第42回大分国際車いすマラソン(大分県など主催)は、19日に行われる。今年はマラソン、ハーフマラソンに海外勢を含め計223人がエントリーしている。マラソンでは、ともにスイスのマルセル・フグ選手(37)やマニュエラ・シャー選手(38)の男女…

 第42回大分国際車いすマラソン(大分県など主催)は、19日に行われる。今年はマラソン、ハーフマラソンに海外勢を含め計223人がエントリーしている。マラソンでは、ともにスイスのマルセル・フグ選手(37)やマニュエラ・シャー選手(38)の男女の世界記録保持者、鈴木朋樹選手(29)や喜納翼選手(33)の男女の日本記録保持者も名を連ねる。10年連続を含む14回の優勝を誇るスイスのハインツ・フライ選手(65)も4年ぶりに出場する。トップアスリートと一緒に走る「夢舞台」に、ハーフマラソンで出場する最年少選手と初出場の選手に大会への思いを聞いた。(倉富竜太)

 宮崎県都城市の堤福仁(ふくと)さん(16)は大会最年少選手だ。初出場の2021年はハーフ1時間58分、22年は1時間34分とタイムを縮め、3回目の今年は「1時間10分台を目指します」と力強い。

 母親の鈴美さん(54)によると、脳性まひで511グラムで生まれた。鈴美さんは「成長するに連れ、周りの友達たちは野球やサッカーをするようになった。福仁はそれができず、次第に消極的になり、ふさぎ込むようになった」と振り返る。

 そんな中出会ったのが、車いすマラソンだった。SNSを通して知り、19年1月に宮崎県西都市であった車いすマラソンに初めて出場した。鈴美さんは「福仁の将来を悲観し、どうしようか悩んでいる時期で、わらにもすがる思いだった」と言う。

 「体を動かし、風を感じることがとても気持ちよかったようで、福仁はそれ以来、性格も明るくなり積極的になった」と鈴美さん。

 平日は学校があるため、自宅で筋トレやストレッチに励む。「宮崎フェニックスクラブ」と、大分県内で活動する「キッズスポッチャ」に所属し、第一線で活躍する選手から指導も受ける。日曜日には宮崎市に行き、シーガイアコンベンションセンター周辺でレース用車いすで練習を重ねる。

 鈴美さんは「送り迎えは時間がかかるけど、親としては福仁の笑顔を見るのが楽しくて仕方ありません」と語る。

 福仁さんは「今年も憧れのフグ選手に会うのが楽しみ。目標に向かってがんばります」。

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 福岡県筑前町の菅田(すがた)幸之助さん(39)は、今大会が初出場。本格的な競技への参加も初めてで「まずは完走をめざします」。

 7年前の朝、目覚めると体が動かなかった。病院に行っても原因は分からず、以来車いすの生活になったという。「それまで勤めていた会社も1年間休職し、辞めざるを得なかった」と振り返る。

 持ち前の明るさから「最初はびっくりしたけど、なるようにしかならない」と、思うようになった。車いすでできるバスケットボールやラグビーの見学や体験をする中、SNSを通じて車いすマラソンの存在を知った。

 経験者と連絡をとり、今年2月、初めて同県飯塚市内で車いすマラソン用のレーサーを体験した。「車いす生活になってから風を感じることがなかった。とても爽快で、魅了された」と振り返る。

 車いすマラソンに出場するため、仕事も福岡市立障がい者スポーツセンターで働くようになり、トレーニングをしながら週1、2回は近くの河川敷でレーサーでの練習に励んでいる。

 「車いすマラソンは私より年齢が上の競技者が多くいるのも魅力の一つ。初めての参加ですが、がんばります」と張り切っている。

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 大分国際車いすマラソンに出場する海外選手の第一陣が14日、選手村の大分市内のホテルに到着した。

 昨年の大会で障害が重いクラス(T51)で世界記録を更新した南アフリカのピーター・ドゥ・プレアさん(43)と、アメリカのピーター・ホーキンスさん(59)、ウィリアム・レアーさん(65)の3人。

 このうち、プレアさんは家族と一緒に午前10時前にホテルに到着。ボランティアスタッフらが出迎えた後、今年4月に亡くなった元世界記録保持者で、プレアさんの恩師でもあるハインリッヒ・クーベールさん(ドイツ)の遺影とともに記念写真に納まった。

 大会事務局によると、クーベールさんは1986年に初参加。大会に参加する度に、大分で車いすマラソンの魅力を伝える教室を開催。重い障害がある人にも「自分たちもスポーツができるんだ」との思いを伝えた伝道者的な存在だったという。プレアさんは昨年の大会で、クーベールさんが持っていた世界記録を35秒更新した。

 プレアさんは「今年は、恩師の思いと一緒に、楽しみながら走りたいと思う」と語った。