海外15カ国を含む188人が出場した19日の第42回大分国際車いすマラソン。障害が軽いクラスではマルセル・フグ選手(37)=スイス=が5連覇、障害が重いクラス(T51)では、ピーター・ドゥ・プレア選手(43)=南アフリカ=が、7連覇する強…

 海外15カ国を含む188人が出場した19日の第42回大分国際車いすマラソン。障害が軽いクラスではマルセル・フグ選手(37)=スイス=が5連覇、障害が重いクラス(T51)では、ピーター・ドゥ・プレア選手(43)=南アフリカ=が、7連覇する強さを見せた。一方で、かつて大会を沸かせたレジェンドランナーは大会を楽しみ、自らの目標に向かって練習を積んできた一般ランナーたちも、それぞれの思いで「OITA」を駆け抜けた。(高嶋健、倉富竜太)

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 フグ選手は4キロ地点から集団を抜け出し独走状態に入り、2位に6分余りの差を付けてゴールした。フグ選手が2年前の第40回記念大会で更新した世界記録(1時間17分47秒)を上回るペースで後続を引き離したが、世界記録更新にはわずかに及ばなかった。

 レース数日前に風邪を引いたというフグ選手。ゴール後の取材でも、時折せき込みながら応対した。

 「スピードが出しやすいコースで良かった。不安だったが、風邪の影響はなく、優勝することができほっとしている」と話した。

 そのうえで「沿道からの声援が大きくうれしかった。まずは少し休んで、来年は世界記録の更新をめざす」と力強く語った。

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 大会10連覇を含む14回の優勝を誇るレジェンド、ハインツ・フライ選手(65)=スイス=が4年ぶりに大分を走り、1時間53分11秒のタイムでマラソン総合30位に入った。

 東京パラリンピックでは、自転車競技(ハンドサイクル)で銀メダルを獲得するなど活躍を見せたが、車いすのレーサーに乗るのは久しぶりだったという。それでも、大分県の笹原広喜選手(49)の後ろにぴったり付けたり、前を走ったりしてレースを楽しんでいた。

 レース後は「大分の街を観光するつもりで走ろうと思っていたが、素晴らしいマラソン日和に思わずレースをしてしまったよ」と笑顔を見せた。

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 T51で優勝したプレア選手は、2時間31分07秒でゴールするとゴールで待ち構えていた妻子と抱き合いながら喜びを分かち合った。「私がレースに参加できるのは、家族の支えがあるから。とても感謝している」

 プレア選手は今大会に特別な思いがあった。今年4月、元世界記録保持者で車いすマラソンの恩師でもあるハインリッヒ・クーベールさん(ドイツ)が亡くなった。クーベールさんは大分の大会に参加する度に、車いすマラソンの魅力を伝える教室を開催。重い障害がある人に「自分たちもスポーツができるんだ」との思いを伝えたという。

 プレア選手も競技を始めた頃、ドイツで指導を受けた。「私が昨年の大分でクーベールさんの世界記録を更新したときは、誰よりも喜んでくれた。分け隔てなく、誰にでも技術を教えてくれた」と振り返った。

 「きょうの優勝も、きっと天国で喜んでくれていると思う」

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 大会最年少の16歳でハーフに出場した宮崎県都城市の堤福仁(ふくと)選手は、1時間35分27秒でゴール。10分台を目指したが、レース中にトラブルに見舞われた。「とても悔しい。来年は絶対1時間10分台で走ります」

 レース中盤、ヘルメットに磁石で取り付けるサングラスに手が当たって外れた。顔に風がもろに当たり、ゴールしたときは涙目だった。また、着けていたスポーツネックレスも首から外れ、口にくわえたままゴールした。レースを見守っていた母親の鈴美さん(54)は「1時間30分になってもゴールしないので、転倒してけがでもしたのではないか、と不安で仕方なかった」と振り返る。

 ネックレスは、昨年の誕生日に鈴美さんが贈ったもの。堤選手は「大切なプレゼントなので失いたくなかった」と言う。鈴美さんは「親としては、福仁の気持ちはうれしいけど複雑な気持ち。なくなってもよかったのに」と苦笑いした。