世界を目指すアスリートを応援しよう――。若手選手と地域をつなぐ「地元アスリート応援プログラム」(明治安田生命主催)は、遠征費や合宿費の確保のため、クラウドファンディング(CF)での支援を呼びかけている。四国からは3選手が参加。夢舞台を目指…

 世界を目指すアスリートを応援しよう――。若手選手と地域をつなぐ「地元アスリート応援プログラム」(明治安田生命主催)は、遠征費や合宿費の確保のため、クラウドファンディング(CF)での支援を呼びかけている。四国からは3選手が参加。夢舞台を目指し、練習に励んでいる。

 風を切って駆けるチーターのように、高さ15メートルのそびえ立つ壁を猛スピードで登っていく。突起(ホールド)を手でつかみ、足で蹴る。

 「登るときは無心ですね」。大政涼選手(21)=松山大3年=の流れるような動作からは、重力をほとんど感じない。

 スポーツクライミングで壁を登りきるタイムを競う種目「スピード」の日本記録(5秒07)保持者だ。7月には日本男子で初めてワールドカップ(W杯)の表彰台に立った。来夏のパリ五輪での代表入りを狙う。

 スポーツクライミングとの出会いは小学5年のころ。登山やキャンプが好きな両親と一緒に、松山市内のボルダリングジムに行った。一つコースを登りきると、次は難易度を上げたコースに挑む。ゲームをクリアしていくような面白さに魅了された。

 最初は主に登りきった高さを競う種目「リード」に取り組み、東温高校1年だった2018年、JOCジュニアオリンピックカップと国体で優勝を果たした。

 高校3年からは「スピード」に力を入れ始めた。「迫力があるし、すぐに決着がつくのが気持ち良い」。東京五輪で複合種目の一つだった「スピード」はパリ五輪で独立種目になる。「リード」に劣らぬ記録を出していた「スピード」に力を入れ、パリ五輪を目指すことにした。「スピードならもっと記録を伸ばせると思った」と話す。

 昨年からW杯に参戦すると、インドネシアや中国といった世界のトップ選手の登りを目の当たりにし、刺激を受けた。

 自身と海外選手の登りを動画で見比べ、ホールドを踏む位置やひざの向きなどを研究。体のブレを抑え、記録を伸ばしていった。

 昨年6、7月には日本記録を3度更新。今年3月からはスピードに専念し、9月に5秒07の日本記録を打ち立てた。「一番大きな目標はパリ五輪出場。ミスなく安定して登れる選手になりたい」と意気込む。

 コーチで愛媛県山岳・スポーツクライミング連盟の青木亮二さんは「スピードの才能は日本随一。腕力と脚力のバランスが良く、体が左右にブレない。とにかくストイックで、スタートの練習だけで3、4時間やっている」と認める。

 スポーツクライミング界の未来を担い、世界レベルで競い合う中で遠征費などの負担も重くのしかかる。欧州やアジアなどで開かれる大会に出場するための渡航費や宿泊費は一部を除いて自己負担。昨年は100万円超の出費になった。

 そんな中、「地元アスリート応援プログラム」を青木さんに紹介され、参加を決めたという。大政選手は「パリ五輪で活躍する姿をお見せして、自分の登りで皆さんに盛り上がってもらえたらうれしい」と話す。(川村貴大)

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 陸上・ハンマー投げの秋山玲二郎選手(19)=四国学院大1年=は、競技歴わずか2年で昨年の全国高校総体(インターハイ)を制した。

 香川県観音寺市出身。小学5年で陸上競技を始めた。中学はやり投げが専門だったが、右ひじのけがをきっかけに、高校1年の8月から負担が少ないハンマー投げに転向した。

 最初はハンマーを前に飛ばすのも苦労したが、ハンマー投げの元日本記録保持者の綾真澄さんらに教わり、基礎から技術を習得していった。

 試合のない冬場に投げ込みや筋トレに励み、高1で50メートルだった記録は高2の4月には60メートルまで伸びた。高3のU20(20歳以下)日本選手権では2位、インターハイでは優勝を飾った。

 綾さんがコーチを務める四国学院大に進み、さらに鍛錬を積んでいる。「日本選手権の表彰台に立つことが今の1番の目標です」

 地元アスリート支援プログラムについては「モチベーションも上がるし、身が引き締まる。結果を出すことで、支援していただいたみなさんに恩返しできるよう頑張りたい」と話す。(和田翔太)

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 岡林結衣選手(14)=高知市立大津中2年=は8月、愛媛県であった全国中学校体育大会(全中)の陸上競技女子100メートルで優勝した。記録は伸び盛りで、「いろいろな大会で大会新記録を出したい」と大きな目標を掲げている。

 陸上を始めたのは小学1年の頃。兄と姉の後を追うように地元の陸上クラブに入り、「走ったら1位になるのがうれしかった」。

 小学6年の時には全国小学生陸上競技交流大会の女子100メートルで優勝。昨年は中学1年で全中の女子200メートルで優勝を果たした。

 今年の全中の100メートル決勝は自分より速いタイムの選手がたくさんいたため、順位を狙わず、タイム重視で臨んだ。スタートで出遅れたものの、「私は後半が強い。焦らないで走り抜けよう」と切り替え、12秒12で1位に。大舞台でも動じない気持ちの強さが持ち味だ。

 課題はスタート。スターティングブロックを蹴って前に進む方法を練習中で、「これでスタートが速くなったらバッチグーです」と元気。地元アスリート応援プログラムの支援については、「いい報告ができるように頑張っていきたい」と話す。(鈴木芳美)

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 「地元アスリート応援プログラム」は今年度、43都道府県の75選手を支援している。明治安田生命が来年3月末までの1年間の活動費として、1人あたり最大300万円を支援。さらにCFで集まった寄付金を上乗せして贈る。

 支援を希望した選手の詳細は、朝日新聞社のCFサイト「A―port+」(https://a-portplus.asahi.com/feature_pages/meijiyasuda?_fsi=q9iFl3Yu)で紹介している。寄付は来年2月末まで受け付ける。