(11日、男子ゴルフ三井住友VISA太平洋マスターズ第3ラウンド 静岡・太平洋クラブ御殿場 7262ヤード=パー70) 今季からシニアツアーにも参戦する50歳の片山晋呉は、出だしの1番で文字通りずっこけた。 と言っても、プレー前のことだ。…

 (11日、男子ゴルフ三井住友VISA太平洋マスターズ第3ラウンド 静岡・太平洋クラブ御殿場 7262ヤード=パー70)

 今季からシニアツアーにも参戦する50歳の片山晋呉は、出だしの1番で文字通りずっこけた。

 と言っても、プレー前のことだ。

 駆けつけたギャラリーへの選手紹介で、勝利数と年齢を取り違えられ、「31歳」とアナウンスされた。ティーを刺そうとかがんでいた姿勢から前につんのめり、ギャラリーを沸かせた。

 「50勝って言ってくれたらよかったのにね」

 クラブを振り始めれば、プレーは堅実で落ち着いていた。スコアが転げ落ちることはなく、1バーディー、1ボギーのイーブンパーで回った。

 7番パー3では、1打目がグリーン左のバンカーへ。同じピンチを迎えた同組の20歳の長野泰雅とは対照的だった。

 長野は2打目がグリーンに届かずボギーになり、いらだった。一方、片山はピンまで2メートルの平面に正確に打ち出し、パーセーブ。

 「大学生の年齢ですごい選手だなーと思いながら、まだ若いなと思って見ていましたよ。僕はもう、ゴルフに対して怒らない」

 長野の姿は、自身の若き日と重なる部分があるという。「もう、なんでもかんでも怒っちゃってた」。思い通りにいかないことに感情が高ぶり、スコアが波打ったこともある。

 22歳だった1995年にプロに転向し、2008年に25勝に達して史上7人目の永久シード権を手にした。09年のマスターズで4位に入り、国内ツアーはここまで31勝。歴代2位に並ぶ5度の賞金王に輝いたレジェンドだ。

 圧倒的な成績を手にしても、年齢による衰えには逆らえない。コースへの移動時は腰痛を緩和させる器具を付け、4日間の大会で毎日18ホールを回る。

 「きつい。大変よね、ほんとに」

 一番こたえるのは、精神面だという。若手とのドライバーの飛距離の差は、現実を突きつけてくる。

 「今日だってさ、50~60ヤードやられながらプレーしているじゃない。だから、ちょっとそうね……」

 ただ、年齢を重ねたからこその強みも生まれたという。

 「ものすごくあきらめが早くなった。(怒りが)頭にいかないでできる。それがゴルフには大事だもんね」

 一つのプレーを悔やむ間に、また全く違う作りのコースに向かわなければならないのがゴルフだ。

 他の選手にない経験の多さを生かすためにも、片山は落ち着いてプレーに専念する。

 第1ラウンド(R)を70で回り、降雨のなかの第2Rで65と伸ばした。厳しい寒さだった第3Rは70で、日々スコアをオーバーすることなく6位につけた。

 「僕は僕のゴルフで十分。この状況では最高」

 今季初めてトップ10で最終日を迎える。(平田瑛美)