実力のパを3連覇し、人気も急上昇。オリックスが、球界での存在感を強めている。なぜ、バファローズは「常勝軍団」に変われたのか。 在阪球団といえば、甲子園球場(兵庫県西宮市)を本拠とする阪神。そんな地域にあって、強いオリックスの人気が高まって…
実力のパを3連覇し、人気も急上昇。オリックスが、球界での存在感を強めている。なぜ、バファローズは「常勝軍団」に変われたのか。
在阪球団といえば、甲子園球場(兵庫県西宮市)を本拠とする阪神。そんな地域にあって、強いオリックスの人気が高まっている。西宮球場(同)をフランチャイズにした阪急時代には想像もつかなかったほどだ。
今季の主催試合の来場者数は、ソフトバンクの253万5061人に次ぐリーグ2位の194万7453人。グリーンスタジアム神戸(同神戸市、現ほっともっと神戸)を拠点に、「がんばろうKOBE」を掲げて、リーグ2連覇を遂げた1996年の179万6千人を上回り、球団史上最多を記録した。
2006年から通算15年にわたって所属する39歳の平野佳寿は「(登板すると観客が)目に見えて多い。マウンドに上がるときも『頑張れよ』という声が聞こえるし、すごくありがたい」と喜ぶ。
総立ちのファンが、応援曲に合わせてタオルを両手で広げたり、縮めたり。上下左右に振ってその場で踊るなど、フランチャイズ球場である京セラドーム大阪(大阪市西区)の外野席は、近鉄時代から続くユニークなスタイルで盛り上がる。
近年、特に目立つのが女性ファンの姿だ。球団によると、19年は来場者数に占める女性の割合が約25%だったが、23年は40%に迫った。なかでも、女性客のうち20代は前年比約190%だったという。
かつてオリックスはファン獲得に苦心した。
朴賛浩、イ・スンヨプと韓国スター選手を獲得、球団公式サイトにハングルの翻訳機能を導入するなどした「韓流路線」。「ゆるキャラ」ブーム最盛期には、球団マスコットのバファローベルの“萌(も)えっぷり”で訴求を図ったことも。
だが、どれも効果が長くは続かなかった。
転機は、チームが前年まで5年連続のBクラスに沈み、観客動員も伸び悩んでいた14年のことだった。「カープ女子」に対抗するかのように、女性ファンをターゲットにした「Bsオリ姫」企画を開始。女性来場者にかわいらしい色合いのユニホームを贈ったり、選手との食事会を開催したり。女性ファンクラブ会員数は急激に増えた。
チーム強化を目的とした高校生重視のドラフト戦略も、背景で相乗効果を生んでいるのだろう。イチ推し選手への投票など「タレント化戦略」は、野球への関心が低い層の支持も得ることにつながった。
多くの企画を主導してきた後藤俊一・広報宣伝部長は「去年よりいいものを、今までよりいいものを、とやってきた。今年は野球要素をゼロにして、大きく振り切ったのが良かったのかもしれない」と振り返る。
山本由伸や山崎颯一郎ら11人が「クール系」と「キュート系」で二つのユニットを結成。そのアイドルさながらのメイクや衣装姿のグッズ売り場に長蛇の列ができた。選手がお笑い芸人のようなしぐさを見せるポスターもSNSで大反響を呼んだ。
ペンライトや選手の顔が入ったうちわを手に、ライブ感覚のような試合観戦。選手に頭をなでられたかのような演出も実施する。こうしたライトな雰囲気づくりも新しいファンの獲得を後押ししている。
宮内義彦・元オーナーがこう口にしたことがある。
「関西を代表するチームになるという目標に向かって努力している。最終的には、満員の京セラドームの中で(選手たちに)プレーしてほしい」
その願いが結実した2023年シーズンだった。(高橋健人)