。飛行機移動を挟んでの厳しい日程で迎えた第2戦だった。高倉麻子監督は、最終戦(中3日)のアメリカ戦へ向けてのターンオーバーと、初招集組の実戦での力を見極めるため、7名を入れ替えた。だが、経験値の差が思った以上に試合に影響を及ぼす結果になった。

 リオデジャネイロオリンピック後、大きな世代交代がなかったオーストラリアは、今大会も招集メンバーの3分の2が大舞台の経験者たちだ。元々、サイド攻撃とDF裏への縦パスというシンプルな攻撃スタイルではあるが、そこにスピードとテクニックが加われば、大変な脅威となる。同じくAFC(アジアサッカー連盟)に身を置く日本としては、世界大会出場権をめぐって、必ず倒さなければならない相手でもある。

 第2戦の日本はかつてないほどチャレンジ色の強いメンバー構成だった。ゴールを守るのは池田咲紀子(浦和L)、最終ラインは高倉監督就任後に招集された市瀬菜々(仙台L)、高木ひかり(ノジマステラ)、北川ひかる(浦和L)と初招集の坂本理保(AC長野)というフレッシュな面々。ボランチは猶本光(浦和L)と隅田凛(日テレ・ベレーザ)のコンビ。右サイドハーフにはキャプテンを任された中島依美(INAC神戸)、左サイドハーフには中里優(日テレ・ベレーザ)、2トップは初戦同様、横山久美(AC長野)と田中美南(日テレ・ベレーザ)が入った。

 試合は初戦で課題となった決定力不足を解消するために、並々ならぬ意気込みで臨む攻撃陣の気迫が、開始後すぐさまゴールを呼ぶ。横山の蹴る左コーナーからつないで、最後は田中が押し込んで得た先制点は開始6分という早い時間帯に生まれた。

 しかし、ここからがマズかった。5分後に右サイドを破られ、サマンサ・カーにゴールを許すと、流れは一気にオーストラリアへ。その後も日本のミス絡みで再三ピンチを招き、前半のうちにカーにハットトリックを決められてしまう。後半にはPKを献上し、4失点目。ロスタイムに籾木結花(日テレ・ベレーザ)が一矢報いるも、すでに時間は残されていなかった。

 想像以上に乱れてしまったのは最終ラインだ。冷静に相手と対峙できるはずの坂本のイージーなパスミス、鋭い判断に定評のある市瀬が、空中でボールにヘディングできず引き起こしたカウンターからの失点など、バタつく守備を立て直そうとすればするほど、混乱は深まり、その歪みに引きずられるように中盤もズレていく。FW陣が待ち構える前線の裏を突くパスは全く出なくなってしまった。1失点目は仕方がないにしても、2失点目以降は防ぐ手はあっただけに、悔やんでも悔やみきれない大量失点となった。

 チームの熟成度からすれば、当然の結果かもしれないが、このスコアの差はそれだけではない。確かに日本の技術は高いレベルにある。しかし、オーストラリアはシンプルな攻撃だからこそ、ゴールに向かうための技術を身につけている。オーストラリアの1点目のチャンスを作ったヘイリー・ラソのファーストタッチには、日本とオーストラリアの決定的な差が顕著に表れていた。

 彼女が右サイドで最終ラインからのロングフィードを受けた際、走りながら右足のインサイドでボールを侵入経路の延長線上にスピードを保ったまま送り出し、ゴールをアシストするクロスにつなげるのだが、ラソのケアに入っていた北川を一発で置き去りにしたそのワンタッチが決まった時点で、もう日本の失点は免れなかった。こうしたスピードを落とさずファーストタッチでフェイクも兼ねてしまうプレーは、本来であれば日本が十八番にすべき類(たぐい)のものだ。

 ポイントは”動きながら”ということ。日本のパスは受けるときも離すときも、かなりの確率で足元で止めてしまうため、単調なリズムに陥りやすい。今大会でそこを意識していたのが籾木だ。ここまで、いずれも途中出場ながら2得点を挙げている。

「トントンじゃなくて、トトンのリズムでボールを動かすんです」――この数カ月、なでしこジャパンで揉まれながら、体得した流れを生み出す籾木流の秘訣である。

 実際に、彼女がそのリズムで攻撃に絡むとき、”動きながら”受け取り、2タッチほどでボールを手放している。そこからさらに一歩バージョンアップしたのがこの日のロスタイムのゴールだった。

「ブラジル戦では、2つ目のプレーでボールを奪われたんです。だから(オーストラリア戦では)ダイレクトでのパス出しやシュートを意識しようと。ミナ(田中)からボールが流れてきたとき、日本だったら2タッチ目でシュートをしたと思います。でも、ここはダイレクトに行かないと今後も勝負できないぞって」(籾木)

 そのシュートはDFに当たってゴールとなるのだが、2タッチ目に入っていたら、完全にクリアされていただろう。試合の中で少しずつ対応を変えながら着実にゴールに結びつけている籾木に「体は小さいが、テクニックもあり、戦術理解(能力)も高い」と指揮官も高評価だ。

 大量失点の流れの中でも、それだけで終わらせない、したたかさが今のなでしこたちには必要だ。”経験”とは、ただキャップを重ねるだけでは積み上げることができない。試合前、試合後にできることは最大限に力を尽くす。試合中に修正していくチャレンジをする。そこに必ず”経験”が生まれる。アメリカとの最終戦でどのような”経験”の積み上げ方をするのか。最後の一戦が重要となることは間違いない。