山形県出身力士として大岩戸(鶴岡市出身)以来、10年ぶりに新入幕を果たした東前頭17枚目の北の若(23)=本名・斎藤大輔、酒田市出身、八角部屋=が、九州場所で奮闘を続けている。初日に幕内初勝利を飾るなど、4日目を終えて3勝1敗。勝ち越しを…

 山形県出身力士として大岩戸(鶴岡市出身)以来、10年ぶりに新入幕を果たした東前頭17枚目の北の若(23)=本名・斎藤大輔、酒田市出身、八角部屋=が、九州場所で奮闘を続けている。初日に幕内初勝利を飾るなど、4日目を終えて3勝1敗。勝ち越しを目標に掲げ、「しこ名に『若』と入っている通り、若々しい相撲を取り続けたい」と意気込む。

 12日の初日。錦富士を寄り倒しで破り、幕内初勝利をあげた。この日は23歳の誕生日。自らの白星で花を添え、開口一番、「前に出られたのはよかった」。報道陣から、どんな1年にしたいかと聞かれ、「応援してくれる人に喜んでもらえる相撲を取り続けたい」と語った。

 アマチュア時代、名の知られた存在だった。

 埼玉栄高3年で全国高校総体を制し「高校横綱」のタイトルを獲得。国体少年個人も制覇し、鳴り物入りで角界の門をたたいた。

 身長191センチ、体重151キロの体格を生かした突き押しを得意とし、2019年春場所の初土俵から所要5場所で幕下に昇進。だが、そこから伸び悩んだ。

 押しに強さを発揮する一方、簡単にはたく癖が抜けずに星を取りこぼすことが少なくなかった。20年初場所から11場所を幕下で過ごした。「幕下まで(昇進は)早かったが、上位になってはね返された。小手先(の押しや技)では勝てなくなっていた」。その後、十両で11場所を過ごした。

 転機は、師匠である八角親方(元横綱北勝海)の言葉だった。

 「前に出ないと勝てないんだ」

 十両で足踏みが続く中、師匠の言葉をかみ締めながら、自らの相撲を改めて見つめ直した。「前への圧力、馬力はだましがきかないもの。小手先ではなく、真っ向勝負しないといけない」。攻撃的な相撲に徹した。4場所連続の勝ち越しで、新入幕を果たした。

 しこ名は師匠の師匠である大相撲解説者の元横綱北の富士から2文字を受け継いだ。中学時代に声を掛けられ「一番最初に憧れた力士」だ。先場所の勝ち越しを北の富士さんに電話で報告すると、「(14日目の勝ち越しが)遅い」と活を入れられたという。北の若は「厳しい言葉だったが、心に来るものがあった。変な相撲は取れない」とさらなる飛躍を期す。

 角界入りから4年半での新入幕は、昇進のスピードとして遅くはない。ただ高校横綱として周囲の期待が高かっただけに、それに応えられないもどかしい時間が長く続いた。

 それでも、と本人は前を向く。「地道にこつこつやってきたことで、迷わず相撲がとれるようになった。自信がついた」。時間がかかった分だけ、輝ける。23歳はそう信じている。(榊原一生)