秋のマイル王決定戦、GIマイルCS(京都・芝1600m)が11月19日に行なわれる。 かつては「最も堅いGI」と言われていたが、過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気はわずか2勝。他に2着1回、3着2回と、その信頼度は決して高くない…

 秋のマイル王決定戦、GIマイルCS(京都・芝1600m)が11月19日に行なわれる。

 かつては「最も堅いGI」と言われていたが、過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気はわずか2勝。他に2着1回、3着2回と、その信頼度は決して高くない。

 それゆえ、3連単では好配当がしばしば生まれており、昨年は6番人気のセリフォスが勝利し、2着に8番人気のダノンザキッドが入って、14万円台の高額配当をつけた。

 そして、今年は4年ぶりに本来の舞台となる京都競馬場での開催。同舞台未経験の馬が多く、ひと筋縄とはいかない一戦になりそうだ。

 となれば、まずはレースの行方を占うひとつのカギとして、現在の京都の馬場状態はチェックしておくべきだろう。その点について、デイリー馬三郎の吉田順一記者はこう語る。

「京都競馬場は、前開催の開幕週(10月7日~9日)は3日間競馬。その3日目が渋化馬場で行なわれた影響や、洋芝の生育の問題などがあったりして、2週目から芝の塊が飛ぶソフトな設定となっていました。

 先々週から始まった第3回開催から仮柵を設けたBコースを使用していますが、それでも、先週のGIエリザベス女王杯では直線で内に進路を取った馬は15頭中、3頭のみ。ほとんどの馬がラチから5頭分ぐらい外を通り、1番枠だった勝ち馬も道中は内につけていましたが、直線では内を開けて伸びてきました。

 そうした状況にあって、今週から仮柵をさらに外に出したCコースとなります。適度に荒れている馬場状態ですが、凸凹がかなり隠れることで、直線も先週ほど内を開けなくても大丈夫な印象。クッション値が高ければ、ある程度の時計が出る舞台と判断していいでしょう」

 では、そういった馬場にあって、どんなタイプが狙い目になるのか。吉田記者はこんな見解を示す。

「後方待機組で外を回ってこなければならない馬よりは、前づけできて、最後に内を突いて一瞬の決め脚を発揮する馬のほうが優位と見ます。

 レース展開を考えても、久々に芝1600mを使うバスラットレオン(牡5歳)が行く構えならハナを奪えそうですが、逃げがVパターンのセルバーグ(牡4歳)も簡単に引くとは思えません。加えて、速い脚のないビーアストニッシド(牡4歳)も、手綱を取るのが和田竜二騎手なら積極策に出そうで、遅くても平均ペースあたりでレースは流れそうな気がします。

 そうなると、そこから少し離れた好位で運べる馬。馬場的にも、展開的にも、そんな馬に魅力を感じます」

 そこで、吉田記者は人気急落中の実力馬に期待を寄せる。

「昨年の2着馬ダノンザキッド(牡5歳)です。馬体重530kg前後のジャスタウェイ産駒で、かき込みの利いたフットワークが目を引きます。



マイルCSでの一発が期待されるダノンザキッド。photo by Eiichi Yamane/AFLO

 ここまで、1600m~2000mの距離のレースで好走と凡走を繰り返していますが、トモの甘さが解消しないのがその原因でしょう。だとしても、条件さえそろえば、好走への期待が持てます。

 あまり緩急のない平均的なラップを刻んで、上がり3ハロンをガッツリと踏んでいける形で運べれば、高いパフォーマンスを発揮できるはず。今回はそうした展開が見込めるメンバー構成と舞台設定ですから、ハマれば好位からしっかりと脚を使ってくれるのではないでしょうか」

 2歳時にはGIホープフルS(中山・芝2000m)を制して、昨年末には海外GIの香港C(香港・芝2000m)で2着と奮闘。今春のGI大阪杯(4月2日/阪神・芝2000m)でも骨のあるメンバー相手に3着と健闘した。マイルCSでは一昨年3着、昨年2着という実績を踏まえても、一発への夢は膨らむ。

 さて、吉田記者は今回のレース展開について、さらに深読み。それによって、気になる馬が1頭、出てきたという。

「今週からCコースを使用するとは言っても、直線の凸凹が内側に少しでも残れば、馬群が横に広がる可能性は十分にあります。また、ある程度人気を背負う差し勢は、脚を余したくない心理が強く、どうしても(3コーナーの)坂の下りから踏んでいく競馬になりそう。

 ですから、基本は"前"に注意したいのですが、有力各馬が早くから前にプレッシャーをかけることになれば、前づけの馬もラクではありません。そうなった時、違う視点で狙えるのが、勝負どころから内を回って、直線を向いてからも内へ突っ込んでいける、一瞬の脚に秀でた馬です。

 面白いのは、ジャスティンカフェ(牡5歳)です。東京コースが舞台のGIIIエプソムC(6月11日/芝1800m)を勝っていますが、つなぎの短さと回転の速いピッチ走法からすれば、仕掛けてからトップスピードに至るのは速いイメージがあります。

 昨年のマイルCSでも内を突きましたが、伸びかかったところで前が壁になり、追えなくなった不利が響いて6着。今年も、昨年同様の乗り方で一発を狙ってもいい立場にありますから、前さえ開ければチャンスは見えてきます。

 1週前の追い日に撮影されたフォトパドックでは、今年一番と思うくらいのトモの丸みを誇っており、攻め気配も申し分ありませんでした。前走のGII毎日王冠(10月8日/東京・芝1800m)で7着に沈んだ結果によって、人気を落とすここは、絶好の狙い目だと思います」

"春のマイル王"ソングラインが不在。激戦必至のレースにあって、思わぬ波乱が起こっても不思議ではない。その一端を担うのが、ここに挙げた2頭のどちらか、かもしれない。